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中年一歩手前の異世界放浪記  作者: ぼちぼっち
202/215

俺って救世主だったの?

 2日目3日目と進展は無く、早くも1日目のような緊張感が家出をしてしまい、俺もフウカ達と一緒にスカラム観光を楽しんでいた。

 たまもさんの言う通り、散歩をするだけでも楽しめる。


「見付からんのう」


「そうですねぇ」


「何探してんの?」


「フウカさん………この町に来た目的をもう忘れたんですか?」


「そうだぞ、可愛い空飛ぶイルカを見に来たんだからな?」


「おい、お主まで忘れるでない」


「冗談ですよ。しかし見付からんですねえ」


「アーティファクトって希少なアイテムですよね?

 普通の武具屋さんに売っている物なのですか?」


「んな訳なかろう、正直……何故このような探し方をしとるのか理解に苦しむが、こヤツにも何か考えがあるんじゃろう。な?」


「まぁ、武具の事は武具屋に聞くのが一番だと思ったんですが、なかなか上手くいかないですね」


 武具屋から伝説の武器防具とか、レアなアイテムの情報が貰えるのはゲームの中だけか………一応、町の老人や子供にも話しを聞いているが、そちらも収穫無し。

 お伽噺や童謡からの謎解きって線もあるかと思ったんだけどな。

 そうそう!もう1つゲームとは違う点。

 住民は立ち止まっている訳ではないので、色々な人に話しを聞くのが凄く大変だ!


「あと調べて無いのは、あのランドマークの剣位かな?

 でも、あそこって近くまで行けないんだよなぁ」


 町中では情報が集まらなさそうなので、冒険者ギルドに相談する事に。

 一応、ミストとフレイヤの情報が有れば、俺の方に伝わるようにしてもらっている筈だから、それ関係で相談があると言えば無下にはされないだろう。

 あの剣は個人的にも興味があるから、上手い事言って近くで調べられるようにしてもらえたら最高なんだけどな。


「失礼します」


 前回来た時よりもギルド内が忙しないけれど、サブマスターが時間を作って会ってくれた。


「済まないね、見ての通り忙しくてあまり時間取れないが相談があるとか?」


「えぇまぁ、所で今日もギルドマスターは不在なんですね?」


「連日とある調査に行っているんだよ」


 一度は挨拶をしたかったけれど、忙しいのなら仕方が無い。

 しかし、サブマスターも忙しそうだな。


「先日お伺いした時よりもお忙しいそうですけど何かあったんですか?」


 何か手伝える事でもあれば手伝うのも吝かではない。


「ここ2~3日で、通り魔の被害が多発していてね、犯行は夜、被害者の死因は共通して窒息死。

 現場ではフードマントを目深に被った人物が目撃されているが、一向に捕まえる事が出来ないでいる。

 ちょうど君達が来た時期と同じだね………って!まさか!?」


「違います」


「そうだよね、だったら!」


「無理です………」


「どういうこと?」


 俺とサブマスターの会話の意味が分からなかったのか、フウカが頭の上にクエスチョンマークを何個も出しながら聞いてくる。

 会話の流れから察するのって難しいもんね!俺だって若い頃は営業先でよくやらかしていたよ。


「通り魔の犯行が、俺達が町に来た時期と重なっているから犯人って疑われたけど『違います』って否定したのと、犯人を見付けるのを手伝ってって言われたんだけど、そういう調査は苦手だから『無理です………』って断ったの」


「あんた達は言葉が話せない魔物じゃないんだからちゃんとしゃべりなよ………」


 仰る通りです………


「そろそろ本題を聞かせてくれるかな?

 相談とは何の事かな?」


「お忙しいのにすみません。

 実はとあるアイテム、または人物を探していまして、助力頂きたかったのですが……」


 チラッと顔色を伺う。

 忙しいって言っていたし、通り魔の被害は目の前の危険だからな~。

 本来そういう事件って警察的な人達が対処するんじゃないのかな?でも冒険者ギルドって何でもやるからなぁ……取り敢えずギルドに依頼をしておけ!って感じなのかな?


「探し人、探し物か………詳しく教えてくれるかな?君が探すと言う事はミストとフレイヤと言うドリフターに関係があるんだろ?」


「え?」


「ギルドの情報網は伊達じゃないんだよ?

 通り魔の犯行は捨て置けない事件だけど、君達が追っている相手も放置は出来ない。

 どんな依頼も、危険度に上下はあるけれど、優先度は同じだからね」


 サブマスターは依頼を平等に見ているタイプか。

 世の中そんな綺麗事でやって行ける程甘くは無いが、嫌いじゃない。


「素敵な考え方ですね。ただ、私のは依頼ではなく私事ですので………」


「冒険者ギルドに来る依頼は、その殆んどが私事だよ?

 相談を受けて、それをリクエストボードに掲示するかは私達が決める。

 相談内容によっては、リクエストボードに貼らずに、私が個人的に対応する場合もある。勿論、依頼料はとらずにね。

 と言うか、君の場合は少し違うだろ?

 ピーナッツ君から各ギルドに連絡が来たとき、君の行動が世界を救うと私は感じたんだ。

 君のは私事ではなく、使命だよ」


「えっ!?」


 なんだかサブマスターの中で、凄い大事になっていないか?

 俺ってば世界の救世主?

