第5話 ただの友達…だよな?
ダニエルが帰ってきた翌日、ポプリに可愛らしいお客がやってきた。
「ミーナ!」
入口に現れたのは、街の領主の孫である双子の獣人、シルクとライムだった。ミーナはテーブルの上の片付けをしていた手を止めて、ぱぁっと笑顔になる。
「シルク!ライム!来てくれたんだね!」
「おう!二人ともいらっしゃい。元気そうだな!」
「お久しぶりです、おじさん。こんにちは」
丁寧に挨拶をしたのは、双子の姉シルク。優しくしっかり者で、ミーナとも仲良しだ。
「べ、別に俺は来たくて来たわけじゃ…って、いってぇ!シルク!」
腕を抓まれて顔をしかめるライム。
「ごめんなさい、ライムったら相変わらずで」
ダニエルは豪快に笑って受け止める。
「アッハッハ、変わらないなぁ。これからもミーナと仲良くしてやってくれよ」
「はい!もちろんです」
シルクがにこりと笑う横で、ライムはぷいっと顔を背ける。
その視線の先に、ジュースをお盆に乗せてやってくるミーナの姿があり、途端に目を逸らした。
「ふふっ」
それを見逃さなかったシルクが、意地悪く口角を上げる。
「ここに来れば、いつでもミーナに会えるもんね。ねぇ、ライム?」
「なっ……?!ち、違っ…俺は別に……!」
慌てふためくライム。耳の先まで真っ赤だ。
「私がどうしたのー?」
何も知らないミーナが、ジュースを置いて席につく。
「な、なんでもないっ!」
ぶっきらぼうに答えるライムに、シルクはくすくす笑いをこらえきれない。
「ミーナに会えるの、楽しみにしてたんだよ」
にっこり微笑むシルクに、ミーナも嬉しそうに笑い返す。
「私も二人と会える日は楽しみだよ!」
そんな3人の様子に、常連客も自然と頬を緩める。
最近の話や面白かった話、好きな物の話など、可愛らしい子供たちのお喋りが店内を賑わせ、あっという間に時は過ぎる。
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「そろそろ帰らないと」
シルクが時計を見て立ち上がる。
「えー、もう?」
残念そうに声を上げるミーナ。
「今日はおじい様と出掛ける予定なの。そうだ、今度はうちにも遊びに来て!ね、ライム?」
「お、俺はどっちでも……来たけりゃ来ればいいだろ!」
「やった!ありがとうライム!」
無邪気に喜ぶミーナに、ライムはますます顔を真っ赤にする。
「じゃあ、お邪魔しました。ごちそうさまでした!」
シルクが丁寧に頭を下げると、マリーもにっこり微笑んだ。
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その時だった。
見送りに扉まで駆けていったミーナが、床に躓き、身体を大きく傾ける。
「っ……!」
反射的にライムが飛び出し、腕を伸ばしてミーナを抱きとめた。
「危ないだろ!」
胸にすっぽり収まるように支えられたミーナは、一瞬きょとんとしたあと、ほっと笑顔を浮かべる。
「びっくりした!ありがとう、ライム」
「……っ!」
抱きしめるような形になっていることに気付き、ライムは慌てて手を離す。
「た、助けたくて助けたんじゃない!ただの偶然だからな!」
「??? でも助けてくれたんだよね?ありがとう」
ミーナは不思議そうに首をかしげる。
「……う、うるさいっ!」
ライムは耳まで真っ赤にしながら視線を逸らした。
シルクや常連客、マリーは思わず口元を押さえて微笑む。
だがダニエルだけは複雑な気分でその様子を見つめていた。
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二人を見送ったあと。
「なぁマリー……ライムは、ただの友達だよな?!」
慌てて尋ねるダニエルに、マリーは楽しげに笑って肩を竦める。
「ふふふ、どうかしらね?」
そう言ってサッと仕事に戻るマリーの後ろで、ダニエルは気が気でない様子で、焦って彼女の後ろ姿を追いかける。
そんな二人の様子を不思議そうに、しかし、楽しそうに見つめるミーナの姿がそこにはあった。




