4話・リルタナの記憶2・青年期・王子
黒い礼服を身にまとい数十人の参列者が花を手向けていく。
墓にはルルと書いてあり彼女の葬式であることがわかる。
リルタナが最後に花を置き葬式が終了する。
そのあと自室に戻ったリルタナはただ一人ベットに潜り込む泣いていた。
(かばったはずが目の前で魔物に食われていたんだ。泣きたくもなるか)
その日は一日中自室にこもっていた。
王国では子供が10歳になると半成人式というものを行う。
国にもよるがこの国は20歳が成人なので半成人式だ。
「「あれが傷物の姫か」」
「「静かにしろ。ばれたら首が飛ぶぞ」」
(傷物の姫か。かばった傷のことを言ってるんだろう)
リルタナは暗い表情でうつむいたまま喋らない。
すると近くにいた男の子がリルタナだとは気づかず話しかけていた。
会話は成立しているようで少しずつリルタナの表情も普通になって言った。
式は進んでいき終盤になると少し笑えるようになっていた。
それからはトラブルもなく平和な時間だった。
13歳になり中等部にも進学し、かなり笑うようになっていた。
(たまに悲しそうな目をするがしょうがないだろう。いまだ引きずっている部分もあるだろうしな)
隣には半成人式で話しかけていた男の子がいつもいて楽しそうにしている。
(しかし、何故彼女が国家反逆罪に問われたかを探るべきだな。過去を見れば何か出てくると思ったんだが)
能力に集中して記憶の時間を速くする。
数十秒で数年が過ぎて彼女の投獄される1年前まで来る。
「「姫様、王子殿下がお呼びです」」
「「何かしら?あの愚弟が私に用事?」」
(言い方酷い。まあ何かしらの理由がなければ愚弟だなんてよっぽど言わないだろうけど)
彼女らが愚弟と呼ばれた王子の部屋に行く。
(これは酷いな)
中は物が散乱している状況でベットには美女を囲っている王子がいた。
(これは愚弟と呼ばれても仕方がないな)
「「ガラード。あなたはもう少し部屋を片付けなさい」」
「「僕は姉さんと同じ王族なんだよ?片付けは侍女がやればいいのさ」」
「「侍女を襲おうとしたことが何回もあるから侍女が毎回辞表を出すのよ。
そこの囲ってる女も一緒に片付けなさい」」
「「愚痴愚痴うるさいな」」
「「そんなんだから王位継承権が剥奪されるのよ」」
「「は?何言ってるんだ?」」
「「明日伝えるつもりだったけどあなたが、あまりにもだらしないから王位継承権をお父様が剥奪したのよ」」
「「嘘だろ、、」」
「「こんな嘘つかないわよ、用事がないなら帰るわ」」
リルタナが出て行くと王子の部屋から叫び語が聞こえてきた。
(バカ王子の継承権を剥奪されたらそれを操る貴族が面白くないだろう。
それででっち上げられた可能性が出てきたな)
「「知らせて良かったのですか?」」
「「良いわよ」」
リルタナは自室に戻り目の前に積まれた書類に目を通している。
「「そろそろおやすみになられては?」」
「「そうね。寝るわ」」
彼女が睡眠に入ると同時に彼の記憶進入が終了した。
(記憶進入が終了した?まだ1年前のはずだ。催眠だも施されたか?)
記憶進入は1秒で終わる。
たった1秒にすぎないこの時間に18年分の記憶を処理できるのは能力のおかげであろう。
が、それであっても疲れる物は疲れる。
「眠いな。そろそろ寝るか」
自室に戻り少しばかりの睡眠をとる。
彼の勤務時間は基本21時間である。
能力の牢獄に様々な罪人が入っているため能力が常時発動し栄養を消費し続けている。
そのため彼は1日9時間以上の睡眠、6度の食事が必要になる。
だが仕事なので1日3時間の睡眠、3度の食事で耐えているのが現状である。
栄養失調ギリギリのラインで看守をしているのである。
彼が睡眠に着くと“絶望の牢獄”は静寂に包まれる。
囚人たちは今日も静かに過ごす。
いつか出れる日を考えながら。
牢獄の番人に殺されないように祈りながら。