第12話 ホッとする診断
外は冷たい風が吹き抜け、ときおり粉雪が舞い散る季節になっていた。
街行く人たちは肩をすくめ、マフラーや手袋に身を包みながら足早に目的地へと向かっていく。
「いやぁ、すっかり寒くなりましたなぁ」
「えぇ、本当ですなぁ。こりゃ積もるかも知れませんなぁ」
すれ違う人々の会話を耳にしながら、陽菜乃も「う~、寒い」と小さく身を縮める。
辿り着いた「ポプリ」の扉を開けると、ふわりと暖炉の火のぬくもりと、甘い香りが迎えてくれた。
常連客たちは湯気の立つスープやドリンクを前に、談笑に花を咲かせている。
「あ!いらっしゃいませー、陽菜乃さん!」
カウンターから顔を出したミーナが、ぱっと明るい声をあげた。
「ミーナちゃん、こんにちは。こっちの冬もやっぱり寒いのねぇ」
「うん。雪もいっぱい降るんだよー!」
「そうなのかぁ。こんな日は、やっぱり温かいものが欲しくなるね」
にこにこ笑顔のミーナが、「じゃあこれ!」と差し出してくれたのは、特製のメニュー表だった。
「”ホット“するドリンク診断…?」
「そうだよー!寒い日にぴったりの飲み物なんだけどね。どれを選ぶかで、性格が分かるんだよ!」
「へぇ、心理テストみたいなものかな?」
「しんり…?テスト?」
首を傾げるミーナに、陽菜乃は「ううん、こっちの世界にはないんだね」と苦笑しつつ、メニューを眺める。
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1.森のはちみつジンジャーミルク
森の養蜂家から届いたはちみつをたっぷり使用。
2.雪いちごのカカオラテ
甘酸っぱい苺と濃厚チョコのホットドリンク。
3.陽だまりスパイスチャイ
シナモンとオレンジピールが香るチャイ。
4.月明かりハーブティー
カモミールとラベンダーをブレンド。
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「うーん、悩むなぁ……」
しばらく迷ったあと、陽菜乃はおずおずと顔を上げる。
「……1と3、両方ってあり?」
「ふふっ、陽菜乃さんらしい~!うんうん、どっちもピッタリだよ!」
すっかり納得顔のミーナに、陽菜乃は「どんな意味なのー?」と身を乗り出す。
くすくす笑いながら、ミーナが答えを教えてくれる。
「1はね、明るく元気で、周りのみんなまで元気にしちゃう人!」
「3は、新しい出会いとか体験を楽しむ、好奇心いっぱいの人だよ!」
「……あ、当たってるかも」
思わず照れ笑いしながら、結局どちらも注文してしまう陽菜乃。
まずは、はちみつジンジャーミルクをひと口。
やさしい甘さのあとに、しょうがのほのかな熱が喉をくすぐり、じんわりと体の奥まであたたかさが広がっていく。
もうひとつのチャイは、シナモンとオレンジピールの香りがふわりと鼻に抜けて、飲み込むたび、胸の中まで晴れやかな陽だまりに包まれるようだった。
手にしたカップから立ちのぼる湯気と香りに包まれて、自然と肩の力が抜けていった。
窓の外ではしんしんと雪が積もり、子供たちが雪の動物を作ったり、埋もれて遊んだりと大はしゃぎ。
その光景を眺めながら、陽菜乃はカップを両手で包み込み、ほっと息をついた。
「ふふ、外に出るのがちょっと億劫になっちゃうなぁ」
そう呟きながら、いつも以上にのんびりと「ポプリ」での時間を味わっていると、壁に貼られたポスターが目に入る。
『ベルノート名物、雪祭り』
ポプリがあるこの街――ベルノートでは、雪の季節になると雪と灯りで彩られるお祭りが開かれる。
街のあちこちに宝箱が隠され、子供たちが夢中になって探し回るのだという。
「雪祭り…?」
ポスターを見つめる陽菜乃の元に、ミーナが駆け寄ってきて嬉しそうに教えてくれた。
「宝箱がいーっぱい隠してあってね、子供たちが探すんだよー!
中にはお菓子とか玩具とか、いろいろ入ってるの!
夜はキャンドルがキラキラして、すっごくキレイなんだよー」
「えー!楽しそうだねぇ!私も参加したいなぁ」
楽しみが増えたと言って、手帳の予定欄にしっかり書き加える。
外では子供たちがはしゃぎながら家路に向かっていた。




