脱走
特別労働日終了から二日後、
王都王城地下・『絶望の牢獄』にて、
彼は持っていた紙を読み上げそのまま『発火』で燃やし
愛用している鎖鎌を持ちそのまま外に向かっていった。
「なにが“そのような事実はない”だ!糞が!!」
「ひぃっ!」
ガァァァァン!
番人が現れたことによって囚人が静かになった牢獄の中に格子を殴ったような音が聞こえる。
彼が先ほど燃やした紙にはリルタナの無実、多数の貴族の不正、
彼が告発した全ての“事実”が無い物になっていた。
このことから王は既にデラード公爵の傀儡であること、もしくはすでに死亡していることが予想された。
だがその下が問題であった。
解雇通知である。
真実を知る者は極めて少ない。
恐らくデラード公爵の一派であるデラード派以外は彼とリルタナ以外この静かに行われた国家転覆を知らないであろう。
だからこそ彼を排除するつもりなのだろう。
彼の能力はこの牢獄内で絶対的な権力を持つ。
しかしそこから出してしまえば簡単に排除ができる。
そう考えたのだろう。
突然、大きな音を立てて牢獄の扉が開かれた。
入ってきたのは彼の上司と同僚である。
「此の期に及んでなんですか?私はたった今解雇通知をもらいましたが?」
「それについては私の判断では決められなくてな。これは足しにしとけ」
麻袋が渡され中から金属が接触した音がジャラジャラと聞こえる。
「これは?」
「足しにしろと言ったろう?臨時ボ−ナスだ」
「今まで任せっきりだったからな。それにお前の正式解雇日は明日だぞ?」
「そういうことかよ、、お節介な奴らだな、」
「私たちはお前の行動に一切関与していない。それだけは忘れるなよ?」
「わかってますよ」
「明日、その制服をお前の自室に置いておけ、それで正式解雇だ」
「お世話になりました、私の権限は明日まで使えるんですよね?」
「そうだぞ」
ニヤァ、、、
「そうだ」
ニヤァ、、
「分かりました」
ニヤァ、、
王城・謁見の間、
そこはきらびやかな飾りが異常なほどあり王の権力を象徴する勇者の剣を模した巨大な玉座がある場所である。
本来ならそこには国王たるグルタムラ・ベルトリスが座っているはずである。
が、その玉座にはベルドッツ・フォン・デラード公爵が足を組み跪いているデラード派の貴族達をその鋭い眼光で見下ろしている。
その脂ぎった顔には自分がこの世界の中心であると疑っていないことがわかる。
しかし、その表情は脆くも崩れ去ることになる。
「失礼します!」
突然謁見の間の扉が開きデラード公爵の私兵が入り込んでくる。
「何だ?公爵閣下は暇ではない、要件をさっさと、、、
「リルメナ・ベルトリスが釈放されました!」
「なんだと?」
「それは本当か!?」
「まずいぞ!」
「なぜそのようなことになった!?」
「絶望の牢獄の番人が“自らの権限に基づき釈放する”と、、」
「なぜ止めなかった!」
「わ、、わたしには法的にそれができません!」
「静かにしろ」
デラード公爵のその一言で謁見の間は静まり帰る。
「愚王の権限を利用して龍刀之騎士団に始末させろ、番人は正式解雇を
早めて今すぐに追い出しそいつも始末させろ」
「そのようにいたします、、」
この時点ではデラード公爵に焦りは見えない。
「失礼します!」
が、最初の私兵が龍刀之騎士団に命令を伝える前に新たな私兵が走り入ってきた。
「番人が逃亡しました!奴は牢獄内の囚人を王城内に
散乱させリルメナ・ベルトリスと共に逃亡しました!」
「なんだと!龍刀之騎士団への先ほどの命令は取り消しだ!王城内の囚人を片付けさせろ!」
「わ、分かりました!」
自体は重くなり始めてる。
デラード派が消滅するきっかけとなったのはこの出来事だった。
走る。
走る。
雨の中をただ走る。
番人が私を脱走させてくれた。
私は非力だ。
私の能力は弱い。
王都の裏道を走り外を目指す。
この国はデラードに支配された。
もうだめだ。
希望も無い。
息が上がり脚が動かなくなりそこに座り込んでしまう。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
もう無理だ。
走れない。
足音がして振り返ると三人の男がこちらに近づいていた。
「いい女じゃねぇか、へへへ、、」
「おい、俺にも楽しませろよぉ?」
「わかってるって、」
怖い、
逃げなきゃ、、
そう思い動かない脚を動かして逃げる。
でも無理だった。
段差につまずき転んでしまう。
「無理すんなよぉ、」
「死んじまったら困るからな、ギャハハ!」
頰の傷が痛い。
なんとか立ち上がり逃げ続ける。
壁だった。
「そろそろおとなし、、、」
そこで一人の男が倒れた。
「っな!?」
「何処だ!出てきやがれ!」
男と私の間に上から長いローブを着た人が降り立つ。
「その女は俺たちが見つけたんだぜぇ?」
「横取りは感心しないなぁ」
「失せろ、命は助けてやる」
聞いたことある声だった。
私にはこの人が誰だかわかる。
「死ねぇ!!」
男たちがナイフを抜き彼に襲いかかる。
ローブの下から金が混じった鎖についた鎌が飛び出し二人の男の喉元を切り裂いた。
彼がこちらに振り返り何処からか飛び出したもう一枚のローブを私にかぶせてくれた。
「さてリルメナ、これからどうしたい?」




