Ⅹ
幸せそうにわらう君を、僕は赦せないでいる。
赦せないと言いながら、
何も出来ずに避け続けた。
心の内でだけ、怒りのようなものが暴れている。
本当の名前が何かは、怖くて聞けないまま。
外に出ようとしてるのを、
なだめて、落ち着かせる作業の繰り返し。
今日もまた、
幸せについて、言い聞かせて。
言い聞かせて、言い聞かせて、
やっぱり納得できないでいる。
君がわらうのは何のため?
君がわらうのは誰のため?
答えに僕の名がないことを知っていて。
僕のためにわらう君を求めたりして。
悲しくなって。
破裂してしまいそうになって。
いよいよ今日、吐き出してしまうのかと、
覚悟したのに、
できたのは、顔を背けるだけ。
遂に、見ることもできなくなった。
1つ、できるようになると、
1つ、できなくなる。
あえなくても、みえなくても、
やめようとしても、
考えたのは、君のことだった。
君のことだったのに。
少しずつ、ずれていく思考。
僕がいなくても笑える君の事が、
少し羨ましく、そして憎かった。
僕は、違うから。
比べるまでもないけど。
僕は、君とは違う。
自分以外のための笑顔では幸せになれないし、
君以外のためにわらうことなんてできない。
君が憎い。赦せない。
……本当にそうかな、
笑顔を忘れて、重くなっていく、僕。
憎しみだの、悲しみだの、疑問だの、
自分でもわけの分からないものばかりを背負って。
君を押し潰す勇気も無く。
いまここで長々と、
自分自身をわらったことさえ、
気付かれずにいる不幸を、
ただひたすらに悔いているだけ。
ははは、わらえないはなし。




