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第四話    『あ、悪人どものダンジョンぐらい、あっさりと潰してやるのである!?』    その十三


 翡翠眼の奥に煌めいていたのは、明らかに殺意であった。


 それゆえに、アミイ・コーデルは躊躇してしまう。怯えた唇が、兄弟子の名前を口にすることを拒んでいた。


 だって。


 だって、このエルフの少女は間違いなく、彼のことを殺そうと考えているのだから。


 色々な思い出が蘇る。我々、『アルンネイル』は仲良しな集団ではなかったかもしれない。傀儡錬金術師として、高名であり実力のあった師匠の技術や知識を、少しでも掠め取ろうとして必死だっただけの気もする。


 たまには協力したし、皆で料理を作ったこともあったし、キャンプもしたが。


 友人というよりも。


 ライバルであった。


 ……仲がいいわけではない。


 だが。それでも、躊躇する。それは、そうよ。だって、この子は彼を殺そうとしているのだから―――強烈な吐き気をアミイ・コーデルは催していた。口元を抑える。目の前にいるリエルも、ガルフも……何だか自分の知らない世界から来た怪物のように思えた。


 そうだ。


 彼女は間違っていない。


 リエルもガルフも、彼女の世界観には不釣り合いなほどの怪物たちに他ならない。戦士としての才能にあふれた生まれ持っての殺戮者であり、その才能を磨くことに戸惑いや躊躇いを覚えなかった人種である。


 自分が悪人だと思う存在に対して、この二人は容赦なく無慈悲に命を奪うのだろう……直感めいた考えではあったが、それは全くの真実であった。リエルは冷酷な怒りを、その幼い美貌の下に隠している。


 キレイで可愛い人形みたいな顔なのに、今のアミイにはリエルの顔が怖くて直視出来ない。


 ……吐きそう。でも、でも……それを言ったところで、だから何?……って、訊かれそうな勢いだわ……っ。


「……なあ。どうした、アミイ・コーデル?……私は、お前を傷つける気はないのだぞ?とても分別のあるタイプの美少女エルフさんなのだから」


 なんて。


 なんて、信じにくい言葉だろうか……このまま長い沈黙を保ったりすれば、一体、どんな攻撃を受けるか分かったものじゃない。


 すっかりとアミイはリエルに怯えてしまっていた。


 ガルフは悪くない尋問方法だと感じているため、口を出すことはなかった。これで。アミイ・コーデルはおしゃべりになるだろう。もしも、リエル嬢ちゃんが本気で攻撃したら。そうだな。一度目は、スルーして。二度目は止めよう。


 致死性のケガでなければ、別に問題はないだろう。


 コーデル家とモメることになるだと……?


 ……いつもなら、そんな厄介なこと絶対にイヤだが―――今は、それも有りだとガルフは考えてもいた。暗殺者や刺客が、たくさんリエル・ハーヴェルを襲いにくれば?……何という経験値の摂取になることか。


 悪くない。


 リエル嬢ちゃんの弓の技術は、全く問題がなさそうだから。あとは単純に場数を踏ませれば、それだけで今の何倍も強くなる……そうなれば、『パンジャール猟兵団』に相応しい戦士となる……最高の戦士が作り上げる、史上最強の暴力。


 その一角を作るとすれば、この森のエルフの弓姫は絶対に必要な存在で―――。


 ガルフがその邪悪さを隠しきれずに、あの獅子のように強い牙を歪んだ唇からのぞかせようとした瞬間……リエルは語る。


「……名前を告げたくないなら、外見的な特徴だけでもいい。私は、ホーリーが無事であるのならば、そいつらを殺すことはないさ」


「……リエルさん……」


「無益な殺生は好まん。この町の役人どもにでも、捕らえて突き出す……その条件で、特徴を教えてくれないか?……獲物の姿を知らねば、効率的に戦えない」


「…………ホーリー・マルードが生きていたら、彼らを殺さないでくれるのね?」


「ああ。向こうが死にたいのなら、別だがな。圧倒的な戦力の前に、挑戦したいのであれば受けて立つ…………何よりも、ホーリーが死んでいたら、私はその場にいる者を無差別に殺してしまうかもしれん」


「……っ」


「時間もない。速く動いた方が良かろう。サイアクの事態を回避したい。ホーリーがそのダンジョンに長くいればいるほど、危険が増えるだけだからな……早く、情報を寄越せ」


「……そいつは、金髪の碧眼。長身で細い優男。人間族のね。そして……名前は、『エドガー・ライナーズ』……今の『アルンネイル』を支配しているのは、その男だと思う」


「……どういう男なんだ?」


「錬金術師よ。私たちの師匠の、一番弟子だった。師匠と仲が良くて、師匠の知識や技術を、誰よりも多く習得しようとしていた」


 ……利用しようと必死だった?


 ……それだけでもないのだろう。


 きっと、そうだと思う。善良な面もあり、邪悪な面もある。そんな普通にヒトだったように思える……。


 でも。


 分からない。師匠を失ったことが、何かのキッカケになって……エドガー・ライナーズは狂ってしまったのかもしれない。


 ……異存や敬愛の度合いは、それぞれが違っていたと思うけれど。師匠が死んだ時、道しるべを失ったのは確かね。


 『アルンネイル』はは師匠の組織だった……誰も、その事実を変えることは出来なかったのね……。


「……エドガーは、多分、あの子を殺したりはしないと思う」


「……根拠は?」


「……彼は、それほど悪人ではないと思うからよ。おそらく、彼の目的は……一つだけなのよ」


「……なんだい、そいつは?」


「……分かっているんじゃないの、ガルフさんは」


「まあ、予想はついているよ。ゴーレムを使った強盗に、アミイ・コーデルを狙ったことでな……ただの金目的だろう。アミイ・コーデルをゴーレムに誘拐させようとして、何かの手違いが起きた」


「……そうでしょうね。私は、彼らからすれば、錬金術師としての価値は少ない。私に誘拐すべき価値があるとすれば、金銭目的の誘拐だけでしょうね…………ああ。そうか」


「どうしたんだい?」


「……魔術師の杖。私の護身用の武器ね。それに、あのゴーレムは反応した。ホーリー・マルードは、その杖を持っていたから、誘拐されたんだと思う」


「ふむ。そうか……ならば、行こうガルフ―――」


「―――まって。私も、行くわ!!……金銭目的の誘拐であるなら、私とあの子を交換することだって出来るはず……」


「危険だぞ?」


「……そうかも。でも、協力したいのよ。元・『アルンネイル』としてね」




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