2話・能力
昨日、国家反逆罪に問われ永久投獄となった王女が来た。
(いや名字も剥奪されるからただのリメルナか。正直、、)
「めっちゃ、緊張したー!!!」
(女子と話したことのないのにどうやって話せばいいんだよ!こっちはずっとここで生活してんだよ!)
「はぁー。そろそろ飯か。さて、今日はなんだろう?」
机の横にある小さな扉から出来立ての焼き飯がとどけられる。
(美味い。流石は王城の料理人といったところか。)
ここは牢獄であり出入り口は一つしか無い。
出るにはこの男の能力と囚人が入ってきたあの扉しか無い。
彼はこの牢屋の中で絶対的な権力を持っておりその囚人が安全と判断された場合、
たとえ永久投獄を受刑されている者でも彼の権限で釈放させることができる。
それは全て彼の能力より与えられた権限だ。
希少級能力・『牢獄』
その能力は伝説級に達するとも言われている。
能力・『牢獄』は破壊不可の牢獄を作り出し
その牢獄に入れられた者の全てを握ることが出来る能力である。
当然、抵抗して入れられない者もいるが
そんな者伝説級の能力を持っている者だけである。
この世界の大半の人間は通常級が大半で強力級でも
300人に一人生まれるかどうかである。
つまりは受刑者全員の命は彼に握られているのである。
当然、能力もである。
彼の牢に入れられた者は彼に能力を奪われる。
そして生死・肉体・精神・記憶、全てこの男の管理下に置かれる。
そんな数百人の全てを握っている男はのうのうと焼き飯を食べ終えた。
「美味かったな。特別牢に入っているのはリルメナだけか。なら俺だけで配れそうだな。」
特別牢用の余ったいろいろを煮込んだスープをもらい特別牢に赴く。
(上手くはなせますように!)
「こんにちは。お昼ですか?」
「そうだ。食え」
「ありがとうございます。質問いいですか?」
「なんだ?」
「向こうの方の人たちってどうやってご飯食べてるんですか?」
「この時間だけ牢屋を開け炊き出しのような感じで並ばせている」
「逃げたりしないんですか?」
「この牢獄全体が俺の“牢獄”だ。逃げようとすれば死ぬさ」
「そうですか?時間無駄にしてごめんなさい」
「別にいい。暇だしな」
「じゃあお昼の時間だけ私と話しませんか?」
「なんでだ?」
「私も暇でして、、」
「牢獄に来たくせによく喋るな。お前は犯罪者だ。少しは口を慎め」
「すみません」
「別にいい。昼だけだぞ?」
「ありがとうございます、、」
彼は自室に戻りリルメナだけが残される。
(よし!まともに話せた!)
(迷惑だったかな?だったらやめようかな?)
本日、彼は今通常牢に来ている。
「きたっ!」
「ひぃっ!」
「助けて下さい助けて下さい助けて下さい助けて下さい」
「騒がしい。黙れ。」
彼が一言発すると牢獄の中が静寂に包まれる。
(全く、騒がしいヤツらだ。リルタナの方がよっぽど、、ん?)
彼はここ最近リルタナを気にかけている。
初めて投獄された女性ということもあるだろうがもっと別の理由なのは明白であろう。
が、そんなことが人生で一度も無い彼にとってそれは謎の体験。
(謎だ。何故、リルタナをいつも思い浮かべてしまうんだろう?)
今日は連続殺人犯の裁判の日である。やったことは既に確定済み。
最低でも永久投獄であろう。
「おっ、今日は早いな。」
「そいつの罪状は確定事項なんだろう?ならば先に待っているさ。」
「っぺ!なんだこのヒョロいのは!」
「口を慎め犯罪者」
「こんな鎖なかったら一瞬で殺してやるのによ!」
その発言で牢獄にいる全ての受刑者が身を震わせ頭を抱えしゃがみこむ。
彼を恐れているのだ。
数年前、昼の時間5人の犯罪者が彼に襲い掛かった。
能力は失われているが元地方の騎士で身体能力は高かった。
がしかし、襲い掛かった瞬間5人の四肢が四散した。
最後に数秒遅らせ頭を潰し恐怖心を煽った。
まだ犯罪者に対しての嫌悪が強かった頃の話である。
彼は基本、暴力は行わないが絶対ではない。
自身に攻撃してきた時だけ殺す。
それ以来彼にたてつく者はいなかった。
「ヒョロいくせに威張ってんじゃ、、
「やめろー!!」
「は?」
「これ以上やめてくれ!」
「新人は黙れ!」
「助けて下さい助けて下さい、、」
「なんだ、、こいつら、、」
「ああ!あぁぁぁ!!!!」
「やめろ!殺さないでくれぇ!」
「煩い。」
またもや静寂に包まれる牢獄。
連行されているものも異常性に気付いたのか黙る。
「お前の部屋はここだ。後悔しながら生きろ。」
鉄格子が閉まり投獄が完了する。
「全く、どんだけ怖がらせてんだか。」
「はぁ。じゃあな。」
「おう。」
看守の男が牢獄から去っていくとそのあとに彼も自室に戻る。
(昼が待ち遠し、、ん?)
同じような疑問を1日に何回も浮かべて彼は暇をつぶしていく。
ある日の夜。
彼は牢獄の見回りをしていた。
目の前にいるのはリルタナである。
彼は評判だけなら彼女を知っていた。
王女の責務をこなし次期王になれる器だと。
しかしそこで彼は思う。
(何故そんな奴が犯罪を?)
次第に浮かんできた疑問を解消するために彼は能力を使い記憶を覗く。
それにより悩みの毎日を送るとも知らずに。