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どうして自分だったのだろうと、理央はずっと考えてきた。
召喚される勇者の条件は『こちらの神が干渉できる人物』とされている。神は誰にでも加護を与えられる訳ではないらしい。
その干渉できる人物にも、与えられる加護の量にそれぞれ制限があり、理央はそれなりに多く加護を受け入れられたからこそ、ここにいる。
理央はいわば、選ばれた人間だということだ。全く嬉しくないが。
理央が考えるのは、他にも当てはまる人物がいるはずなのに、どうして自分だったのかという話だ。
たとえば、理央以外に喜んで勇者をやってくれるような人はいなかったのかとか、そうでなくとも男性の方がよかったのでは、とか。色々、色々――考えてきた。
考えても仕方のないこと。そんなことは分かっている。
(こんなのばっかりだ)
たとえば、もしも。
それで現状が変わるわけでもないと、知ったはずなのに。
「理央……」
理央は目を開けた。
真っ暗な空間に浮かぶ、光の球。まだあれから1ヶ月もたってないはずなのに、妙に懐かしく感じた。
「お久しぶりです」
「還る方法は、見つかった?」
開口一番に聞くべきは、やはりそれだろう。自称神は、ゆっくりと明滅を繰り返しながら理央の前をふよふよと浮いている。
「まだ、確証はありませんが…恐らく」
「可能性はあるのね?」
「はい」
「世界に影響は?」
「ありません。ただ、今すぐという訳にもいきません」
「時間がかかるの?」
「ええ」
「どれくらい」
「5年……くらいでしょうか。ですが還った時には、向こうの世界と貴女の時間を貴女が召喚された時まで時間を巻き戻させます」
5年――理央はその言葉を噛み締めた。
それは多分目安としての数字。本当はもっとかかるかもしれない。でも、その時間を耐え抜けばこれまでの時間を、今度こそ夢にすることが出来る。
ならば、理央が出すべき答えは一つだ。
「分かった。どうすればいい?」
ぴた、と動きが止まる。
「……迷わないのですね」
「私は、帰れるのならなんでもいいの」
願いはずっと、一つだけだった。
理央の家族は特に仲のいい家族なわけでもない。友人だって、理央がいなくなっても大して支障はないだろう。
もしかしたら、こちらの世界の人達の方がずっと理央を求めてる人は多いのかもしれない。でもそれがなんだというのか。
郷愁に、理由などないのだ。
だからこそ、そう簡単に消すことはできない。こちらに喚ばれてから理央はそのことを知った。
「帰った時には、向こうの時間は殆どそのままなんでしょう?
だったら、問題ない」
ああ、でも――と理央はそこで一旦区切ってから、にっこりと笑む。
「散々待たしておいて、いざ帰るって時にまた『できません』なんて言いやがったら――今度は私、何するか分からないから」
「は、はい、それは重々承知してます」
ならいいのだけれど、と理央は殺気をしまい、口を開く。
「それで、私はどうすればいいの」
男2人が生産性の無い会話をしている間に、理央は帰ることを決めました。
こっから理央視点中心で進んでいきます。