第9話 ミーナのひみつ作戦
いつものポプリ。
だけど、最近のミーナは少し様子が変だった。
「……なんだか、こそこそしてるのよね」
カウンター越しにマリーが首を傾げる。
「陽菜乃ちゃん、悪いけど様子を見てきてくれない?なんだか隠してるみたいで」
「わかりました!」
陽菜乃はひそかな調査を任され、ミーナの元へと向かう。
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「ねぇミーナちゃん。最近、なんだか忙しそうにしてるけど、何してるの?」
「!!」
ミーナは慌てて見ていた紙切れを抱え込む。
「な、なんでもないよ!」
「ふふ、大丈夫。ママには言わないから」
小声で囁くと、ミーナは少し安心したようにこくんと頷き、やっと口を開いた。
「ママにはナイショだよ!陽菜乃さん、ミーナのお手伝いしてくれる?」
「もちろん。どんな秘密なの?」
「ママ、毎日いっぱい頑張ってるでしょ?だから、何かプレゼントしたいの!」
目を輝かせて語るミーナに、陽菜乃は思わず胸が温かくなる。
「陽菜乃ちゃん、どうだった?」
マリーの追求を何とか誤魔化して、ミーナの手伝いをすることになった。
何だか二重スパイみたいだとウキウキする陽菜乃だが、マリーの「やっぱり怪しい…」という視線を感じつつ、気付かないふりをする。
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それから数日、ミーナと陽菜乃はこっそり作戦を進めていった。
街で可愛いお花を選んだり、カラフルな画用紙で手作りカードを作ったり。
「『いつもありがとう』って書いたらどうかな?」
「うんっ!ミーナ、ハートもいっぱい描く!」
小さな手をクレヨンで真っ黒にしながら、一生懸命仕上げていくミーナ。
陽菜乃はそっと微笑んで、その姿を見守っていた。
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お店が少し落ち着いた頃。
「ママー!」
ミーナは後ろ手に大きな花束とカードを隠して、満面の笑みでマリーの前に立つ。
「ミーナ、どうしたの?」
「ママ、いつもありがとう!これ、プレゼント!」
パッと広がる花束。
そして、色鮮やかな手作りカード。
マリーは一瞬言葉を失い、やがて瞳を潤ませながらミーナを抱きしめた。
「ミーナ……本当にありがとう。ママ、とっても嬉しいわ」
その様子を遠くから見ていた陽菜乃に、マリーが気付いて微笑む。
「……陽菜乃ちゃん、やっぱり何か知ってたでしょ?」
「え、えへへ、秘密です〜」
そのやり取りに、常連客からも優しい笑いがこぼれる。
ふと陽菜乃は微笑みながら口にした。
「私の国には『母の日』っていう日があるんですけど……今日はポプリでの母の日になりましたね」
「うんっ!ポプリの母の日ー!」
ミーナが元気に笑い、店内はあたたかな空気に包まれた。




