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中年一歩手前の異世界放浪記  作者: ぼちぼっち
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トレジャーハント

幽霊って苦手・・・・・・

「来てるっ来てるっ来てるっ!」


「運転に集中下さい!ウォーターカッター!」


 車内に響くのは俺の声だけで、三人共飛んでくるゴースト目掛けてポンポン魔法を放ってる。

 フウカはボンネットに、スイレンとライカは二列目シートの窓から、器用に迎撃している。


「オラァ!5匹目!ファイヤーボール!」


「へへーん!あたし何て7匹倒したもんねぇ」


「二人共、そんな事言ってないで倒して下さい!因みに私は10匹です。」


 三人に取っては、ゴーストが飛んで来てもそんなに苦労が無いようで、倒した数を競い合ってる。


「お前ら!競い合うのは良いけど、無茶はするなよ!」


「だいっ!じょーぶっ!9匹!」


「フウカッ!今のは俺が倒した奴だろ!」


「あたしの方が先に当てたもんねー!」


「二人共1匹ずつ増やして良いですから、次の相手に集中して下さい!」


 フウカとライカの言い合いに、スイレンが大岡裁きをして、それぞれが次の相手をする。

 スイレン余裕だな。多分一番倒してるんじゃないか?


「皆のお陰で俺も余裕が出てきたよ。

 最初はゴースト、と言うか幽霊が出てきた時は驚いたけど、結構魔法が効くんだな?」


「マスターが言ってた通り、ここはレベルが低い奴等しか居ないからな、俺達レベルの魔法でも倒せるんだよ。」


 うちの子達で倒せるなら、ウィザードでも余裕だろう。

 この先にはアンデット系と悪魔系のモンスターが出てくるが、そいつらは物理攻撃が効くし、オレやゴブリン達も参戦するから、余裕!この遺跡の魔物を殲滅しちゃうかもな!


「ライカ?話してる何て余裕だね?あたしは13匹!スイレンよりも倒してるんじゃない?」


「甘いですわフウカさん!私は15匹です。」


「マスターのせいで離されちまったじゃねーかっ!」


「あっ、ゴメン。」


 ・・・・・俺が悪いのか?勝手に競ってるのに、俺を巻き込むな。

 余計な口出しをすると、また理不尽な言い掛かりを付けられそうなので、黙って運転に集中する事にした。

 車を走らせ数十分。

 遺跡の入口迄やって来た俺達は、飛んでくるゴースト達を一掃して、車を降りた。

 一掃したのは三人だけどね。


「それで?やっぱスイレンが一番倒したのか?」


「それが、私は20匹」


「あたしは21匹!あたしの勝ちだよ!」


「接戦だったんだなぁ。あれ?ライカは?」


「・・・15匹」


 地面に体育座りでいじけてるライカに、掛ける言葉が見付からない・・・


「良かったなフウカ!勝つと何かあるのか?」


「あんたの頭の上のポジション!見事守ってやったわ!」


 座席を決めてたらしい・・・・・


「俺椅子じゃないけどな!」


 俺に乗るのは止めてくれないらしい。

 むしろ、座る場所を競い会う三人に肩を落とす。


「それで?ここが入口なの?」


「多分な…………」


 左右に石柱が建っていて、真ん中の横幅3メートル位の階段は20段位。

 その先には、昔写真で見た古代ギリシャ神殿の縮小版の様な石造りの建物があった。


「なぁマスター。気付いてるか?」


「何が?」


 おや?ライカ復活おめでとう!


「ここ、周りは明るいんだよ。」


「言われてみれば・・・」


 神殿に着いた時に車は回収しているのに、森の入口見たいに真っ暗じゃない。

 結構明るいぞ?


「何でだ?」


「恐らくですが、魔法が掛けられていたのは入口付近だけで、この場所には魔法が掛けられていないのでは無いですか?」


「入れないなら、中には魔法は必要無いって事か。」


 結構ずさんな管理をしているな。

 俺達のように入ってしまった相手の対処が出来て居ない。

 いや、それは魔物が対処しているのか?弱いのに魔物も大変だな?俺は就職したくない。

 階段を上がると扉等は無く、先が薄暗い四角い入口があった。

 暗い!怖い!入りたくない!

 そもそもさぁ、遺跡観光しようとしただけなのに、何でダンジョン攻略しようとしてんの?必要無いよね?クチコミも微妙だし。


「ヨシ!遺跡観光終了!帰るぞお前ら。」


「はっ?何言ってんの?」


「だってさぁ、暗いし怖いし入りたくないし?

