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第5話 未知への挿入

 そうこうしている内に、私の指は座薬ごと大統領の穴へ押し込まれた。

 

 あー…………入っちゃた。


 だが、ここで予期せぬ事態が。

 なんと座薬をつまんで押し込んだ指が、穴から抜けなくなってしまった。


 んん?  ぬ、抜けない?


 大統領の尻の穴は獲物を待ち望んでいたアリ地獄のように、私の指を飲み込み始めた。


 これは恐怖でしかない。

 指を吸い上げると次は手の甲まで、そこまで飲み込むと今度は手首まで蹂躙(じゅうりん)したのだ。


 慌てて尻の主に助けを求める。


「だ、大統領っ!!?」


「どうした?」


「大統領!! し、尻がぁあーー!?」


「なんだ? 尻がどうした!?」


「助けて下さい!? 尻がぁあーー!!」


「だからなんだ!? 尻がどうした!?」


「尻がぁあーー!!!」


「何が起きたか言え!! 私の尻なんだぞ!?」


「尻ガァァアアアーー――――……」


「尻がどうしたぁあーー!!?」




 ――――――――暗闇が目の前に広がった後、まぶたに光を感じた。

 ゆっくりと目を開けると、見慣れた大統領の書斎が低い位置にある。

 子供の視点から見ているとしか言い表しようがない。


「どうした!?」


 大統領の声が後頭部から聞こえた。

 というより、崖崩れのように大統領の声が降って来ていた。

 私は状況を把握しようと努める。


「こ、これは!?」


 私の両頬を二つのデカイコブが挟んでいた。


 ま、まさか!?


 私は大統領の尻の穴から顔を出していた。


「補佐官! 何があったんだ? 早く説明しないか!?」


「あー……いやー……」


 これを?

 この状況を?


 『貴方の尻の穴から顔を出しています』と、答えて、彼は納得してくれるだろうか?


 ええい!?

 穴に入ったのだから、すぐに抜け出せるはずだ。

 大統領に気づかれる前に出てしまえばいい。


「大統領。今から脱出をします」


「は? 脱出? いったい何の話を……」


 私は身をよじるように身体を動かす。

 すると――――――――。


「イタだだたたたぁっ!!!?」


「だ、大統領!?」


 このまま無理に抜け出そうとすれば、大統領の尻を引き裂いてしまうかもしれい。

 とんでもないリスクをはらんだ脱出劇になりそうだ。


 だが、それはある意味、胎児を出産する母親に似た現象だ。


 私が大統領の肛門から飛び出すことで、これまでの人生やキャリアを棄て、第二の生を受ける。

 産声を上げる私は、その後に対面する大統領を我が親とすることができるのだ。


 ――――――――――――――――ママ。


 感動的だ!? なんと感動的な対面!


 冷静(・・)に考えてみれば、このまま大統領の肛門を引き裂いてでも抜け出すべきだ。


 よし! 行くぞ……。

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