『青き戦士』第2章:猛襲(オンスロート)(12)
「レッドスカル」は、「もう1人のボク」の周囲をゆっくりと回っていく。
五秒後……回り続けている。
一〇秒後……まだ、回り続けている。
「あのさ……1つ聞いていい? どう攻撃していいか判んないんじゃないの?」
「違……」
一瞬の隙……。いや、「もう1人のボク」から見れば、「レッドスカル」は元から隙だらけだろうけど。
「あっ‼」
「レッドスカル」に飛びかかる「もう1人のボク」。更に、右腿の短剣を抜いて「もう1人のボク」に飛びかかるボク。
ボクの右手の短剣と、「もう1人のボク」の右手の刃が交差する。
その時、ボクは右足に「捻り」を入れる。足首から膝へ、膝から股関節へ、「捻り」は少しづつ大きくなり……。
だけど、その途中で、轟音。
「もう1人のボク」の「鎧」の背面から余剰エネルギーが噴射される。
その勢いで、ボクの右手の短剣は弾き飛ばされ、「もう1人のボク」の位置そのものが大きく変る。
マズい。
向こうから突っ込んで来るのは「レッドスカル」。
「もう1人のボク」はそれを迎撃しようとしていた。
しかし、「レッドスカル」の腕では、確実に瞬殺される。
ボクは「もう1人のボク」にしがみ付く。
だけど、「もう1人のボク」は、余剰エネルギー放出の勢いを排出口ごとに変える事で体を大きく回転させる。
「うわっ‼」
「えええええッ⁉」
ボクと「レッドスカル」は激突。
「ねぇ……1つ頼み事が有るんだけどいい?」
「な……何?」
「キミは、ここから逃げろ……。そして……チャユ経由でボクの世界の『青の竜神』の巫女に伝えて欲しい事が有る」
「何を?」
「1つ……他の世界の『青の竜神』の巫女から、そいつの世界への門を開けろと言われても絶対に開くな。2つ……韓国の釜山に移された他の『平行世界』との門を開く機械を機能停止させろ。3つ……他の平行世界版の『自分』から『門』を開けるように頼まれても、絶対に従うな、と知っている限りの『神』の力の使い手に伝えろ」
「ま……待って……貴方の世界の貴方の仲間に……」
「話は後だ‼ このままじゃ2人ともやられる‼ どっちかが逃げるしか無い‼」
ボクは立上り「もう1人のボク」に目掛けて……。
しかし、「もう1人のボク」の左足首に「捻り」。その「捻り」は、膝・股関節・胴体と伝わっていく内に、だんだんと大きくなり……。
ボクの右の拳と、「もう1人のボク」の右掌底。
先に相手の体に触れたのは、「もう1人のボク」の攻撃。
そして……ボクの全内臓は……同時に揺さ振られ……。
(青き戦士・第3章「放逐されし者達⦅エグザイルズ⦆」に続く)




