第8話 ギルおじちゃんのヘンテコ商売
暖かな日差しと涼しい風が街を包み込む昼下がり。
のんびりとした空気の中、「ギーコギーコ」と荷車の音が響き、ポプリの前でピタリと止まった。
バーン!
勢いよく扉が開いた瞬間ーー。
「あ!ギルおじちゃーん!」
ミーナが嬉しそうに駆け出す。
「ガハハハ!ミーナちゃんにポプリのみんな!元気にしてたかー? 今日はまた、ええもん仕入れてきたぞー!」
豪快に笑いながら、お菓子の袋をミーナに渡し、そのままノシノシと店の奥へ。
「マリーさん、あの方は…?」
初めて見る陽菜乃が首を傾げる。
「ドワーフの行商人、ギルバートさんよ。時々こうしてガラク…いえ、“ユニークな”品を売りに来るの」
(今、“ガラクタ”って言いかけた…よね?)
陽菜乃の心の声をよそに、ギルバートは慣れた手つきで荷を広げる。
「ギルさん、今日は何を持ってきたんだ?」
声をかける常連客。
いつの間にか人が集まり、店は小さな市場のように賑わい始めた。
「マリーさん、いいんですか?あんな勝手に…」
「えぇ、いつものこと。代わりに困ったときは助けてもらってるの。この前も扉の建て付けを直してくれたのよ」
「へぇ、持ちつ持たれつってことかぁ」
納得顔で陽菜乃も輪に加わると、ちょうどギルバートの横でミーナが興味津々に声をあげた。
「ねぇギルおじちゃん、この羽根ペンみたいなのなぁに?」
「ほう!ミーナちゃん、見る目あるのぉ!」
羽根が四枚ついた奇妙なペン。先端は尖っているが字は書けなさそうだ。
「こりゃあ、自動で本のページをめくってくれる羽根さ!」
「……?」
一同、ぽかん。
「百聞は一見にしかず!いっぺん試してみよう」
ギルバートが本を広げ、羽根をちょんと触る。すると…
バサッ、バサバサバサーーーッ!
「うおっ!? お、おい止まれ止まれー!」
羽根は勝手に暴走し、ページを一気に飛ばしてしまった。
「やれやれ」と常連客たちがため息をつきつつも笑いを堪えている。
続いて「中身がなくならないコップ」や「自動で草を抜くスコップ」なども披露されるがーー
コップは熱々すぎて、そもそも飲むことが出来ず、スコップは勝手に暴れ回って床に穴を開けそうになる始末。
「やっぱりなぁ」
「ギルさんの品だしなぁ」
常連客たちは呆れ顔で席に戻るが、その顔はどこか満足げだった。まるで一つの漫才を見終えたかのように。
そんな中、ミーナだけはキラキラした目で立ち尽くしていた。
「ママ! ミーナこれ欲しいっ!」
手していたのは、あの暴走羽根ペン。
「絶対ダメよ!」
食い気味の即答に店内は笑いに包まれる。
ギルバートは肩をすくめつつも、マリーが笑顔で保存用のお菓子瓶を購入すると、満足そうに頷いた。
「よーし!次はもっと面白いもん持ってくるぞー!」
ドワーフの豪快な声と、常連客や陽菜乃の笑い声に包まれ、ポプリは今日も賑やかだった。




