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中年一歩手前の異世界放浪記  作者: ぼちぼっち
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ダウンロードが完了しました。

 空気が悪い。

 何故かって?

 夢見た異世界召喚が、紙掛かった性能だからだ。

 ステータスが低くても、スキルが良かったり、逆にスキルが悪くても、ステータスが良かったりするのが普通なのに、ステータスもスキルも微妙なのは、初めてだと言われた。

 人の夢と書いて【儚い】と言ったのは誰だったかなぁ。



 しかし、いつまでも落ち込んでいても仕様がない。

 短所を嘆くより、長所に光を!

 敏捷性と知力は高いのだし、この数値は初期値だからな、今後の成長に期待しよう。

 それで、これからの事を考えなければいけない訳だが、ギルド的な所に登録すればいいのか?ギルド登録料とか有ったら、無一文だから払えないし、それとも先ずは日雇いの仕事で小銭を稼いだ方が良いのか?いやいや先ずは寝床の確保が優先だろう?それもお金が掛かるからやっぱり先ずは仕事探しか?

 頭を抱えて悩んでいると、『では行こうか』と部屋を出ようと促してくるガルツさん。


「後の事は宜しくお願い致します。ガルツ殿。

 シュウト殿、クロノ様の御加護がありますように願っております。」


 目を閉じながら軽く頭を下げるハーデルン。

 コチラも軽く頭を下げてその部屋を後にした。


 教会を後にして『こっちだ』と促され、石畳の道をガルツさんと並んで歩く。


「まだ手続き的なのが在るんですか?」


「いや、これからシュウトが寝泊まりするところに案内する」


 お!寝床の心配は無いみたいだ。しかし家賃とか有ったら払えないぞ?矢張先に仕事探しか?

 そして、案内されたのは居住区の一角にある煉瓦造りの一軒家だった。

 ドリフターには一軒家が支給されるのか!?

 興奮しながら家に入ろうとすると、ガルツさんが先に扉を開けた。

 おいおい、先ずは家主に入らせてやるべきだろう?


「ようこそ我が家へ」


 あ!家主は貴方でしたか?って、寝泊まりする所に案内するって、ガルツさんの家に居候なのか?そこまでして貰って良いのだろうか?


「遠慮せずに入って来たまえ。これから3ヶ月は同居人なのだから。」


 困惑する俺を家の中に招き入れてくれた。

 リビングに通され、腰掛けると。


「いらっしゃいませ」


 柔らかな声と共に、テーブルにお茶とお茶菓子が置かれ、向かいに座ったガルツさんの隣に、ピンと立った三角の耳と赤みがかった茶色い体毛が特徴的な綺麗な女性が座った


「紹介しよう。私の妻のミリアナだ。」


 自慢気なガルツさんに少しイラッ。紹介されたミリアナさんは頬を赤くして下を見ている。

 これは俺に惚れてしまった!訳では無いだろう・・・幸せそうだなチクショウ!

 改めて二人を見比べると、ガルツさんは9割位が獣の感じだが、ミリアナさんは5割か、それ以下。かなり人間に近い見た目だった。『実はコスプレなんですぅ』とか言われても、こだわりが凄いなー位かも。


「えーっと此処に居候させて貰えるのは嬉しいんですが、其所まで面倒をみて貰うのも申し訳ないと言うか・・・」


 俺の言葉にミリアナさんが驚いた表情をした後、ガルツさんに笑顔を向ける。

 一番怖い怒りの笑顔だ。


「貴方。まだお話していなかったんですか?」


「う、うむ。此処で落ち着きながら話そうと思ってな?」


 ガルツさんタジタジ。ってか説明って何?『オホン!』と咳払いをしながら、ガルツさんが色々教えてくれた。

 保護したドリフターは発見者が面倒を見る決まりになっていて、その期間が約3ヶ月。その間に、ドリフター達はこの世界の常識等を学び、旅立って行く。発見者にも国から補助金が出るので、其ほど苦にならないようになっている。

 その期間の内に仕事が決まれば早々に出ていく事も有るし、仕事が決まらなくても、3ヶ月で追い出される。

 3ヶ月の間希望すれば、興味の有る仕事の見学・体験も出来るし、警備兵から戦闘訓練を受けることも可能だ。

 簡単に言ってしまえば、3ヶ月間は面倒見るし、可能な補助はするが、その後は知らん!と言うことだ。

 俺は、折角異世界に来たからには、色々な場所に行ってみたい。

 その為には、常識と戦闘力は必須だな。

 後はお金だが、冒険者として討伐依頼なんかをこなしていけば大丈夫なのでは?

 自由気ままなその日暮らし!夢見た生活が今此処に!

