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リオウが部屋を出て行った。恐らくもうじき城からも出ていくのだろう。


なのにヴェリオスは、どうしてここにいるのか。


(知っていた?)


床に座り込んで、ヴェリオスは額を片手で覆う。暑くもないのに、汗が滲んでいた。

ヴェリオスを突き放し、振り返ることもせずに去っていったリオウは、ヴェリオスがしたことを知っていた。リオウを籠絡し、意のままに操ろうとしたことを。


(――いつから?)


その答えは、彼女が教えてくれた。


『もういいって、言ったでしょう?』


彼女が血に塗れて城に帰ってきたあの日。あの日彼女が言った言葉は、いわばヴェリオスにつきつけた最後通牒だったのだと、今更になって理解する。

そして、自分はそれを破り捨ててしまったのだと。


彼女に告げた想いは、真実だった。「王妃に」という言葉はグラエルへの対抗心から飛び出したものだったかもしれないが、それもいいと思えた。

今まで女を一時の快楽を得るためだけの存在としか考えていなかったヴェリオスが、はじめてずっと一緒に居たいと想った女性。

大切にしたいと願った。決して傷つけようと思って想いを口にしたわけじゃない。


けれど彼女はヴェリオスの告白を聞いて――笑った。

妖艶さすら感じさせる壮絶な笑みは、ヴェリオスを震撼させ――そして、ヴェリオスは自分の犯した罪ようやく自覚したのだ。


『リオウにはリオウの世界が、家族があることを、どうしてみんな気付けないんだろうな?』


グラエルの言葉が、頭をよぎる。

その通りだった。リオウの世界に、自分はいない。もう入ることすら許されない。


先に手を離したのは――いや、彼女が差し伸べてくれていた手を掴もうともしなかったのは、ヴェリオスの方なのだから。


どれだけ苦しもうが、どれだけ謝罪しようが、もうリオウはヴェリオスに無邪気に笑いかけてくることはない。目を向けてくることもない。信じることもない。


もう彼女は、自分に会いに来ることすらないのだろう。



彼女の触れた胸が、ずくずくと痛みを訴えていた。


一応これでハイグレードの人々とはお別れです。

あとは双子ですね。理央にとってのラスボスは彼らかもしれない。

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