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農家で恋愛相談

「ねぇ、マークはどう思う?」


僕の家は王都郊外の農村地帯にある、貧しい家です。

一応、退職金はあるけれど先を考えたら、おいそれと使うことはできません。


そして、そんな貧しい家の椅子に座っているのが、僕が住んでいる王都ハルマディアの第一王女のスフィア様です。


僕は、騎士でした。剣の才が認められて平民ながら騎士の末端になれたんです。


あの時は本当に嬉しかった。


でも、ある事件で片目を失いました。

視界が狭まっても騎士の務めを果たすつもりでしたが、

周りから気を使われるのが辛くて今年の春に騎士を辞めて実家で農業をしています。


既に両親は流行り病で亡くなりました。

独り身ですが、僕はこの家を守ると決めたのです。


国の戦力にはなれなくても、自分の家くらいは守るつもりで剣術稽古はかかせません。


そして、スフィア様はほぼ毎日、この家にきています。

初めは従者の馬車できていましたが、今ではひとり馬に跨り朝から家にきています。


「聞いています?」


「あ、はい。何さんでしたか?」


「もう!」


正直、立場もありますが、性格的にも僕はスフィア様が苦手なんです。


実際、僕が騎士の時は平民のくせにと冷たい目で見られていました。


だからスフィア様が、騎士団を視察にきた時はいつも隅でやり過ごして極力視界に入らないよう気をつけていたんです。


「公爵家のマリアナが婚約者を連れて私に挨拶にきたんだけど、何か嫌味くさいのよね。」


スフィア様は恋愛話しが多い。そして僕に答えを求めるのだけれど、僕は貴族ではないし、晩餐会の出席もなければ招待もない。


だから上流階級の恋話に答えなんか言えないんです。


「スフィア様も婚約者を紹介すれば宜しいのでは?」


僕の答えが的外れだとスフィア様はテーブルを指で小突いて不満そうな顔を見せます。


「いたらしていますわ。」


確かにそうだ。あまりにも雑な対応だったかもしれない。地位的に花を送る男性は列をなすだろう。でも、スフィア様は僕が知る限り一度もお見合いすらしていない。


「性格ですかね。」


僕も僕だ。スフィア様が怒るような言葉を口にしてしまう。別に王族でも他でも、女性に性格難を告げたら誰だって良い顔はしないだろう。


「私は、最近よくお優しいっていわれていますのよ。」


なるほど、外っ面だけは立派と言うことか。さすがに諸外国の要人と顔を合わせているだけのことはある。


「好みを聞いても宜しいですか?」


その満面の笑み。それだけ見せていれば絶対に直ぐ婚約者が見つかりますよ。


スフィア様は、僕が質問をすると何時も嬉しそうにする。確かに最近はスフィア様は笑顔が多いかもしれない。お優しいもあながち嘘ではないのかも。


騎士の時は冷たい人だと思っていたし。


「そうねぇ〜。お金はいらないわね。容姿もきにしないかも。だってさぁ偉くても綺麗でも年取ったら皆シワだらけじゃない。」


それはそうだけど…


「やっぱり性格かな私が求めるのは。」


勇敢で優しくて、私を包んでくれる人。スフィア様は自分の答えが恥ずかしいのか窓の外を見ている。


「マークはどんな人が好みなのかしら?」


僕の好みを聞いても何も面白いことはないけど、そんなに聞きたいのかな?


「僕は今…農民だから、一緒に畑仕事をしてくれる人ですかね。」


「私…できる!」


何の強がりですか。僕はスフィア様の意味不明な強がりに思わず笑ってしまいました。


そんな高価な指輪やネックレスを身に着けた農民がいたら僕に紹介してほしいくらいだ。


貴女は土から一番遠い女性なんですよ。


「何よ。…馬鹿にして。」


それからも、スフィア様の恋愛話しは続いた。おかげで僕の畑仕事は今日も中途半端だ。


ヒヒーン。


スフィア様の馬の鳴き声。話しに集中しすぎて外を気にしていなかった。


「雨…ですわね。」


スフィア様の馬は馬屋に移動させた。僕の家に…昔は馬がいたらしく、その名残りで馬屋が残っています。まぁ半分は物置だけれど藁もあるし、スフィア様の馬も多少は納得してくれるんじゃないかな。


「結構…強くなるかもしれませんよ。」


王城まで馬で半刻以上はかかる。悪天候なら更に費やすだろう。


帰るなら今が良いと思うけれど。


「そうねぇ。…今日はここに泊まりますわ。」


駄目です。何考えてるんですか。王女なんですから。


……………はぁ。だから僕はスフィア様が苦手なんだよな。


泊まらせないとマークの土地だけ税を倍増します。

兄上、父上に相談します。

雨の中で体調を崩したら土地の没収。


やっぱり、スフィア様に婚約者がいないのは、性格のせいだと思う。


「わ、わかりました。ボロい家ですが、良ければお泊りください。」


農民の家に泊まれて喜んで拳を握る姫様なんて貴女だけですよ。



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