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ポプリの街角  作者: かすみ草と金木犀
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第14話 白の巡り・雪祭り〈前編〉

リンゴーン、リンゴーン――。

雪祭りのメインイベント「宝探し」開始の鐘の音が、澄んだ冬空に響き渡る。


「大変!陽菜乃さん!宝探し始まっちゃう!受付でバッチをもらわないと!」


ポプリの店内にいた旅人たちも一斉に席を立ち、会場へと向かっていく。


「ミーナ、陽菜乃ちゃん。たくさん楽しんでいらっしゃい」


マリーは空いた食器を片付けながら、二人をやさしく見送った。

表に出ると、広場で受付を済ませた人達とすれ違う。

こちらの方に宝物を探しに来たようだ。

よく見ると、皆胸元に雪の結晶の形をしたバッチを付けている。


「あれがないと参加できないんだね。でも、もう鐘が鳴っちゃったけど大丈夫なの?」


「受付はずっとやってるよ。でも、宝物は早い者勝ちだから、急がないとどんどん見つけられちゃうの!」


なるほど、と陽菜乃は頷き、マフラーをしっかりと巻き直して広場に向かう。



広場の中心には大きな噴水があり、その脇で受付が行われている。

通りの両側にはたくさんのテントが並び、湯気を立ていい匂いを漂わせた屋台や子供たちの好きなお菓子屋、雑貨店などが立ち並ぶ。

特設ステージでは、この街の領主・レオンが祭りの開会挨拶をしているところだった。


「あ!シルクとライムのおじいちゃんだよ!」


「あの方が領主さんなんだね……。威厳のあるお顔立ち……!」


ちょっと緊張して背筋を伸ばす陽菜乃。

そこへ聞き覚えのある声が響いた。


「ミーナ!陽菜乃さん!」


レオンの孫、シルクとライムが駆け寄ってくる。


「シルク!ライム!おはよう!」


「おはよう!二人とも、受付はもう終わった?」


「まだだよ、今から行くとこ!」


そう言って歩き出そうとした時――。


「おいおい、陽菜乃はどう見ても子どもじゃないだろ?」


ライムの言葉に、陽菜乃は思わず立ち止まる。


「た、確かに……大丈夫なのかな?」


ちょっとしょんぼりした陽菜乃に、シルクが笑いながら言った。


「大丈夫ですよ!このイベント、誰でも参加できるんです。他の街から来た人もいますし。

ただ、この街の大人たちは宝物を隠す係とか屋台の当番だから、参加者は子どもが多いんです」


見回すと、確かに小学生くらいの子どもが大半だが、家族連れや若い旅人の姿もある。


「ね、だから気にしなくていいんですよ!ライムも、変なこと言わないの」


「へいへい、分かったよー。仕方ないから、そういうことにしといてやるよ、陽菜乃」


「ちょっとライム!陽菜乃さんは年上なんだから、呼び捨てにしちゃダメでしょ!」


「堅いこと言うなよ、ミーナ。陽菜乃は陽菜乃だろ?呼び捨てで十分なんだよ」


「ライムのくせに、失礼だよー!」


「……なんだよ、女どうしで手なんて繋いじゃってさ」


プイっとそっぽを向くライム。

その小さな声を聞き逃さなかったシルクが、ニヤリと口角を上げて囁く。


「ライム、本当はミーナと手を繋ぎたかったんでしょ?」


「なっ!? 何言ってんだよ、シルク!! 

よ、よし!勝負だ、ミーナ!お前と陽菜乃チーム、俺とシルクチーム! より良い宝物を見つけた方が勝ちだ!行くぞ、シルク!!」


真っ赤になって叫び、逃げるように走り去るライム。


「ちょ、ライム、待ってよー!……ごめんね、二人とも!楽しもうね、また後で!」


残された陽菜乃とミーナは顔を見合わせ、苦笑いを交わす。



受付を終え、バッチを胸に付けて街の中を歩き出した二人。

雪の粒が光を受けてきらきらと舞い落ちる。


ズンズンと進む陽菜乃の後ろで、ミーナがふいに立ち止まった。


「ミーナちゃん?どうしたの? もしかして宝箱、見つけた?!」


首をぶんぶんと振るミーナ。頬がほんのり赤い。

何か言いたげにして、でも言葉が出てこない様子。


「どうしたの?」

優しく問いかけると、ミーナは小さな声でぽつりと話し始めた。


「あのね……ミーナね。陽菜乃さんと仲良くなって、お友達になってくれて、“ミーナちゃん”って呼んでくれて、すっごく嬉しくて……でもね……ライムは陽菜乃さんのこと呼び捨てにしてるし……だから、ミーナも……」


顔を真っ赤にしてうつむくミーナ。


陽菜乃は、くすっと笑って言った。


「あー、私も、仲良しの友達みたいに呼ばれたら嬉しいなぁ~」


わざとらしく大げさに肩をすくめてみせると――


「い、いいのっ!?」


「もちろん!」


「わぁーい!じゃあこれから、ミーナ、陽菜ちゃんって呼ぶね!」


その笑顔は、雪よりもまぶしくて。

陽菜乃は思わず笑い返した。


「よしっ、じゃあ二人には負けてられないね!」


ミーナの手を取ると、二人は白い街の中へ駆け出していった。

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