 ここに来たのだって、観光目的だからもういいかなって・・・」


「えっ?ここに財宝があるって言ってなかった?」


「・・・・・・・」


 そうだった!忘れてた!財宝ザックザクって、ジョーンズさんがクチコミに書いてたんだ!

 観光とかって何格好付けてんの?世の中金ですよ?


「マスター……忘れてただろ?」


「そんな事、ナイデス!

 さぁ!皆さん行きますよ!」


 薄暗い内部に足を踏み入れ、周囲を見渡すと、スリーブスの教会に似た空間が広がっている。

 強いて違いを挙げるとすると・・・・


「全部石で出来てるんだな。」


 扉は木造だけど、椅子とかも石で出来てる。

 お尻痛くなるよ?


「おい、ライカ!勝手に動き回るな!」


 ライカが真ん中迄翔んでいくと、魔力の高まりを感じた。


「それっ!」


 ライカが掛け声を上げると、壁際の柱に備え付けられていた灯明皿に、一斉に火が着いて明るくなる。


「すげっ、これなら怖くない!」


 手招きしてライカを呼んで、ナデナデする。


「えへへ」


 ライカを撫でていると、フウカとスイレンが羨ましそうに見てくるが、気にしなーい!

 撫で終わったら、探索メンバーを呼び出して、出陣!


「えー、それでは只今より遺跡探索を始めます。

 以前この遺跡にアタックした人の話では、中々の利益が有ったらしい。

 しかし、魔物が多くて遺跡全部の探索は断念。

 そこで!我々が目指すのは最深部です!

 魔物については、ゴブリンの皆さんに対応をお願いします。(ツンツン)ん?」


 足元に目を向けると、半透明の紫色のスライムが俺の足をつついてる。


「勿論君も頼りにしてるよ。」


 毒を持っていそうな見た目だが、毒は無い。

 エレメントスライムというのは、個体毎に得意不得意は有るそうだが、色々な属性の魔法を使うらしい。

 その他にも、体色によって使用する属性が違ってくる、ファイアアスライムやウィンドスライム等の一属性のみ使うスライム達もいる。

 この世界のスライムは種類も多く、結構強いらしい。

 スライムを撫でてやると、プルプル振るえてる。

 頼りにされて嬉しい様だ。

 スライムは発声器官が無いので喋れないが、動きで何と無く言いたい事が解るから面白い。

 ボディランゲージのステータスは完ストしてるようだ。


「あたし達は?」


「フウカ達は俺を守ってくれ!幽霊とか、正直怖い!」


 おっと?皆の視線が生暖かいぞ?


「そんな目で見るな!俺も言ってて恥ずかしいんだから!恥を忍んでお願いします!」


「「「・・・・・・・」」」


 無言は止めて!


「・・・さぁ行こう!すぐ行こう!ガンガン行こう!」


 このままじゃ辛いので、探索開始。

 一階にはめぼしい物は無く、二階も特に無し。

 多分、上物はジョーンズさんが探索済みなんだろう。

 魔物の姿も少ないから、探索しやすかったし。

 探索中に見付けた、廊下の奥の扉から地下に入る事にした。


「これから地下探索をするけど、多分上物よりも魔物も沢山出てくるだろうから、気を引き締めて行こう!」



 #地下一階#



「ウィズ!」


「お任せください!ファイアショット!」


 大量に出てきたゴーストを、ウィザードの範囲魔法で撃退してもらう。


「ふぅ………またゴーストだよ。

 有り難う御座います、ウィザードさん。」


「勿体無い御言葉です。」


 ゾンビやスケルトンや悪魔はどこに行った?お出掛け中か?別に会いたい訳じゃ無いけど。

 でも、ずっとウィザードとエレメントが戦ってるから、大変そうなんだよな。

 ライダーとナイトは出番無しだし。


「主様。こちらに扉が御座います。」


「お!ありがとです。」


 扉を空けるのは、ナイトさんのお仕事。

 俺が開けようとしたら、『我等が開けますので、御下がり下さい。』って言われた。

 万が一の為に頑丈な自分達が開けるそうだ。

 完全に守られる側なんだけど、良いのかな?


「ここにも何もねぇな」


 ライカが一足先に部屋の中に入り、お宝探しをする。


「ねぇ、飽きた!」


「奇遇だな!俺もだよ!」


 フウカに同意して、少し考える。

 この遺跡は、地下何階まで在るんだ?ゴールが見えないのって、無駄に疲れるんだけど。


「ご主人様。地図では何階までというのは解らないんでしょうか?」


 ・・・そう言えばそんな機能があったな。

 ダメだ!今日の俺はポンコツな日だ!


