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「報告します!
勇者様の活躍により、魔竜討伐、成功しました!」
謁見の間に飛び込んできた兵の言葉に、その場にいた一同は数拍の間静まり返った。
「それは、真か……?」
玉座に座るのも一苦労といった感じの老王が、玉座から腰を浮かし嗄れた声を出す。
陛下が立った!
長く続くハイグレード王家でも最長の在位期間の記録を今なお更新中の王は、近頃では誰かの助けを借りねば1人で立つこともままならぬ状態にあった。だが、今王はふるふると震えながらも立ち上がっている。
そのことにその場にいた者は感動を覚える。そして、文字通り陛下を奮い立たせた知らせの存在を思い出した。
一瞬王へと向いた意識が自分に戻ったのを感じたのか、報せを持ってきた兵は敬礼の形を取る。
「はっ! ――我らが連合軍の勝利です!」
「……そうか。よくぞ…」
高らかな勝利の宣言に、目頭を押さえる王。周囲ももたらされた福音に一斉に沸き立つ。
勇者や連合軍への賛辞を口にする者、王と同じように目頭を押さえる者、放心する者――――人々が様々な反応を示す中、彼は、拳を強く握りしめた。
宝石のような煌めきを閉じ込めた蒼い瞳を細め、彼はまるでこれから戦地に赴くような顔で低く、彼女の名を呼んだ。
「リオウ……」
――やり遂げたのか。
形の良い唇から放たれた名は、誰にも聞き咎められることなく空気に溶けていった。