第1章:神官、旅路にて
この作品は「銀髪の悪魔」の続編となっております。
この作品からでも楽しめるとは思いますが、できる限り「銀髪の悪魔」から読んで頂く事をお薦めいたします。
「いい天気だねえ…」
食の街、エッセントーイに向かう途中の街道で、のほほんと私の隣にいた男が言う。
海色の髪に同じ色の瞳。女の私でも羨ましいと思うくらいの美貌。白地に青い色糸の縫い取りは、海を司る神、「華麗の神」に仕える神官である事を示す。
彼の名前はダル=プリース。本当はトップクラスの神官でありながら、今は私と共に旅をしている。
「こんなにいい天気だって言うのに、何も食べられないのは辛いね…。」
………ぷち。
この男はぁぁぁぁっ!
「この状況に陥った原因はあんたでしょうが!何でいきなり財布を落とすかなあ!?しかも私の財布まで!」
「…神の気紛れって事で。」
「なんでも神のせいにすれば許されると思ってんの?え?」
私の目が怖かったのか、ダルはうっと小さく呻き…
「いやほら、僕らはしばらく食べなくても何とかなる訳だし…」
「…1週間を『しばらく』と言い切るあんたに、殺意すら覚えるわ…。」
「残念だったねルフィ、僕を殺せなくて。」
……いつか絶対のめす。
そう心に固く誓い、私は黙って歩を進めた…。
私の名はルフィ=ジェネル。腰まで伸ばした銀髪に、光の加減で蒼とも灰とも見える瞳。竜の皮で作った軽装鎧を身に纏う、旅の女剣士…って言うか傭兵である。
ダルとはほんの少し前、ある事をきっかけに知り合い、そのまま旅をする事になったのだが…まあこれが世間知らずで。困った人がいれば即寄付するわ、何かの手伝いを頼まれれば無償でやるわ…
おまけに財布は失くすわで。こいつを旅に誘ったのは軽率だったと今更ながら後悔している最中である。
「エッセントーイに着いたらまず仕事。何とかしてお金を稼がないと、この先ひもじい思いしっぱなしよ。」
「そうだなあ、いくら僕らが不死者とは言え、これ以上は流石にちょっと。」
…そうそう、言い忘れてたわね。私とダルは、何らかのきっかけで「死ななくなった者」。すなわち不死者である。
私は2000年ほど前にそういう体になった。ダルがいつからそうなったのかは知らないが、彼も不死者暦は長そうである。
「でもルフィ。仕事なんてそう簡単に見つかるとは思えないんだけど。まして傭兵を雇うようなものなんて。」
…まあ確かに、それはちょっと不安なんだけど。
「…せっかくの食の街なのに、そこ素通りって…辛くない?」
「………辛いです。」
「でしょ?今の季節ならおいしいシフ料理にありつけるはずだから。何としても仕事しないと、ね。」
「りょーかい。その辺はルフィに任せるよ。」
にっこり笑って、私達2人はエッセントーイへと向かった。




