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記憶図書館司書の探偵物語  作者: 吉本アルファ
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第7話 記憶の真実

アルバスの裏切りを目の当たりにし、ついにすべての記憶を取り戻した王子、ライオス。彼の瞳には、記憶を消される直前の、絶望と怒りが宿っていた。


「…アルバス、なぜだ。私は、お前を父のように慕っていたのに!」


ライオスの声は震えていた。アルバスは、ライオスが記憶を失い、自分の言いなりになると思っていた。しかし、アリスが彼に与えた温かい記憶は、アルバスの計画を根底から覆した。


「すべては、この国の、この世界の不完全な記憶を正すためだ。完璧な人間が、完璧な国を治めるべきなのだ!」


アルバスは、狂気をはらんだ目で叫び、再びアリスとライオスに攻撃を仕掛けてきた。彼の攻撃は、無数の「歪んだ記憶」の刃。悲しみ、憎しみ、絶望…人々の負の感情が、二人を襲う。


アリスは、ライオスを守るため、自らの能力を最大限に引き出した。 「過去の記憶は、乗り越えるためにあるんです!こんなものに、負けたりしない!」


彼女は、アルバスが作り出した「歪んだ記憶」の刃に、ライオスに与えた温かい記憶を重ねていく。 ハーブの香りの人形、星空のスープ、そして、温かいクッキー。 温かい記憶は、歪んだ記憶を浄化し、無力化していった。


その様子を見たアルバスは、さらに怒り狂い、自らの持つ書物の最後のページを破り捨てた。 「ならば、お前たちの記憶も、存在そのものも消し去ってやる!」


アルバスが作り出したのは、この世の「無」の記憶。何も存在しない、真っ白な空間が二人を包み込む。 その時、ライオスがアリスの手を強く握った。


「アリス、大丈夫だ。君がくれた記憶は、ここにある」


彼は、自らの胸を指差した。 その瞬間、ライオスが失われた記憶から取り戻した、母の歌声が、無の空間に響き渡った。


『…この子守唄は、お母様があなたに贈る、思い出のレシピよ』


その歌声は、アリスが彼に与えた温かい記憶と重なり、二人の間に確かな絆の光を生み出した。 それは、アルバスが想像すらできなかった、「新しい記憶」だった。 そして、その新しい記憶の光は、アルバスの持つ書物を粉々に砕き、彼の能力を消滅させた。


アルバスは、驚きと絶望に顔を歪ませ、その場に崩れ落ちた。



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