 と言うわけで、ガルツさんと相談して、スケジュールを決定した。

 この世界も一週間は7日なので、この街の図書館に3日通い、警備兵と3日間訓練。1日休みでまた図書館。そうして3ヶ月を過ごす事にした。



 初日にガルツさんの案内で来た、教会の隣に図書館が建っていた。

 その地方の常識は歴史を調べれば身に付く。

 自分流の考え方だが、強ち間違いでも無い気がする。土着信仰等は歴史を見ると理解出来る事も多い。共感出来ない場合もあるが。

 その考え方の下、図書館で手当たり次第に歴史書や、神話・童話等を読み漁って行った。


「これは!」


 静かな図書館に響く俺の声、思わず挙げてしまった声に恥ずかしさを感じながら、目に付いた本を手に取った。


【サルでも出来る魔法入門】


「これ書いたの日本人だろ・・・」


 魔法にも興味が有ったので、読んでみた。

 とても解りやすく、日本人向けに書かれている。

 要約すると、

 ・自分の中の魔力を感じる

 ・イメージが大切

 ・技名は必須

 ・詠唱が有ると尚良し

 自分の中の魔力を感じるのが大変だった。

 魔力何て今まで無かった物を感じろ!とか言われてもさっぱりだ。

 しかし、此処で役に立ったのが【感知】のスキル。手子摺ったが、何とか出来た。

 イメージはアニメ等の知識で賄える。

 問題はその次だった

 技名は言霊を乗せるのに最適らしい。

 詠唱も言霊を効率よく使えるので、有れば有った方が良いと言うのも理解出来た。

 しかし、恥ずかしい。

 とても中二心を擽られるが、30後半のオッサンがノリノリで魔法詠唱何てしてみろ!

 恥ずかし過ぎるだろ?

 それでも、技名は必須だからな、誰も居ない場所で練習してから使おうと心に決めた。

 その後も、色々な本を読み知識を蓄えていった。

 勿論、警備兵の皆さんと戦闘訓練も欠かさない。色々な武器を使わせて貰って、自分には弓が一番合っていた。その他にも、短剣が比較的使いやすく遠近両用の性能。眼鏡じゃないぞ?


 そんなこんなで、2ヶ月程経った頃の休日。部屋に置きっぱなしにしていたスマホが『ピコン』となり、久し振りに耳にした電子音に驚きスマホを持ち上げる。


【ダウンロードが完了しました】


「何の!?」


【インストールを実行します】


「だから何の?!」


 此方の意向を無視して処理を続けるスマートフォン。

 お前も反抗期か。

 ・・・ん?お前も?そう言えばマイカーどうなった?

 忘れて ナイヨ?チョット意識の外に置いてたダケデスヨ?

 大切な愛車を気に掛けながら、思考する事数秒。


【インストールが完了しました】

【再起動します】


「早いな!」


 2ヶ月間ダウンロードしていたのに、インストールが一分程で終わるって、どんなシステムが入ったの?

 此方へ来た時に反応が無くなっていたので、壊れたのかと思い放置していたが、もしやコイツも召喚の際の最適化対象だったのか?

 早速弄ってみるが、見慣れた画面とは違っていた。


「大量のゲームは何処に?結構金掛けたんだけど・・・」


 ゲームもそうだが、電話のアイコンやSNSのアイコンすら無くなっている。

 表示されているアイコンは、

 ・MAP

 ・鑑定

 ・リスト

 先ずはMAPをタップ。

 解っていたけど、地図がでた。

 表示されたのはこの部屋の地図。

 椅子やベッドの位置まで正確に表示され、俺が動くと真ん中の三角が動く。これが現在位置。

 右上には1F・2Fと書いてある。

 試しに1Fをタップ。ガルツ家の1階の間取りが表示された。

 操作性は以前使っていた、大手の地図アプリと変わらず、フリック・ピンチイン・ピンチアウトで操作出来た。

 今居る部屋の外は見れないのかと思い、縮小していったら、街全体を表示出来た。


「これ、凄いんじゃね?」


 ダンジョンでのマッピング不用!行きたい場所への最短距離検索!大昔は地図が軍事機密扱いだったが、この世界はどうなんだ?もし軍事機密だったらこの機能は人には言えないな。


「後でガルツさんに地図の扱いについて聞いてみよう。」


 次に試すのは鑑定。

 ドリフターの9割が持つスキル!


「もう残念レアキャラなんて言わせないぜ!」


 そして、気合いを入れてタァァップ!

 カメラが起動した。


「ふぇ? あ、写真撮るのか?」


 試しに目の前にあった椅子を撮ってみた。

 ・名前:木の椅子

 うん。知ってる。

 ・種族:家具

 家具って種族だったのか?

 ・職業:椅子

 夫婦喧嘩の際は投擲武器にジョブチェンジ!

 ・属性:木

 炎とか水じゃなくて安心だ!

 ・atk:5

 ・def:5

 ・dex:0

 ・int:0

 ・hp:10

 ・mp:0

 コイツ俺より弱いぜ!

