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prologue

グオオォオオオオッ――――!!


その日、世界中に魔竜王グリストフェレスの咆哮が響き渡った。


「ああ、やっと」


そして世界中を震わせたその最期の叫びを、一番間近で耳にした少女の胸に走るのは、歓喜。


ようやく、だった。


一年――それは何十年にも渡り、この魔竜が率いる軍勢に苦しめられた民衆にとっては、驚異的な速さだったろう。

だが、少女にとってはこの一年こそが長く、苦しい道のりだった。


これまで、どれほどの血を浴びただろう。

どれほどの人の死を見てきただろう。

どれほどの涙を、流したろう。

どれほど――――いや、やめよう。


過去を振り返る必要は無い。もう、終わったのだ。魔竜は倒した。王を喪い散れ散れになった魔物は最早烏合の衆。



もう、勇者の――私の力は必要ない。



世界を脅かすものはなくした。だから、もう、私は――




「やっと、帰れる」


視界が不意に暗くなる。

遠くで名を呼ばれた気がした。だが、少女は、早坂理央はやさかりおうはその声に答えることなく、意識を手放した。



この一年を、夢で終わらせるために。


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