旅立ち
今回ラストにステータスを入れました。
3ヶ月間の警備兵での訓練と、図書館での勉強の結果です。
今後も、節目等や気紛れでステータスを入れていこうと思います。
旅立ち迄の約一ヶ月は準備に費やした。
先ずは冒険者ギルドに登録。
入会金が銀貨5枚。年会費が金貨3枚。
年会費さえ払っていれば、依頼を受けなくても登録抹消何て事にはならないらしく、ある程度稼いだら年会費だけ払ってゆっくり過ごし、お金が無くなって来たらまた稼ぐ。そんな生活を送ってる人も居るらしい。
ただし、ギルドから仕事の依頼が来た場合はそれに従わなくてはならないので、お金が有れば良いと言う事もない。
お金持ちの方々が昔、年会費のみを払って税金逃れをしてたらしいが、そんな人達は『ギルドからの依頼は断れない』と言う規則により粛正されたとか。
こわいねー。
また、冒険者にはランクは無いが、依頼にランク付けがされていて、E~Sと難易度が設定されている。それを基準に自分の実力に見合った依頼を受けるのが常らしい。
依頼の種類は様々で、採取・討伐・護衛と言ったよくある物から、お使い・配達・家庭教師等、多種多様な依頼がリクエストボードに貼られていた。
「冒険者って言うより、何でも屋みたいだな。
おっ、1日話し相手になる何てのも有るのか。」
「シュウトさん、お待たせしました。」
一人リクエストボードの前で依頼書を眺めていると、後ろから声を掛けられた。キョウカさんだ。
普段はガルツさんに色々とお世話なっているんだが、『悪いが急な用事が出来た。』と警備兵の詰所で言われ、『なら一人で行ってきます』と言ったが却下され、悩んでいたらたまたま通りがかったキョウカさんが『私が案内しますよ』と言ってくれた。
ちょうど警備兵の仕事でギルドに用事が有ったとかで、俺のお目付け役をお願いした。
これならガルツさんも安心だろう。
この歳でお目付け役が必要なのは不本意だが、『目を離すと勝手に何処かに行くから仕様が無いだろ』と呆れ顔で言われた。反論出来なかったぜ。
「シュウトさん、もうすぐ旅立って行くんですね」
ギルドから詰所に戻る途中、キョウカさんが話し掛けてきた。
「どうしたの?急に」
「言っておきたい事があります。」
その真剣な眼差しにこちらも正面に立って、真っ直ぐ見つめ返す。
何だ?これは?告白何て甘い雰囲気じゃないぞ、判決を言い渡す裁判官の雰囲気だ。経験した事無いけど。
「冒険者になって旅をすると言う事は、全て自分の責任になると言うことです。道に迷ったり、ご飯が食べられなかったり、怪我をする事もあるでしょう。それら全てが自己責任になるんです。誰のせいにも出来ない、頼れる人も少ない。いえ、もしかしたら居ないかもしれない。
それでも冒険者になるんですか?」
どうやら俺の身を心配してくれているようだ。
大変ありがたいが、困ったな・・・・
俺の中ではこの世界を旅するのは決定事項何だが、何と言ったら良いのか、正直に自分の考えを伝えた方が良いかもな。
「キョウカさんが心配してくれるのはとても有難いです。でも、前の世界でもそうでしたが、柵とかが無い方が楽しく過ごせると思うんです。
全部自己責任?上等じゃないですか?名誉も不名誉も自分次第!歴史に名を残すのも、歴史に埋もれるのも自分の行動の結果ですよ?
俺は名前を残したい訳じゃ無いけど、人生100年好きに生きて好きに死にますよ。」
サムズアップに満面の笑顔!中身は微妙。
まぁ、人生面白可笑しく好きにしたいと言うのが伝われば良いんだけど。伝わったかな?
「・・・・・シュウトさんの気持ちは解りました。
それなら最後に一つ伝えておきます」
俺の勝手な考え方が伝わって何よりだ。
そして、『最後に一つ』って何だろう?
「これから旅に出ると色々な事があると思いますが、怪我だけは気を付けて下さい。
死ぬって言うのは・・・
凄く痛いですよ!」
「・・・・・・・・うん。」
溜めてから何を言うのか構えてしまったが、この子はあれだな。天然だな!
