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第17話 大乱闘、アタックゲーム!

「「…………………………え?」」


 真夏を見た天音と猫子の最初の反応はソレだった。


「「……ちょ」」


 二人は息ピッタリに突っ込み、続けて、


「「どういうこと⁉」」

「いやだから、俺のいとこだ」

「ははっ……お前はもう、ギャルゲーの世界に転生してしまったという事か」


 謎の真理を示す学者のように、優作は言った。


「取敢えずあいつは見ちゃ駄目だ」

「え? あ、はい」


 困ったように湊に諭される真夏。

 やや混乱があったが、ようやく五人が優作家の和室に集結した。


「いや~でもまあ~良かったよ」


 突然、優作が言った。


「ん? どうした?」

「いやね、俺のばあちゃんもゲームに入れようと思ったんだ。でも真夏ちゃんが来てくれた御蔭で、大人数でプレイできるよ」


 その時だった。

 四人の居座る和室に、「入るよ~」というしゃがれ声が響いた。

 すぅーっと襖をスライドさせて登場したのは、前傾姿勢になった優作のおばあちゃんだ。

 嘘でしょっていう位に震えて、緊張しているのかと湊は思った。

 おばあちゃんが湊たちに緊張などしているはずもなのに。

 ――いやいや! ゲームに参加ってコイツそんなこと思ってたんか⁉

 湊は礼儀を欠くくらいには驚いていた。


「ああ、おばあちゃん、どうしたの?」

「私、ちょっと出掛けて来るから……」

「ちょ、一人で行くの? 大丈夫? 俺が一緒に行くよ?」

「大丈夫やから」


 隣に座る真夏が小声で湊に囁いた。


「色々な家庭があるのですね……」

「それ以上言うな」


 湊は笑みを抑えたような、渋い顔で囁き返した。


「ですね」


 優作とおばあちゃんの熟練したやり取りに、皆が思った。

 ――あぁ……彼はきっと熟女好きだな、と。

 この御蔭かは分からないが、最初の戸惑いが溶けたように天音と猫子は真夏を優しく受け入れたのだった。



 天音:ていやっ!

 猫子:はいっ!

 優作:クッ!

 湊:なぬっ⁉

 真夏:えいっ!


 五人は、湊の好きなゲームであるアレをしていた。

 和室から真新しいリビングへと移動し、皆はふわふわなソファーに座りながら素早い操作を行っている。

 対戦型ゲームの醍醐味である本気マジな白熱した戦いが画面上で繰り広げられていた。


 湊:おいっ! 猫子! てんめーやったな⁉

 猫子:ぼうっとしていたら、私が食べちゃいますよ~‼

 天音:んぎゃっ! ちょっと優作さん! 殺さないで!

 優作:あはは! ごめんごめ――って、アッ⁉ いつの間に?

 真夏:あ、ごめんなさい。


 爆笑が起きる。

 皆でわいわいと盛り上がって、時には真顔でガチバトル対決をプレイして一時間……昼時になった。


 湊:ぐぅ~~~きゅるきゅる、ぐぅ~~~。

 猫子:!

 天音:!

 優作:!

 真夏:!


