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動き出す者

 中央都市が見渡せる小高い丘に金髪の少女、クロエは立っていた。口元に薄ら笑いを浮かべながら。と同時にクロエは昨日戦った男との戦闘を思い出していた。

 クロエから言えば大して強くなかったのだが結構保った方だろう。体術はそれなりに出来ていたし魔法もそこそこだった。ただ単純に威力が足りなかった。


(まぁでも、そこらの魔物なら一瞬なんじゃない?)


  あれだけの炎使いだ。相手が自分じゃなく、並の者だったら圧倒してただろう。


(結構楽しませてもらったから良いんだけどね)


  口元に張り付いたような笑みを崩さずに息を吐く。そして自分と瓜二つの少女、マシロの事を思い浮かべる。


「マシロ……」


  思わず口から出た言葉だった。表情も打って変わって何処か悲しそうになった。だがそれも一瞬で、次の瞬間には真顔に戻っていた。


(焦るな。まだ時間はある……。ここで焦れば……また最初からだ。もうあんな思いはしたくない……)


  脳裏に過去の記憶が蘇る。 自分の無力さをあれ程呪った事は無かった。手に力が入り歯噛みする。


「私が救ってみせる……絶対に!」


  決意を胸に叫ぶ。 無力を呪い、大切な存在を守る為に力もつけた。救われないのなら、誰かが救うしかない。


(弱い所は見せられない。見せたら全てが崩れてしまうから。 それにまだあの子は知らない……ホントは知って欲しくない。知らないでいて欲しい。この、現状を)


  人も世界も脆い、とクロエは嘆く。一片でも欠けたらそこから済し崩し的に崩壊を始める。


「でも泣き言なんて言っても始まらない。

 今度こそ……変えてやる!」


  自分に言い聞かせるように呟くと街の下の方に視線を移す。あそこにはマシロがいるギルドがある。ホントは今すぐにでも会いたいが会ったら全てを壊してしまいそうだった。


(今は会うべきじゃない……。近い内に必ず会うんだから……)


  胸に手を当てて気分を落ち着かせる。

 マシロとクロエは繋がっている。お互いがお互いを引き寄せており、会う事は免れない。

 向こうから来るかこっちから行くかの違いだけだった。


(……とにかく様子見。時期が来れば動き出す。邪魔する奴は容赦しない)


  無表情になり目を細める。クロエの金髪がそよ風に靡く。クロエは何気なく後ろに振り返る。 当たり前だが何も見えなかった。

 クロエはまた街の方に視線を戻すと微笑を浮かべた。その笑みが意味するのは、何か企んでいるのか、嘲笑か、それはクロエにしか分からなかった。

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