再会
遅くなりました!
今週もヨロシクです!
ラズメール山の麓。
まぁ、観光地じゃないから整備されている訳も無いよなぁ?
ただ、火山と聞いてゲームのような、山肌が焼け爛れて溶岩の川があり、山頂から煙が噴いているのを想像していたが、目の前に広がる景色はのどかなもんだ。
緩やかな坂に草原が広がり、そこには草食動物や小型のおとなしそうな魔物がチラホラ見えるくらい。
山ではなくて丘と言った方が良いのでは?
「何か、イメージしてたのと違う。」
「俺も」
ライカが落胆の声を出すも、こればかりはしょうがない。
実際行ってみないと、現地の状況はわからないからな。
「あんだら、御山さ行ぐんか?」
第一村人発見。
老人が声を掛けてきた。
「オヤマ?ラズメール山の事ですか?」
ナビではもう山に入っている筈なんだけどな?
「んだ、この丘の奥さ灰色のが見えんべ?あすこが御山だぁ。」
「あの奥がラズメール山なんですか?」
「この辺全部が御山だべ」
「広いですねぇ。
おとうさんはこの辺に住んでるんですか?」
「あすこに見えんのが、おれの家だ。
ここらはベコが良く育つんでよ、あすこで草食ってるのがおれのベコたづだ。
ほんで?あんだら御山さ入んのが?」
「そのつもりですが、何か許可とか必要なんですか?」
登山計画書とか出さないといけないのかな?
「許可とかは必要ねぇんだけんど、わりぃこだぁ言わねぇがら止めとけ?
こないだも二人組が御山さ入ったけんど、帰ってこねぇのさ。
御山の主様の怒りさ触れたんでねぇかなぁ」
「おやまのぬしさま?」
「んだ、御山にはむがすっから住んでいらっしゃる主様がいんだぁ。
おれたづは御山に敬意ば払ってっから何ともねぇけんど、あんだらみてぇな冒険者たづは、御山ば荒らすやづが多いがんな、すぐに主様の怒りさ触れるんださ。
ほいなやづ等は御山から帰ってこねぇ………」
「ちょっと見て回るくらいなら大丈夫ですかね?」
「わがんねけんど、悪さしねげりゃだいじょぶでねぇが?」
ライカは、イルスマ湿原ではずっと引きこもっていたから、今回の火山をスルーしたら怒りそうだな。
「じいさんありがとな!
マスター、御山の主様とやらに失礼のないように登ろうぜ!」
行きたくないって言えない雰囲気になってしまった。
俺的には、このおとうさんから畜産について色々教えて貰いたい。
ホーンピッグが高値で売れる事が分かったから、是非とも量産体制に入って置きたいんだよな。
ロードさんにお願いはしてあるけど、専門職の人の知識は欲しい所だ。
「何モタモタしてんだ、早く行くぞ!
イルスマ湿原を楽しめなかった分を取り返すんだからな!」
「分かったから、引っ張るな。
おとうさん、色々ありがとうございます。
気を付けて行って来ます。」
「あぁ、気ぃづけでな?」
「はい。」
おとうさんに挨拶をしている最中も髪の毛を引っ張るライカ。
抜けるから止めて、まぁフサフサだから心配ないけど、痛いから………
***************
「結構来たけど、まだ遠いな。」
「車に乗って行こうぜ?」
この草原を車で踏み荒らすのは気が引けるが、疲れたから仕方が無い。
素直に愛車に乗って行こう。
「楽チン楽チン」
「早く着かねぇかな!」
「快適ですねぇ」
俺に座っているのと何が違うんだ?
君達はいつも自分で移動しないだろ?
困ったチビーズだ。
「近付いて来たな。
念の為確認しておくけど、山に入ったらイタズラとかは絶対にするなよ?
主様とやらに失礼な事したら帰って来れないらしいからな。
火山を見たら直ぐに山を降りるぞ?」
火山を見るって火口までかな?
火山はもう見えてるけど満足していない感じだし。
「分かってるって!」
「火山って熱いんだよね?水掛けたらどうなるかな?」
「フウカさん、そう言う事をすると御山の主様に怒られますよ?」
「フウカ、絶対やめろよ?マジで!」
爆弾持ち歩いてる気分だ。
フウカはそう言うイタズラ好きそうだもんな。
溶岩に水掛けた位でどうにかなるとも思えないけど、危ない橋は渡らないようにして欲しい。
「何か、ガタガタしてきたね?」
「うーん、登れる事は登れるけど、お尻が痛くなってきたな。」
未舗装の道はデコボコしていて走りづらい。
普通車だったら車の腹下擦ったり、乗り上げたりして大変何だろうな?