「腹が減った」

「ほんと、アンタって大食い選手にでもなった方がいいんじゃない?」

「にゃはは……よく食べる先輩は大好きです!」

「よしッ! なら、今日は庭でバーベキューをしよう!」


 優作は立ち上がり、そんなことを宣言した。


「実は、準備はもう済ませてあるんだ」

「お~、さすが優作だな」

「でも、いいんですか?」


 天音の心配そうな声音に、優作は溌剌と答えた。


「大丈夫!」


 そんなやり取りをしている中、湊はふと、隣に座る真夏を見た。

 どこかぼうっとしながら、テレビ画面を見詰めていた。


「どうした?」

「はっ! いえ、なんでもありません」

「ん、そうか」


 すると。


「真夏ちゃんはバーベキューしたことある?」


 天音が真夏に話し掛けた。


「いえ、ないです……」

「じゃあまだバーベキューバージンということになりますね~」

「おい猫子」  


 不快な表現に、湊はじろりと猫子を睥睨する。


「きゃー♡」

「はあ、お前の頭の中を覗いてみたいよ」

「いいですよ♪」

「じょ、冗談だからな?」

「あら、そうなんですか」


 真夏はまだ緊張している様だったが、それでも徐々に打ち解けている、だろう。

 まあ、最初は会話をするのにもカチンと固まってしまっていたから、打ち解けてきたと言っても差し支えないだろう。


「さっ! 準備しようか」


 優作は高々にそう宣言した。



 玄関とは真逆の方にある庭に出る。

 そこには既にバーベキューセットが設置されていた。

 湊が必要なものだろうと思って買ってきた菓子類と飲み物類は、ここで消費されるらしい。

 季節は案外秋に近い時期なのだが、東京は未だ気温が高く、熱かった。

 北海道とは大違いだ。

 肉、野菜、ジャガイモ、とうきび……、たくさんのものを巨大なコンロで焼く。

 そして会話に花を咲かせ、数十分。


「よし、焼けたッ!」


 優作がそう宣言すると、湊は颯爽と割り箸でその美味しそうに焦げ目のついた肉を抄いあげた。


「げっ! ちょっとアンタそれ私が育てあげたやつ!」

「ははっ……! ほら取ってみるか?」


 すると湊は自らの右手で口元を指した。


「アンタねぇ! 子供なのっ!?」

「子供で何が悪い! って、真夏、君も食べるんだ」

「ふふ……先生が先生に見えないです」

「実は炭で焼いた肉を久しく食べてなかったから、その……張り切り過ぎた」

「いえ、もっと楽しみましょう、私も楽しいです!」


 改めて己を見詰めて見ると、あれ、なんでこんなに興奮していたんだろう、と思う事はなかろうか。

 ――あるよね。

 湊は現在、その現象に駆られていた。


「にゃはは……先輩はそれくらい元気じゃなきゃ困りますよ~」

「まあでも俺も一緒だね。炭焼きの肉なんて久しぶりだよ」


 猫子に関してはいつも通りだったが、優作は頷きながら湊をフォローした。


「編集と行ってないのか?」

「俺が人付き合いが苦手なの知ってるだろ?」

「イケメンがよく言うわ」


 実は、優作は湊と天音と猫子、そして身内以外では物凄い小さくなる。

 背中が丸くなって『もう既にあなたの奴隷です』と示すのだ。

 だから、湊は最初優作と出会った時の彼の反応に驚いたものだ。


「そうかな……まあでも、編集とは仕事の関係でいたいからなぁ」

「その言い方なにとなくエロスを感じます」

「猫子、貴様は黙ってろ」

「にゃはは」



 しばらくの時間が経過し――優作、ともに湊は酒をまるでがぶがぶと音を立てて飲み進め、うとうとし始めた。


「全く……飲み過ぎよ」


 天音が失笑と共にそう言い放つ。

 二人は既に、


「うひっ……! あはははははは!」

「ぶははははははは!」


 物凄い酔っ払っていた。

 お互いの笑いに、お互いが笑っているのだ。


「これ、面白すぎません⁉」と、猫子はスマホのカメラを二人に向けている。

「ふっ……そ、そうね」と、天音も笑いを隠しきれていない。


 真夏でさえ、顔を赤くして笑っているのだ。


「これで、女子会が出来ますね」

「そうね」

「えっ」


 すると、二人は良きピッタリに真夏を見る。


「「さて……」」

「えっ!?」


 二人が彼女の元に近づき、


「「話を聞きましょうか!」」

もし、続きが読みたい、面白いと思いましたら、高評価⭐︎⭐︎⭐︎お願いいたします。

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