 少々誤解があるものの、ラグナロクへの備えは必要だ。

 その辺も踏まえて説明をしながら誤解を解きつつ、ゴンドゥルとエグザクターの杖の情報を聞く。

 ゴンドゥルについての情報は無かったが、エグザクターの杖については、もしかしたら手掛かりになるかも知れない事を教えて貰った。

 俺達がやって来る数日前に、あのバカデカイ剣に入り口が

 出来たそうだ。

 エグザクターの杖の情報を手に入れた時期と、概ね合う。

 ギルドマスターの不在の理由も、その剣に出来た入り口の調査らしい。

 特別に許可を貰い、明日あの剣の中に入る事にした。


「よろしかったのですか?」


「まぁね、スイレンの言いたい事は分かるよ?」


「でしたら!ゴンドゥルよりも先に、エグザクターの杖を手にしなければならないのに、明日からと時間に余裕を持っていては危険ではないでしょうか」


「その先に何があるとも知れん場所に行くんじゃ、一晩でも急いで入る方じゃと思うぞ?」


「そうだね。本来なら、明日を準備や情報を集める事にあてて、明後日の朝から入る方を選びたいけど、準備はファイドさんにお願いして、情報は都度精査する感じになるかな」


 こういう時に、スマホの中と外で時間の流れが違うってのが役に立つな。

 スコラーとリサーチャーにも声を掛けて、あの剣について調べて貰うのもアリだな。


「あっ……かっ……はっ…………」


 ん?何の声だ?


「また…………ハズレ………」


 冒険者ギルドから宿への帰り道、路地から声が聞こえ、そちらを覗くと、倒れている男と、その男を見詰めるフードを被った人物が見えた。

 もしかしなくても、あれって噂の通り魔?


「急に止まってどうしたの?」


「ッ!!」


 フウカの声に気付いて、こっちを素早く振り替えるフードマントの人物。


「ヤバッ!」


 気付かれた!


「お下がり下さい!」


 素早く俺と相手の間に入るスイレンさん。

 イケメンすぎる!


「貴女が通り魔だったのですね」


「ん?……誰?」


「知り合いか?スイレン」


「先日、私の不注意でぶつかってしまった方です」


「ほう、スラムの輩じゃな」


 先日?スラムの?・・・っ!スイレンが指輪にうっとりしててぶつかっちゃった人か!


「大人しく捕まるのであれば、危害は加えません」


「君達なら………知ってるかな……………疾風杖……」


 フードの隙間から覗く口がニヤリと笑ったのが見えたかと思うと、目の前から消えて、後ろに立っていた。


「コイツ!速い!」


「そっちは……遅い………インクイジターロッド」


「あっ…………あぁ……!」

「くっ…………何じゃコレは…………!」

「いや……いや……………」

「何………だ…?」


 マントから出した手に握られている杖を降ると、俺達全員が苦しみ出す。


「何だよコレ?何だよコレ!」


 頭の中に嫌な光景が浮かぶ。

 仲間達が無惨な姿で息絶えるビジョン…………


「止めろ!止めろ!」


 フウカ、スイレン、たまもさんも同じような映像が流れているのか?


「すぐに壊れない………君達凄いね……?」


「何をしたんじゃ!この映像をやめんか!」


「インクイジターロッド………相手の…最も嫌な光景を想像させて…………情報を集める杖……………」


 精神攻撃からの情報収集アイテムか…………くっ…………確かに仲間の死は俺に一番効く攻撃だ!


「ああ………あぁぁぁぁ……………」

「いや……やめて……………来ないで…………!」


 ヤバイ!このままだとフウカとスイレン壊れる!


「二人を戻すんじゃ!」


「だったら………っ!」


「ワシなら耐えられる!伊達に長く生きとらん!」


「ッチ!」


 最悪の映像に耐えながらスマホ操作してフウカとスイレンを町に送る。

 敵の攻撃範囲外に出れば多少楽になるという希望を持って!

 それに町には仲間が沢山居るから二人を支える事も出来る!

 あとは俺とたまもさんでコイツをブッ飛ばす!

 って意気込んでいるけれど目眩がする!吐きたい!心臓が痛い!


「……がっ……………」


「(このままではこヤツも危険か!?)闇烏!」


「ッ!?……反撃…………?」


「二人……相手だ…………クソヤローがッ!」


 手が震える…………だけどコイツはただじゃおかねぇっ!


「アクセルアローッ!!」


「ガードロッド………」


 別な杖を降る相手………クソッ!当たらねえ!


「ありがと………………欲しい情報は手に入った……お礼に………特別このままにしてあげる…………運が良ければ……………助かるかもね………」


「待てっ!」


 運が良ければ助かる?フウカとスイレンを遠ざけても意味が無かったのか……………?


「おいっ!気を確り持つんじゃ!町にさえ戻ればフウカ達は大丈夫じゃ!」


 大丈夫?何がだよ?あの女が居なくなってもこの苦しみから抜け出せずにいるんだぞ?


「負けるでない!」


 負けるな?もう負けてんだよ………


「この手の攻撃は後ろ向きになるほど効果が増すんじゃ!」


 たまもさんは良いよなぁ……転生っていうコンティニューがあるんだもんな……………


「くっ………ワシでも回復に時間が……………掛かるか………」


 フウカも……スイレンも……この映像のように死んでいくのか…………離れているライカだって…………今頃……………


「戻ってこいっ…………!」


 なんかつかれたな…………ねむくもなってきた…………


「……………」


 たまもさんがなにかいってるけど……………きこえないや………


「………………………………」


 ………………………………………………………


「堅忍不抜!」

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