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凡人が持つ平凡な悩み

僕は特別な人になりたかった

でも僕は知っている

自分が普通の人だってこと

あの学者のような脳をもって生まれたかった

あのスポーツ選手のような体をもって生まれたかった

あの起業家のような行動力をもって生まれたかった

あのアーティストのような狂気をもって生まれたかった

僕はどれももっていない


でも僕はもっている

人並み程度には物事を理解できるありふれた脳を

不自由なく生きていけるありふれた体を

みんなに合わせて動くありふれた性質を

ポップミュージックに共感できるありふれた感性を

「特別になりたい」というありふれた悩みを


とてもありがたいことに僕は普通の人で

とても残念なことに僕は恵まれている

こんな悩みはきっと良くない

恵まれない誰かのためにはきっと良くない


そうはいっても憧れは消えない

だから努力をいっぱいした

自分は特別だと言い聞かせて

自分は特別だと言いふらした

人よりバカを装って

不器用な人を装って

みんなと違う行動をして

みんなと違う音楽を聴いた

それでもやっぱり特別にはなれない


そんな悩みに耐えかねて

特別な友達に相談をした

友達は重い病気を患っていた

恵まれない友達は僕に対してこういった

お前は恵まれすぎなのよ

そうだろうか そうなんだろう

だから僕は言ってやった

僕はあなたになりたいと

そう脳内で言ってやった

現実の僕は茶化して逃げた


悔しかった 悲しかった

生きれば生きるほど僕が普通だと気付かされた

生きることが恐ろしかった


だから僕は死んでやろうと思った

自殺するのは特別な人だと思った

少なくとも周りの人はそう感じてくれると思った


決断してからは早かった

遺書を何枚か書いてすぐに自殺の名所の崖に向かった

崖に向かう電車の中で僕は特別な気分だった

特別な人になった気でいた

電車とバスを乗り継いで着く頃にはもう日が沈みかけていた


バスを降りたその瞬間

美しい夕日が目に飛び込んできた

ありふれた僕の感性はその夕日を美しいと思った

十分くらい呆然と立ち尽くして

ふとここにきた目的を思い出した

僕は目的を忘れてしまったような態度で帰りのバスの時間を調べた

やっぱり僕は普通の人だった

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