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一頻り理央の名を呼び、抱きしめたあとようやく落ち着けたのか、レイが理央から離れる。――手だけは、繋がったままだったけれど。
「お仕事はもういいのですか?」
照れたように微笑んでレイが言ったので、理央はうん、と頷いた。
「大分落ち着いてきたかな。……ずっと会いにこれなくて、ごめんね」
「いえ、いいんです。こうして会いに来てくれたら、それで…」
レイが頭を振り、繋いだ手に力が籠もる。まるで幼子が母親から離れまいとするようなそれは、微笑ましくもあるがどこか切なくも感じた。
「でも、驚きました。いらっしゃることを聞いてなかったから」
「ああ、それはクリスティーナさんが…」
と、苦笑しながらこれまでの経緯を話そうとした理央の耳が、どたどたという騒がしい音を捉える。
子供達が走り回っている音にしては少し重い音だ。なんだろうとレイの顔を窺えば、彼はにっこりと笑んでいた。
「多分、セイですね」
「セイ?」
お使いから帰ってきたのだろうか。いやでも、彼はこんな慌ただしい走り方はしなかったと思うのだが――と理央が考えている内にも音は近付いてきて、扉が勢いよく開かれた。
「リオウ様?!」
果たして部屋に現れたのは、レイの言うとおり息をきらしたセイの姿だった。
これが双子の神秘というやつなのだろうかとか考えていると、徐に近付いてきたセイに抱きしめられる。
堅い筋肉の感触を感じるのと同時に、汗の匂いが鼻を掠めた。
「ちょ――セイ?」
「リオウ、さま…」
突然の抱擁に、理央は戸惑う。半年以上――いや、もう一年は会っていなかったレイは仕方ないとして、セイは1ヶ月前に別れたばかりだ。
もっと落ち着いた再会になると思っていたのに、熱烈な抱擁を受けて、その上レイよりも熱のこもったような声で名を呼ばれ――理央はどうしていいか分からず、とりあえず空いている方の手で宥めるように彼の肩を叩いた。
「セイ」
なるべく柔らかい声を意識して名を呼ぶと、拘束が僅かに緩んだ。
少し見ない間にまた背がのびたんじゃないだろうか。顔をあげると、思ったよりも上の位置にセイの顔があった。
――彼は泣きそうな、けれどこの上なく嬉しそうな表情をしていた。
「びっくりしました……買い物から帰ってきたら、クリスティーナさんに貴女が来ていることを聞いて…」
ここまで急いで来た、と。どうやらそういうことらしかった。
今更自分のしたことに照れを感じたのか、目元を赤くしながらセイが訪ねる。
「今日はどうして?」
「…色々話したいこともあって、夕食に誘ってもらったの」
「話したいこと?」
「うん……まあ、それはあとでね」
理央は曖昧に微笑んで誤魔化した。
ようやっと双子と再会できました。