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ドキッ!気になるあの子は心臓の音がしない! その一

なろう登録一日未満な為、マナーに反した行為等があるやもしれません。お詫びにゾンビ娘をどうぞ

 20XX年、日本に一つの名も無いウイルスがばら撒かれた。

 ばら撒かれた理由はテロかそれとも所持者によるうっかりか、真相は定かにされていない。分かる事は一つ、人類はそのウイルスによって壊滅してしまったのだ……この僕を除いて。




 僕の住む町はのどかで平和だ、事件率も低く交通事故も少ない。なにしろ電車やバスなどの乗り物以外車が殆ど走ってないからね、自転車だって僕以外に使っている人を全く見ない。

 どんなド田舎だ、という意見は最もだと思われる。ところが僕の住む町は都心だ、辺りは大きなビルに煌びやか繁華街だってある。

 それはそうと現在時刻はもう七時は過ぎているらしい。窓からは太陽の光が差し込み、があがあとカラスのしゃがれた泣き声が耳障りだ。

 しかし僕は忙しい学生の身、とっとと起きて朝食を作らないと命に係わる。重い身体をベッドから起こそう。


「……う、しまった」


 枕元に置いてあった携帯電話の画面を開き、時刻を確認する。もう八時を回っているじゃないか……いや、自宅から学校まではそう遠くはない、今から朝食を済まし歩いて学校へと向かう事も余裕であるが。


「ああ……台所から朝食の臭いがする」


 思わず顔を顰める、予め言っておくのだが我が家には美人の母がいる。可愛い妹もいる、単身赴任中だが理解のある優しい父もいる。僕はどこにでもいる普通の男子高校生……寧ろ平均より幸せなくらいの男だ、何の不満も無い……もしあるとしたら、この世の中に不満を抱いているのかもしれない。

 ぐちぐちとそんな事を考えていても仕方がない、政治が悪い世界が悪いは愚か者のする事だ。とりあえず着替えて食卓へと付くとしよう……。


「おはよう~……」


 流石に鼻を摘まんで家族の前に顔を出すのは忍びない、なるべく表情を崩さず口で呼吸をしつつ階段を降りる。


「あら、おはよう。今日は遅起きなのね?」


 母の優しげな声が聞こえる、普段は僕が早く起きて食事を作るのだがみんなより遅く起きてしまった為母親の手を煩わせることになってしまった。


「か、母さんごめん。ちょっと起きるの遅れちゃったよ」

「いいのよ、お母さんだってたまには料理してあげないと」


 上機嫌に鼻歌を歌い、腐臭を漂わせながら母は朝食をテーブルに並べる


「お母さんの料理、久しぶりだね。兄貴もはやく座ったら?」

「お、おうよ」


 僕の事を兄貴とオトコらしく呼ぶのは妹の杏子きょうこだ、口は悪く腐臭がするが僕を慕ってくれている良く出来た妹である。


「いただきまーす」


 妹が朝食に手を付け始め、美味しそうに食事を始める。妹の反応から分かるように母の料理は上手い、天才的とも言える。しかし……

「あれ、兄貴食べないの?」

 どうしても箸が料理に伸びない、それもそのはず……料理は全て腐っていたからだ。


「あ、あははは……あっ、ごめん!今日は日直で急ぐんだった、折角作って貰って悪いんだけど……」


 下手な演技で嘘を吐く、肉親を騙すのは心苦しいが……卵にベーコン、白米に至るまで腐乱臭を放っているとなると流石に食べる事は出来ない。

 母は「それなら仕方がないわね、お弁当は持っていくのよ?」と言いこれまた鼻にキツい臭いを放つ弁当箱を受け取れば、足取り重く家を出るのであった。

 母の名誉の為に細くしておくが、母は料理上手で父や妹、勿論僕にも分け隔てなく愛を注いでくれる優しい母親だ。なので決して僕が家庭内暴力を振るわれている事は断じて無い、母の料理が臭うのは……というか、母や妹が臭うのは…………。


 単に、二人がゾンビだからである。

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