まっ、俺の愛車は行けるけど!お尻が痛いのが難点だなぁ。
「って、お前ら飛んでんのか!ズリィ!」
「だって座ってらんないんだもん!」
「このガタガタは無理だ!」
「こんなに揺れると、気持ち悪くなってしまいます。」
俺も出来るなら飛びてぇよ………
魔法創造で作り出せば出来るかも知れないが、高い所怖いから無理!
「そろそろ歩きじゃないと厳しいな………」
道幅は狭くなって来たし、石と言うより岩がゴロゴロしだして、車では通れ無くなってきた。
今は中腹位か?富士山も5合目までは車で登れるらしいし、結構来たから良いかな。
「ここからは歩きで行くぞ。」
チビーズに車から降りてもらったら、全員俺に座る………
「まて、山登り中は流石に降りてくれ。」
重くは無いけど、三人分の体重はじわじわキツくなりそうだ。
「しょうがないなぁ」
「すまんな。」
「私重く無いですよねっ?」
「重い軽いじゃなくて、少しでも負担を減らしたいだけだから。」
「どっちだっていいぞ?早く火山が見れるならな!」
「ライカ、火山ってのはこの山の事だぞ?」
「そうなのかっ?火山ってもっとドロドログツグツしてる場所の事じゃねぇのか?」
やっぱ勘違いしていたか。
「そいつはマグマや溶岩だな。
火山ってのは、ざっくり言うと地下にあるマグマが地表に出て来た時に出来上がる特徴的な地形の事だ。」
「へー、そのマグマとか溶岩ってのがドロドログツグツしてるのか?」
「そっ。それが見れるのは火口か山の中だと思う。」
残念ながら、地表に溶岩の川は流れて無いからね。
あれって近くにあるだけで結構熱いから良かったけど。
「ヨシ!それを見に行くぞ!」
「マジで?アッツイぞ?」
「おいおい、俺は火を司る妖精だぞ?
少し暑いぐらい、何て事ねぇよ!」
「いやいや、少しじゃないから!
岩とか熔けるレベルの熱さだから!」
「そんなにかっ?!燃えてくるぜ!」
「アホかっ!見に行くのは良いけど、近くには行かないからな?俺が耐えられないから!
それに、イルスマ湿原でライカがそうだったように、今度はスイレンが具合悪くなっちゃうじゃん?」
「そっか……でも、スイレンって今平気なのか?
ここも結構、水のエレメントが少なくなって来てるぞ?」
「それが、何とも無いんですよ。
今度は私が家に戻って、皆さんの体験を聞くだけだと思っていたのですが、普段と変わりが無いんです。
もしかしたら、イトウちゃんから頂いた、このアクセサリーのお陰かも知れません。」
「確か、ウォーターティアって宝石が付いてるんだよな?
直訳すると水の涙?水属性の力が宿っているのかもな?」
「多分その通りだと思います。
このアクセサリーから力が流れて来る気がするんです。
これで私も一緒に観光が出来て嬉しいです!」
「良い物貰ったな。
今度イトウちゃんに改めてお礼を言っとかないとな。」
「はい!」
イトウちゃん本当は知っていたんじゃないか?
良く分かんないって言っていたけど、ウォーターティアって名前は知っていたんだし、それをスイレンにあげたのも偶然じゃない気がする。考え過ぎかな?
〈ドゴッ!ゴンッ!ガンッ!〉
「何だ?何だ?」
突然の爆音。まさか噴火するのか?!
「あっちで誰か戦ってるね?」
「ちょっと見に行こうぜ?」
「こんな所で何と戦ってるのでしょうか?」
あれぇ?焦ってるの俺だけ?三人共冷静過ぎませんか?
「巻き込まれないかな?」
「だいじょぶじゃない?」
「マスターって強いのにビビりだよな?」
「ちょっ!ライカさん!」
「うるへぇ、慎重なだけだ!」
慎重な俺は岩陰に隠れて様子を伺うのです!