 ・取得(テイム)不可

 取得(テイム)飼い慣らす(テイム)じゃなかったっけ?解らない事は後回し!次いってみよう!って事でリストをタップ。

 ・表示できる物が有りません。

 えぇ~終わり?

 リスト、一覧・目録だよね?何のリストか位の説明が欲しい。

 うーん。解らないのは、【テイム】と【リスト】か。

 【取得(テイム)】取得って事は俺が所有者なら出来るのでは?

 自分の持ち物を鑑定して【取得(テイム)】出来るか試してみた。

 ・名前:シルバープレート

 ・種族:カード

 ・職業:身分証明書

 ・属性:魔

 ・atk:0

 ・def:500

 ・dex:0

 ・int:0

 ・hp:500

 ・mp:0

 ・取得(テイム)可能:Y/N

 おっ!?テイム出来ますねぇ。無くすと再発行にお金が掛かるが、今はテイムを試したい!

 迷わず【Y】をタップ!

 あれ?画面から消えた・・・ディスプレイからシルバープレートを置いた机に目を移すも、其所には何も無かった。


「・・・・・やっちまったか?

 あっ!もしかして【リスト】?」


 そして、リストをタップ。

 ・アイテム

 これタップ?

 ・シルバープレート

 有りました!で、どうする?取り敢えずポチ。

 解放(リリース)しますか。Y/N

 Yをポチ。

 背面のライトから一筋の光が机の上に照射され、光が収まると其所にはシルバープレートが置いてあった。

 これは!アイテムBOXか!?

 鑑定からのアイテム収納が楽しくて、自分の持ち物を一頻り収納したり、出したり遊んでいたら、いつの間にか夜になっていた。





「そう言えば、この世界は地図って在るんですか?」


 夕食時ガルツさんに地図の事を聞いてみた。


「地図? あぁ勿論在るさ。街や村、森に湖等の場所が書いてある物が街の雑貨屋で売っている。

 旅に出るなら持っていた方が良いかもな。」


「街毎や森の中の詳細な地図って売ってます?」


「流石に街並みや森の中が書いてある地図は無いな。そんなの持ってるのは【草】の奴等位じゃないか?」


「くさって?」


「【草】って言うのは皆が知ってる秘密組織だ。」


「皆が知ってる秘密組織・・・」


「まぁそれは置いといて、解りやすく言えば諜報機関だ。戦争が起きた場合【草】の情報が戦況を左右する。

 何処を攻めれば?何処に前線基地を設営すれば有効か?そういう情報を集めて国や軍が情報を管理する。

 だから、詳細な地図って言うのは個人で作るしかないな。」


 うーん。やっぱり【MAP】は秘密にしとくか。


「シュウト君。後一ヶ月で旅に出るんですね・・・」


 おや?俺達の話を黙って聞いていたミリアナさんが、寂しげに俯いている。


「そう言うな。シュウトだってこの世界を見て歩きたいと言ってるんだ。それに、二度と会えない訳では無いだろう。」


「弟が出来たみたいで楽しかったからつい・・・」


「弟ですか?!」


「えぇ、私達亜人は寿命が人間より長いですから、こう見えて結構年上なんですよ。」


 得意気に胸を張るミリアナさん。

 その態度はむしろ幼い感じがするんですが・・・其所には触れないでおこう。


「確かに警備兵の方でも皆に好かれていたな。マモやキョウカとは特に中が良かった様に見えたが。アイツらもシュウトが旅立ったら寂しく思うんじゃないか?

 この際警備兵に入ったらどうだ?」


「お気持ちは有難いですが、お断りします。」


 折角異世界に来たのに、会社勤め何てしたくない。

 部下のミスのフォローに、上司の我儘への対処。疲れるからヤダ!

 良いことも、悪いことも、全て自分の責任の方が気が楽だ。

 会話に出た二人、マモ、マモルは元自衛官の好青年。

 海外遠征中に森の中で自分の隊とはぐれてしまい、この世界に来たと言っていた。

 元自衛官と言うだけに、ガタイが良く身長も190cm程で目の前に立っているだけで、少し怖い印象だが、性格は陽気で喋りやすい良い子だ。

 キョウカさんは元大手企業の事務をしていたそうだが、帰宅途中に通り魔に襲われてこの世界に転生。

 ショートヘアで170cm位のスレンダー美人さん。見た目は仕事の出来るキャリアウーマンだが、性格は天然。

 此方へ転生した時はその天然性格が幸いして自分の死を素直に受け入れ、そのまま警備兵の事務等の内勤職に就いている。

 二人とも気が合うから好きだが、世界を見て歩きたいと言う気持ちの方が強いんだ。いつかこの街に帰って来たときに、酒でも飲みながら土産話でもしてあげよう。


いつも読んでいただき有難う御座います。

出来上がった物から、随時予約投稿にて月曜22時に更新していこうと思います。

もし、予約投稿が出来ず更新されない場合でも、更新ペースを戻す様に、頑張りますので宜しくお願い致します。

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