表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポプリの街角  作者: かすみ草と金木犀
1/5

プロローグ

「……ここ、どこ……?」


葉山陽菜乃(はやまひなの)は、見慣れない街角に立ち尽くしていた。

午後の光が斜めに差し込み、淡く石畳を照らしている。考えごとをしているうちに、いつの間にか知らない通りに迷い込んでしまったらしい。


両脇には古びた建物が立ち並び、まるでヨーロッパの古都を思わせるノスタルジックな景観が広がっていた。

どこか現実離れしていて、けれど、心惹かれる――そんな空気を纏っている。


その一角に、妙に目を引く建物があった。

静かに佇むその店は、まるで時間から取り残されたように、ひっそりと存在感を放っていた。


看板には見慣れない文字が描かれている。


「……ポプ、リ……?」


初めて見るはずの言葉。それなのに、不思議と読めてしまった。

この場所には、“普通じゃない何か”が潜んでいるような気がする。


陽菜乃は、戸惑いながらも意を決して扉に手をかけた。


扉を開けると、木の香りがふんわりと漂ってくる。

店内の中央には、大きなシンボルツリーが根を張り、枝葉を広げていた。

レトロなテーブルとイス、木製のカウンター――そこには穏やかな空気が流れている。


一見すると、落ち着いた雰囲気の喫茶店。

だが、どこか違和感がある。


ふと周囲を見渡すと、そこにいたのは――見たことのない姿の“人々”だった。


尖った耳、毛皮に覆われた肌、異形の尾や瞳。

まるで異世界の住人のような“亜人”たちが、当たり前のようにコーヒーを飲み、談笑している。


客だけではない。店員までもが、全員人間ではなかった。


そのとき、奥から現れた一人の獣人が陽菜乃に気づき、にこやかに声をかけてきた。


「あら、これは珍しい……人間のお客様だなんて。ようこそ、いらっしゃいませ。お好きなお席へどうぞ」


驚きながらも、陽菜乃は空いていた窓際の席に腰を下ろす。


「い、いらっしゃいませ! こちら、メニューになります。決まりましたら、お呼びください」


白い猫耳の、可愛らしい獣人の子どもが、小さな声で一生懸命にメニューを差し出してくれる。

さきほどの獣人と親子なのだろうか。無垢な仕草に、思わず頬が緩んだ。


(……私、夢でも見てるのかな。

じゃないと、この状況、説明つかないよね……)


この不思議な出会いをきっかけに、陽菜乃は様々な“異世界の住人”たちと出会い、思いがけない経験を重ねていくことになる――。


だが、それはまだ少し先の話。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