3話・リルタナの記憶1・幼少期
グロテスクな表現が含まれています
リルタナの記憶に入った彼は見えない幽霊となり彼女の18年間の記憶を見ている。
(ここはリルタナの部屋だった場所か)
贅を凝らした作りになっていてその中央のベットに5歳ほどのリルタナが眠っていた。
隣には絵本が散乱しており読み疲れて眠ってしまったということは容易に想像できた。
数分すると侍女が入ってきてリルタナを起こしていた。
「「姫様、起きてください」」
「「ん〜もうちょっと〜」」
「「もうすぐお茶会ですよ」」
「「そうだった!」」
「「起きましたね」」
「「違う今日じゃないじゃん!騙された〜!」」
「「ふふ、」」
リルタナは侍女とともに部屋を出て王がいる執務室にやってきた。
「「お父様〜!!」」
「「ん?おおリルタナ。どうしたのだ?」」
「「さっきね!ラレラがね!お茶会って嘘ついたの!」」
「「姫様があまりにも起きないことを知ってますので。」」
「「ははは!それはしょうがない。だがリルタナ、お茶会は明日だろう?」」
「「うん!」」
「「こんなお昼に寝ていると夜ねれなくなってしまうだろう?」」
「「うん」」
「「するとお茶会の時間に眠くなってしまうだろう?」」
「「あ、」」
「「な?」」
「「うん!」」
リルタナは幼少期は明るい子だったようで周りの侍女からも可愛がられていた。
それから記憶の時は流れリルタナ7歳。
王都にある名門小学校に入学した彼女はやはりクラスの中心になっていた。
彼にはこんな時期はない。
牢獄で生まれ牢獄で育ち牢獄で働いているからだ。
校外学習がこの学校にはあり年に一回実施されている。
そんな時にも王族に近づこうとするものはいるようで、
「「リルタナ様!是非私と昼食を!」」
「「いえいえ私と!」」
「「え、いや大丈夫だよ?」」
「「ちょっとリルちゃんが困ってるでしょ!」」
「「ルル、、」」
「「行こう!」」
「「うん!」」
(一応まともな友達はいるようだな。あの貴族たちの顔がすごいことになってるけど)
ルルと呼ばれた子供と共に少し離れた場所で弁当を食べている。
「「ルルの弁当少しもらっていい?」」
「「いいよ、でもさその代わりリルちゃんのも少しちょうだい!」」
「「いいよ!」」
(仲よさそうに食べてるな)
「「おいしい!」」
「「ありがと!」」
「「ねえ、あれ何かなぁ?」」
「「くまだ!」」
「「くまは危ないってお母さんが言ってたよ!」」
「「逃げなくちゃ!」」
(助けたいが無理なんだよな)
しかもただのくまではない。爪熊という爪が長く硬い熊型の魔物だ。
爪熊から二人は逃げるが逆に刺激して追いかけられている。
「「大丈夫か!」」
「「先生ー!!」」
「「リルタナ様!こちらへ!」」
「「ルルが先に!」」
「「危ない!」」
譲り合ってるところを爪熊が襲ってくる。
長い爪はルルを襲い反射的に飛び出したリルタナに刺さる。
鈍い音がし爪が貫通する。そして庇ったはずのルルにも刺さる。
即座に剣を持った教師が爪熊を倒すがすでに遅く二人は瀕死の状態だった。
「「救護教師を!」」
「「早くしろ!」」
「「くそ!王女様が死んでしまったら首がハネるぞ!」」
「「そこの平民は後にしろ!」」
救護教師が自身の能力でリルタナを治していく。
(ルルを治してからリルタナを治したほうが良かったのにな)
リルタナの方が深手なので時間がかかる。
その間にルルは死ぬだろう。
30分後リルタナの傷が完治する。
「「次は平民だ!え?」」
リルタナの傷を治すのに夢中だったのだろう。
ルルの遺体はすでに死肉を漁るワーム型の魔物に食われ始めていた。
「「うわぁぁぁ!!」「
「「消えろ!消えろ!」」
魔物が引っ込むとはんば肉塊になりながらもルルの面影を
保った完全な肉塊よりも悍ましいものになってしまった。
「「かわいそうに」」
「「なぁ、もしかするとこっちを先に助けたら両方助かっていたんじゃないか?」」
「「あの傷を治すのに何分かかる?」」
「「、、、」」
「「答えろ!」」
「「10分だ」」
「「その時リルタナ様は何分持った?」」
「「急所からは外れてたから15分。この子供は急所だったから長くて5分」」
「「なんで順番を考えなかった!」」
「「おまえが先に姫様をやれって言ったんだろう!」」
「「冷静な状況判断をしろ!」」
「「やめなさい!それよりも生徒にこれを見せてはいけないわ」」
「「そうだな、、すまん」」
「「ここは?」」
「「リルタナ様!」」
「「ルルは、、?」」
「「起き上がらないで下さい!」」
「「ル、、ル?」」
「「早く隠して!」」
「「隠せ!早く!」」
彼女が見たのはワームが捕食を再開している途中だった。
咀嚼音が再開しリルタナの顔が絶望の色に染まる。
そのままリルタナは気絶した。
「「くそ!見られたぞ!」」
「「とりあえず土で覆え!」」
「「姫様を安全な場所へ!」」
そこで彼女の記憶は途切れた。