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消滅因子

「ん……ふぁ……寝ちゃったのか。

 マシロも同じっぽいな。 ふふ、可愛い寝顔」


  目を覚ましたクロエは、隣にマシロがいる事に気付き、マシロの寝顔を食い入るように見ると頬を緩ませながら頬に指を当てた。


「ん……」


  しかしクロエの思い通りの反応を示さずに布団をかぶり直して寝返りを打つ。どうやらまだ寝るつもりらしい。


「昔っから変わらないね。そういうとこは。

 寝る子は育つって良く言うけどマシロは胸がちょっと貧相かな?うりゃりゃっ!」


  不意にクロエが布団の中に手を突っ込み、両手でマシロの胸を揉みしごいた。


「ふわぁ!?」


  なんとも言えない感触がマシロを襲い、マシロが飛び起きる。それと同時にクロエは条件反射で手を引っ込め、目を逸らす。


「お姉ちゃん、今どこ触ってたの?

 まさか……胸?」


  両手で胸を多いながらクロエに訝しそうな目線を向けるマシロ。クロエは目を合わせまいと必死に逸らしており口笛まで吹き始めた。割と美声である。


「お姉ちゃん!! どこ触ってたのよー!!」


「うわっ!?」


  マシロが不意に叫んだ為、クロエの肩が跳ね上がり、上目遣いでマシロを見る。


「う、ま、まぁそこは置いといて!

 ちょっとマシロに大事な話があるんだ。

 聞いてくれるかな?」


「むー……」


  改まるクロエにマシロは頬を膨らます。

 話を逸らすなと言いたげだったがクロエは構わず無視した。


「まず、マシロの力はこの前説明したね?

 "消滅"。 まだマシロはマシロの意思では使えない段階だけど、いずれ使えるようになる。短期間だけどね。そしてマシロの"消滅"の力の暴走を根本から促す力がある」


  真剣に話すクロエにようやく真面目な話だと気付いたマシロは相槌を打ってクロエの言葉に耳を傾ける。


「力の暴走の原因のほとんどがそれに起因しているの。 情緒不安定や脳の過剰負荷で起こる暴走はよほどの事じゃないとまずない。

 昨日のアレみたいにね。で、その暴走を起こす力の正式名称は"消滅因子"。 この消滅因子はマシロの意思とは関係なく確実に暴走を引き起こしてくる厄介な奴なんだ」


  そう言ってクロエは一息入れ、マシロの顔を見る。マシロは不安に染まった顔をしており、真っ青になっていった。


「消滅……因子」


  マシロが呟く。声に先程の元気は無く、目も焦点が合ってなかった。


「マシロ……大丈夫? ごめん、こんな時に話したのが間違いだったね。 朝食、ラスクさん達に言っといて私が持ってくるからマシロは部屋にいた方が良い。ラスクさん達に影響があるかも知れないから」


  おもむろにクロエが立ち上がり、ドアノブに手をかけると捻って開ける。最後にマシロを一瞥するとゆっくり扉を閉めた。


(やっちゃったなぁ。誤魔化す為とはいえ、あの場面で話す内容じゃなかった。でもいつかは知る情報だったんだ。それが早くなっただけ。って自分の事棚に上げた私が言える事じゃないけど)


  一階に向かっている最中にクロエはそんな事を考えていた。いくらマシロの為とはいえ昨日の今日でかなりの情報をマシロに与えてしまった。それに伴っての記憶の回復、脳の過剰負荷にならなければいいとクロエは安易に思考していた。


「……もうちょっと後からでも良かったかも」


  後悔するも後の祭り。過去は戻ってこないしやり直せない。クロエは嘆息をこぼしながら階段をゆっくり降りて行った。



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