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毎度短くてすみません。本日二回目の更新です。
「あ、グラエル陛下」
庭園でぼんやりしていたグラエルに声がかかる。それは愛しいひとのもので、グラエルは些か驚きながらも振り返った。
見ればグラエルに向かって、彼女が駆けよってくるところだった。
「ようやく見つかった……お付きのひとも探してましたよ」
「――探してくれてたの?」
「あ、はい。お話があって」
すぐそばにまで来たリオウがそう言って笑むので、グラエルは心が綻ぶのを感じる。
そんなそわそわとした空気が漏れ出ていたのだろう、リオウがグラエルを見上げて不思議そうに首を傾げた。
「どうかしました?」
「…どうして?」
「なんだか嬉しそうだったので」
グラエルは口元をゆるめた。
貴女が自分を探してくれた。それがたまらなく嬉しいなんて言っても、リオウは信じてはくれないだろう。
「なんでもないよ。それで、話って?」
だから、グラエルはゆるめた口元はそのままに、リオウを促した。
「――そう。帰るの」
その時自分が何を思ったのか、それは自身にもよく分からなかった。
ただ、唇から零れでたのは、安堵したような、置いて行かれた子供のような――そんな声だった。
リオウが、帰れることになったと言う。
「今すぐ、という訳ではないのですが……城は近い内に出ようと思ってます」
自分の気持ちを掴みかねているグラエルとは対象的に、彼女はとても自然に微笑んでいた。
ようやく故郷に帰れることになって、気負うものがなくなったのだろう。
ぐっと柔らかみを増した雰囲気に、こちらまで幸福になる。
――これでよかったのだ。元よりリオウの幸せは、こちらには無かったのだから。
「そうか。…もう、会えなくなるのか」
だからといって、寂しさがなくなるわけでもないけれど。
自分も自由な身ではない。そろそろ自国に帰らねばならないだろうし、そうなればたとえ同じ世界にいたとしても、リオウとは会うことができなくなる。
――会うのはこれで、最後かもしれない。
その想いが、グラエルの背中を押した。
「リオウ」
右手を上着の内ポケットへと潜らせる。
ずっと渡したいと思っていた。けれど渡せずじまいだった。彼女を困らせるだけだと、思って。
でも、最後に、一つだけ叶うのであれば――
「我がままを、言ってもいいかな」
懐から取り出したそれは、きらりと日の光を反射して煌めいた。