似ている顔
「はぁ……っ、はっ……、はぁ、はぁ……」
少女は息を切らせながら休憩も兼ねて今し方来た道を振り返っていた。先程まで居た場所はもう見えなくなっており、結構な距離を走ってきていた。人がちらほら見えるようになってきた事から生活圏に入ったのだろう。
「……ギルド、あの人はギルドに行けって言ってたけどまだかかるのかなぁ?」
一人呟く。着けるのか不安だと少女は内心思った。と同時にあの二人が心配でもあった。名前は知らないが自分とクロエという金髪の少女との間に割って入った男。そしてクロエ。自分の事を知っており悲しそうな顔が張り付いてしまったかのような表情をしていた。
一触即発の状態で、直ぐにも戦闘が開始されそうな雰囲気を醸し出していた。
「あの二人も無事であってほしいな……」
少女はそう言うと前へ向いて走りだそうとして、ふと窓ガラスに目を向けた瞬間だった。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!?」
急に頭に鋭い痛みが走った。その痛みは普通でなく、頭が割れると思う程の激痛だった。
「ぐっ……!うぅ、何……これ!?」
窓ガラスに手をついてあまりの激痛にしゃがみ込む。何故急に頭に激痛が走ったのか少女には分からなかった。
「嬢ちゃん!!大丈夫か!? 」
老人の声と共に肩に手が置かれる。うずくまる少女に何か異常を感じて老人が声を掛けたのだ。
「ぐっ……、ありがとう、ご……ざいます……。 私にも、何が…何だか」
「こういう時はお互い様じゃ。それより、深呼吸じゃ深呼吸!」
老人に言われ、ゆっくりと深呼吸を繰り返した。しかし効果は無く痛みは続いていた。そして、また激痛に耐えながらも窓ガラスを見た時に自分の顔を見て驚いた。
「え……?」
そんな間の抜けた声が出た。しかし、何故今の今まで気が付かなかったのだろうか。少女の顔はあのクロエという少女に似ていたのだから。髪の色こそ違うが優しそうな瞳、クロエより幼い、あどけない顔がそこには映っていた。少女は自分の黒髪を耳にかけると、ずっと側に居てくれている老人に目をやった。
「ありがとうございます!もう大丈夫です。頭痛が治まりました」
頭痛は治っていた。自分の顔をクロエの顔に似ていると思ったからだろうか、いつの間にか頭痛は嘘のようになくなっていた。そして、感謝の気持ちを込めて老人にお礼を言い、おもむろに立ち上がった。
「そうかそうか。それは何よりじゃ。嬢ちゃん気を付けての」
老人も満足気に頷くと肩から手を離して一〜二歩後ろへ下がった。
「はい!ありがとうございました!」
精一杯の感謝と笑顔を見せて深々と頭を下げてから老人に背を向け走り出した。
(あの頭痛は何だったんだろう……?窓ガラスに目をやった瞬間に頭が痛くなったんだろう?)
走りながら少女は考える。その問いに対する答えは直ぐに少女の中で見つかった。
「私がクロエ……ちゃんに似てるから?」
クロエの顔を思い出しながら呟く。そして指で自分の頬を触って感触を確かめる。女の子特有の柔らかい肌だ。
「そうだ、とにかく今はギルドっていうのを探さないとっ」
男に言われたギルドに行けというのを思い返しながらキョロキョロと辺りを見回すように走る。もちろん前方や横の人々に気をつけて少女は駆けて行く。