転生者だから、死を体験しているのは知っていたが、それが『凄く痛いです!』何て、表現力が来いっ!と言いたくなるな。
まぁホントに凄く痛いんだろうけど、流石に死ぬような危険を犯す積りは無いし、安全圏から楽しく過ごすのが理想的だしな。
リスクアセスメントって言ったか?
危険の【特定】【分析】【・・・】忘れた。
対処だっけ?まぁ良いや。危険な事を特定して、どう危険なのかを考えて、最適な対応策を取れば直ぐに死ぬ事は無いだろう。
「肝に命じておくよ」
笑顔で答え、その後は他愛もない世間話をしながら、詰所に戻った。
冒険者登録は済んだが、まだまだしなければいけない事が沢山有る。
旅で使う物の準備。
・ナイフ
サバイバルの基本!
これがあれば色々と便利だ。
・マント
防寒や寝る時の布団代わり。
・食料
コンビニ何て無いだろうからな!
日持ちする食べ物ってーと干し肉とかかな?
・武器と防具
ガルツさんに相談して中古でも良いから譲ってもらおう。
・オヤツは300円まで
この決まりを守ってる友人は居なかったな。
ってそんなのは持って行かないよ!?
ざっくり考えて見たけど、俺金持ってねーじゃん!どーしよ・・・
「あれ?シュウトさん暗い顔してどうしたんすか?」
「マモルか・・・」
声を掛けられ振り向くと、ガタイの良い青年が立っていた。
「今、旅で必要なものをリストアップしてたんだがな、俺金持って無かったんだよ。」
こんなこと言われても困るだろうが、誰かに話して気を楽にしたい。
そして、あわよくば同情をして貰いたい!
前の世界では【同情するなら金をくれ】と言うことわざがあった気がする。
「・・・・・・・・・マモルって良い奴だよな!」
「なんすか急に?」
「いや、お前は警備兵の中でも皆に好かれてるし!ステータスだってどんどん上がってるんだろ?これは次期隊長も夢じゃない訳だ!」
「いくら褒めたって金は貸さないっすよ?」
訝しげにこちらを見るマモルにすがり付く。
「良いじゃ~ん!貸してよ~!いつか返すから!倍にして返すから!当ては無いけど頑張るから!」
「子供か!?それか詐欺師じゃないっすか!?」
「う~~ダメか?」
「力になってあげたいっすけど、流石に返ってくる見込みが無いのは無理っす!
ってか、ドリフターを保護した人には補助金が出てると思うんすけど、普通はその中から多少の融通して貰えるんじゃないんすか?」
おぅ盲点だったぜ!世話に為りっぱなしで考えも付かなかった。困った時のガルエモンが居たじゃないか。
早速ガルツさんに相談だ!
「と言う訳で、準備しようにも先立つ物が無い訳でして、大変恐縮なのですが少しばかり融通をして頂けないでしょうか?」
出来る限り丁寧・低姿勢でガルツさんに相談した所で、恐る恐るガルツさんの顔を見ると、『忘れてた!』って感じの顔をしている。
をい!まさかとは思うが補助金ってのは俺の自立の為の準備金も含まれているんじゃないだろうな?