「今日こそてめえを倒してやるぜ!大人しくしろ!この邪竜!」
「下がって!エアスラッシュ!」
「いい加減にしろよ~、俺は邪竜じゃねぇって言ってんだろ~、もう帰れよぉ~」
バスターソードを持った若い男がもう一人の初老の男に斬りかかるが、それを軽くひょいっと避ける初老の男。
若い男が追撃しようとした所に、女が声を掛けて若い男が離れると、魔法を放つ。
熱くなっている若い男女に対して、初老の男は勘弁して欲しそうに軽くあしらっている。
技術的な事は分からないけど、若い男女と初老の男の間に腕の差が果てしなくあるのは俺でも分かる。
「ってか、あいつ等ってリィヤとサザンカじゃないか?」
「ハズマ村で会ったお二人ですよね?」
確かにハズマ村で会った二人だ。
意外な所で再会したな。
「ん?おい小僧!客が来たから今日はここまでだ。」
客?誰か来たのか?
「兄ちゃん!そんなとこに隠れてもツレが隠れてねぇぞ?」
ツレ?ゆっくりと岩を見上げると何故かフウカが腕を組んで仁王立ちしている。
「あの……フウカさん?なして堂々と見てるの?」
「どうせ気付かれてるから良いかなって?」
「そうかもしんねぇけど、俺達が隠れてるんだから隠れろよ………」
「結果は変わんないんだから良いじゃん」
もう………この子は言う事を聞かないんだから………
「漫才してねぇでこっちこいよ。」
うーん、ここは穏便に行きたいなー。
「兄ちゃんはこんな所に何の用だ?」
「ただの観光です。
この子、ライカって言うんですが、火山が見たいって言うので連れて来たんです。」
「ほー………」
上から下までマジマジと見られて、恥ずかしい。
「あっ!おっちゃん!」
「小僧の知り合いか?」
「前に世話になった村で会ったテイマーのおっちゃんだ」
「久し振りリィヤ、サザンカも」
「お久し振りです……」
相変わらずサザンカはクールだな。
「誰か分かったんだから続きやるぞ!覚悟しろ邪竜!」
「だぁ、うるせぇなぁ~。
今日はもう終わりつったら終わりなんだよ。」
「邪竜?」
このだらしない感じの初老の男が?
確かに見た目は、子供の教育に良くは無さそうだけど、竜には見えないなぁ。
「おい兄ちゃん、今失礼な事考えてたろ?」
やべっ………
「そっそんな事無いですよ?」
「どもってんじゃねぇか……まぁ良い。
久し振りの客だ、ウチ来るか?茶ぁ位は出してやるよ」
「マスター、そんなの行くよりマグマ見に行こうぜ?」
「お菓子ある?」
「二人共、失礼ですよ!」
「ガッハッハ!おもしれぇチビ達だな!
菓子もあるし、ウチからはマグマ溜まりが見えるから寄って行きな!」
「わーい!」
「よっしゃぁ!」
「ちょっと二人共!」
ワイルド系親父にウチのチビーズが誘拐されてしまった………
「兄ちゃんも早く来い、置いてくぞ!」
「待って下さいよ~。」
もう拒否権は無いらしい。
「あれ?リィヤとサザンカは良いんですか?」
「あいつ等は客じゃねぇからな。
俺を邪竜って決め付けて、退治しに来たらしいぞ?あんなガキに俺がやられる訳ねぇのにな。
それに、あいつ等は俺んちとは逆にある洞穴でキャンプしてるしな。」
「さっき、今日はここまでって言ってましたけど、毎日戦ってるんですか?」
「俺が散歩してるとケンカ吹っ掛けてきやがんだ。
最初のうちは相手してやったんだが、流石に毎日は面倒でな?帰るように言ってるんだが、帰らねぇんだよ。
そーだ!これも何かの縁だ、兄ちゃんあいつ等の知り合いだろ?帰るように説得してくんねぇか?礼はするからよぉ?」
「言ってはみますが、期待しないで下さいね?」
「ダメならダメで他に方法考えるさ、最悪やっちまうって手もあるしな!」
なに笑顔でおっかねぇ事言ってんだオッサン。
「やっちまうって………あんまり面倒を起こすと、この山の主様に怒られますよ?」
「だいじょぶだって!それ俺だから!」
・・・・やっぱりこういう展開か!
何で毎回重要人物に会っちゃうの?たまには村人Aとか村人Bとかと他愛ない話をしたいよ!