あいつは馬鹿で謎がある。
朝5時。
いくら夏だと言っても、朝は寒い。
当たり前か…だってここ、ボロ神社だし、いるだけで気味悪くて涼しいよ…。
だけど、秋ごろの掃除よりはましなのかな。いや、断然ましか。
ここは田舎町。それなりに商店街や、1,2件ほどコンビニがあるからあまり不自由はない。
そんな田舎町の林の奥に立っている神社、僕はそこでバイト中。
とはいってもうちのじいちゃんのとこだけどね。
バイトといってもボロい神社だし、こんな奥にあるから誰も来ないし、給料も小遣い程度だし…こう言ったらきりがない。
んー…いいところ…、あ、じいちゃんが優しくて、3時になったらおやつくれる!
この頃はスイカ切って出してくれるし!
ああ、僕のこと?僕は高橋一郎、高校1年。背も小さいし童顔だってよく言われる。
そのせいかよく小学生に間違われるし、近所のガキにも笑われる。うるせぇやい。
昔から人づきあいとかが苦手で友達が少ない。というかいないに等しい。
あまりたむろするのも好きじゃないし…ってふっきれているけれどね。
友達は野良猫でじゅうぶんですよーだ。
そんなこんなで、ボーっとしてたら6時、何これ時間流れるの早すぎ。
この時間になるといつものあいつが活動開始し始める。最近なぜかこの神社にすみついたあいつ…。
約2週間前、あいつが住みつきだしたのはちょうどそのころ。
僕はいつも通り、今日みたいに掃除をしていたわけ。そしたらいきなり
「おはよう、朝から偉いねー君。」
なんなんだ…?どこから声が…?
あたりを見回しても誰もいない。
「屋根の上だよほら、ふふっ。」
まさかとは思ったが、本殿の屋根を恐る恐るのぞいた。
(嘘だろ…、あいつ常識あんのかよ…。)
茶髪で髪の毛がいろいろハネてる頭、黒いジャケットを着て、型耳に黒いピアスをつけている20代くらいの男…。なにやってんの。つか、おいおい笑い事じゃねぇよオラァ。
「おっ、やっと気付いたかお嬢ちゃん。」
「お前、自分が何やっているのかわかっているのか!?それと僕は女じゃない!!」
「ごめんごめん、ここ、まだ人がいたんだねー。おんぼろだから見捨てられたとこかと思ってつい遊んじまったわ。わりぃねボーズ。」
いくらおんぼろで人がいなくたって、神聖な神社の本殿の屋根にのぼって遊ぶ馬鹿いねぇだろ…。
そしてボーズって呼び方は何だよ。イライラが溜まっていくばかりだ。
「なんか安心したわー人がいると、よし、俺ここに住もう!」
「は?ふざけているのかおまえは、ここがどんな場所なのかわかっているのか?」
「神社だろ?」
「そうだよ。」
「よしっ。」
なんだわかっているじゃないか、ひとまず許そう。
んっ…?違う違う違う!!
「おまえ、とにかくそこから出て行k」
「おじいさんおはようございます。素敵なお社ですこと。」
「お、わかるか?ここはこんなにぼろぼろになってしもうが、とてもいい場所なんじゃよ。」
「自然が入り混じってとても素敵ですね…このまま住んでしまいたい♪」
「おお!どうせ人もいないし本当に済んでしまってもかまわんぞ!!ハッハッハ!!」
おいじいちゃん、何言っちゃってんの。
つーかおまえキャラ変わりすぎだろ。誰だよ。
そんなこんなで住みつき始めたあいつ…。名前、聞いてなかったな。