「そうだな、そろそろ旅の支度もしなくては行けないからな。国からの補助金にはシュウトに渡す分も含まれている。大事に使うんだぞ。」
ガルツさんって警備兵としては優秀なのに、私生活では抜けてるよな。
この話ししなかったら結構問題になってたんじゃないか?着服とかそんな感じで・・・
まぁ良いや、お金も手に入ったから引き続き準備をしていこう。
ガルツさんに貰ったお金は、金貨11枚と銀貨5枚、冒険者登録の代金が差し引かれているので中途半端な金額だった。
色々と買い物をして残りが金貨6枚。
食料関係はギリギリに買うとして、武器防具は警備兵から中古を安く譲って貰うか。
何軒か店を回ったが、武器防具は一式揃えるとおどげでない金額だ!頂いた準備金を全部使っても揃えるのは難しかった。
メイン武器は弓矢だから軽装で良いとは思うが、武器防具は中々のお値段だ。
手甲は革で作られた物が一番安かったが、金貨2枚。胸当ては革製のが金貨1枚鉄製で金貨5枚。弓矢は安くても金貨3枚と、簡単には手が出ない金額ばかりだった。
買い物以外にも、警備兵の皆にサバイバルに必要な知識と技術を教えて貰った。
危険な動植物に、就寝の際の注意事項。『鑑定スキルが無いんだからな』と動植物については、念入りに教えてくれた。
スマホの機能は秘密にしてるから仕方がない。
魔物や動物は焚き火をしたり、人間の出す音が有れば寄ってこないので、一人旅でもゆっくり眠る事も工夫すれば可能だ。
そんなこんなで一ヶ月が経ち。
いよいよ旅立ちの日を迎えた。
食料の購入後、警備兵の詰所にご挨拶。
マモルは次に会うまでに部隊長位になって驚かせてやると意気込んでいた。『調子に乗るな』と、先輩方に叩かれていたが、マモルなら何時かは隊長もなれると思う。
キョウカさんは『気お付けてねぇ』何て近所に出かける感じで言われた。
こないだスゲー心配してくれたのは何だったんだと、言いたくなる軽さだった。
一通り挨拶を交わし、ガルツさんの部屋に向かう。
木製の扉をノックしてもしもーし。
『入れ』と云われたので、『失礼します』と中に入る。
「行くのか・・・」
「はい。これから旅に出て世界を見て廻ってきます。」
「そうか・・・」
席を立ち備え付けのクローゼットから、武器防具を出してくれた。
「シュウトに頼まれていた装備品だ。
中古で良いと言っていたが、新品で用意しておいた。高い性能とは言えないが、餞別だ受け取ってくれ。」
「餞別って、良いんですか?」
「気にするな。この3ヶ月は楽しく過ごせたからな。ミリアナも弟が出来たみたいで楽しそうだったし、うちの奴等も楽しんでたみたいだからな。
皆が少しずつ金を出しあって揃えてくれたよ。」
テーブルに並べられた武器防具を確認して驚いた。
性能は低いと言っていたが、これは初心者が装備する物じゃない。
ベテランでは無いにしろ、ある程度実力のある、中堅の冒険者が装備する代物だ。
手甲は魔法狼の革製。
見た目は普通の狼だが、下位魔法を使ってくる厄介者。武器に魔法が乗せやすいと、手甲等に人気の素材。
胸当ては岩狼の革製で、此方も見た目は狼だが、物理防御が高く、革製なので軽くて動きやすい。胸当てとしてだけじゃなく、革鎧としても人気の素材。
弓矢と短剣は警備兵で使っている物と同じ、ショートボウとショートソード。
一般の大量生産の物だが、新品で用意してくれた。
「それと、これは私とミリアナからだ。」
「指輪ですか?」
受け取ったのは狼の細工が施されたシルバーリングだった。
「それは【亜人の指輪】と言って、一時的に亜人の力を自分に付与する事が出来る指輪だ。
私達夫婦が認めた者にのみ渡している。
と、格好良い事を普段は言っているが、気に入った奴に渡しているだけだ。
私達が作った物だから、【狼の指輪】と言って狼の獣人の力の一部を使う事が出来るのだが、初めの内は嗅覚・聴覚が良くなる位だろう。シュウトがレベルアップしていけば、爪が伸びて切り裂く攻撃や、脚力が上がってジャンプ力や走る速さが上がったり、色々と出来るようになる。」
「本っ当にっ有難う御座いますっ!」
腰を90度にして出来る限りのお礼を伝えた。
「そこまで畏まるな。私達はシュウトを好きになった、だから皆がシュウトの手助けをする。
それだけの事だ。」
それがどれだけ有難い事か。
多分言葉では伝えられないだろう。
見知らぬ土地で、知り合いも居なかった。
そんな俺を助けてくれた。
ガルツさん。
ミリアナさん。
マモル。
キョウカさん。
警備兵の皆。
駄目だ歳を取ると涙腺が緩くなる。
涙が零れない様に軽く上を見上げてから。
挨拶は『さようなら』?
『お世話に成りました』?
ちがうよな?ガルツさんの眼を確りと見ながら、
「んでまず、行ってきます!」
「あぁ行ってこい」
ガルツさんの『行ってこい』の言葉に背中を押され、スリーブスの街を出た。
名前:シュウト カザミ
種族:ドリフター
職業:冒険者
ステータス
atk:127
def:75
dex:213
int:173
hp:98
mp:131
スキル
感知・隠密・帰巣本能
旅立ち。
少し急いでしまったかも?
街での暮らしもう少し書いた方が良かったかな?