表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

第4話 オー・プリティ・ウーマン

 大統領は少し観念したようなタメ息をついてから指示を発した。


「まぁ、いい。君の好きなように入れてくれ」


 ――――君の好きなように入れてくれ。

 好きなように入れてくれ。

 好きなように――――好きなように――――好きなように――――入れてくれ。



 い、いかん!

 今、手に持った座薬を投げ捨て、ベルト引きちぎってスラックスを下ろした弾みで、私のエルヴィス・プレスリーを大統領のケツにブチかますところだった!?


 危うく明日の朝刊の見出しが『大統領、昨晩はア・ビッグ・ハンク・オー・ラブ(恋の大穴)はロックンロール』となるところだった。


「大統領。やはり疲れの影響なのか、筋肉が硬いようです。少しほぐす為に尻を振ってもらってよろしいでしょうか?」


「ん? 尻を……振る?」


「はい。左右に振ってみて下さい」


「あぁ……こうか?」


 大統領が左右に尻を振ると、まるで新鮮な桃がプルプルと揺れているような破壊力を見せた。

 大統領はその効果を確かめる。


「どうだろうか?」


 ――――――――――――イッツ、プリティ!


 違う違う! 新鮮な桃のような尻に見惚れている場合ではない。


 チクショウ!!?

 このケツは、どれだけ私の理性をかき乱せば気が済むのだ?

 こんな魅力溢れるケツなんて消えてしまえばいいのに!


 私は言葉を慎重に選んだ。


「新鮮な――――筋肉の緊張がほぐれたようですね。効果はありました」


 気分が高揚した私は口ずさむことを抑えながら、脳内である曲を再生した。


 アメリカが誇るミュージシャン、ロイ・オービソンの代表曲『オー・プリティウーマン』


 大統領の話は続く。


「どれだけ恨まれても、中国とロシアの傍若無人をいい加減、治めなければならない。これは国際社会を導く大国アメリカの使命だからね」


「おっしゃる通りです。我がアメリカは類をみない発展を遂げた国家です。我が国が世界のリーダーとなり、平和へ導かねばならない。これは一大ミッションなのです」


「あぁ、わかってくれるか?」


「えぇ」


「そうか……」


「しかし大統領。ノーベル平和賞欲しさに密偵を送り、次の受賞者が誰なのか探ろうとしたのは失敗でした。あろうことか、それが外部に漏れてしまい、今や大統領は世界の笑い者。いいピエロとなっています」


「うぅん……」


 し、しまった。口が過ぎたか!?

 私としたことが敬愛する大統領の機嫌を損ねてしまった。

 何か、何か話題をそらさねば。


「で、ですが大統領。中国には『虎穴《こけつ》に()らずんば虎子を得ず』という例え話があります。時に危険へ飛び込まなければ、得られる物はないという意味で使われるのですが、この『虎穴』の『()』の部分を『お』に変えて、お考えて下さい」


「虎穴を『お』に? お……おー……」


「『おケツに入らずんば虎子を得ず』つまり、自ら尻の穴に飛び込むことで、あえて笑い者なる。これにより、世界は貴方に注目する。そんな奇行に走ることで、ノーベル平和賞を欲しているということが全世界に知られる。それは何を意味するのか? 貴方が世界平和を本気で目指しているということの証明になるわけです」


 わ、私は何を喋っているのだ?

 パニックにおちいり自分が何を言っているかわからなかった。

 ずっとケツの話しかしていないではないか!?

 大統領のケツばかり見ていたせいで脳が(しり)化している!?


 これでは益々、大統領の怒りを買ってしまう。

 こんな駄弁で誤魔化せるはずが……。


「なるほどね」


 食い付いた!


「現代で言うところのハイリスク・ハイリターン……『哲学』ならぬ『ケツ学』というわけか。非常に考え深い」


 ちょっと何言ってるかわからないが、話題はそらせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