「そうだな、ゴールの確認をしておくか。」


 忘れてた、何て事はバレていないだろう。

 凄く自然な対応だったからね。

 そして、自然な動作でMAPを確認する。


「地下三階迄在るみたいだな。

 ただ、三階は大広間になってるから、二階で本格探索は最後だな。」


 このMAPは隠し部屋も暴くので、遺跡の間取りは丸裸だ!隠し部屋は無かったけどね。


「この階も、もう終わりだし。

 二階でサクッとお宝見付けて帰ろう!」



 #地下二階#



 地下二階で遺跡が本気を出してきた!

 スッゴク襲われてる!

 挟撃って奴だ!


火の散弾(ファイアショット)!」

乱切り(らんぎり)!」

牙と剣(ファングソード)!」

「・・・・!(氷の散弾)(アイスショット)


 ウィザードの魔法でゾンビやスケルトンの数を減らし、ナイトとライダーで撃ち洩らしを一掃して、エレメントがゴーストの相手をする。

 勿論俺達も参戦中。

 テイムした後にチビッ子達が攻撃をして行く、何時もの戦闘スタイル。

 アンデット系を村に呼んでも良いのかな?

 探索が終わったら、ロードさんに相談してみよう!

 ・・・・・・今、フラグ立った?嫌な予感がしたんだけど。


「マスター!何か見付けたぜ!」


「あいよー」


 ライカに呼ばれて向かった先に有ったのは、金の皿。

 二階には、結構良い物が有った。

 金や銀で出来たお皿や盃。

 祭事で使う神具だと思う。


「二階は手付かず見たいだな。

 売ったら高そうな物が、一杯手に入った!

 二階の探索ももうすぐ終わるし、三階を覗いたら帰るか。」


 その後も五部屋位有って、装飾された杖や剣等の武器に、ボロくなった法衣。これは流石に売れないだろう。金や銀で出来た食器類に、燭台等の小物類。

 途中で入った図書室には、沢山の本が!『ひゃっはー!知識をヨコセー!』って飛び付いたら、風化しててボロボロに崩れて行った。


「この階の探索は終了かな。」


「はーい。後は三階で終了?」


「そうだな、隠し部屋とかも無いみたいだし、この下は大広間だからもう終わった様なもんだろ!」



 #地下三階#



 カツーンカツーン


「足音が響くね」


 フウカが俺達の足音を聞いて囁く。


「そうですね…………主様。

 これでは先に魔物がいた場合、我々が降りて来るのはばれているでしょう。ご注意下さい。」


 ナイトさんの提案で俺を真ん中にして、守られる形になって降りていく。

 下まで着くと、奥に祭壇・手前の地面に魔方陣が描かれた広間に出る。


「なーんも無いね?」


「ただの広い空間だなぁ。」


「・・・・・・」


 フウカとライカが肩を落としてる中、スイレンだけは祭壇を睨んでる。


「どうしたスイレン?」


「・・・・ご主人様、嫌な予感がします。

 早く出ましょう!」


 スイレンの言葉に反応した、魔物チームが俺を取囲み、武器を構える。

 その時、奥の祭壇から男の声が聞こえた。


「そんなに急いで帰ること無いじゃねぇか?

 久し振りの客人だ、ゆっくりしていけよ?」


「誰だ?」


 俺の問い掛けに、祭壇の方から影が歩いてくる。

 2メートル位の身長に、山羊の頭。

 上半身は裸と、ハレンチな格好をしてるが、腕と腰から下は黒い毛並みに覆われ、四足動物の様な足の形に蹄・・・・・ガチ悪魔キターーー!これダメだろ!悪魔系の魔物ってインプじゃなかった!本気の悪魔だった!


「人ん家に土足で上がって来て、『誰だ?』ってお前バカか?先ずはてめえが名乗れよ!」


「・・・」


「ダンマリかよ?まぁこの見た目ならしょうがねぇか。

 悪魔に簡単に名乗る奴なんていねぇしな。」


 ビックリして言葉が出なかっただけですけど、悪魔に名前を教えるのがタブーなのは、どの世界でも同じ何だな。


「まぁいっか、取り敢えずお前ら、俺の【(エサ)】になれ。

 ?・・・・・・ほら、悦べよ!」


 こいつ何一人で話進めてるんだ?エサになって喜ぶ奴なんて居ねーよ!


「【不死者召喚(サモンアンデット)】」


 だから!勝手に話を進めるな!戦うなんて言ってない!エサにもなりたくない!


「くそっ!みんな迎撃してくれ!

 アイツとは、対話は出来ない!」


「「「「お任せください!(・・・・・・!)」」」」


「あたし達は?!」


「ヤッチマエ!」


 俺が許可を出すと、フウカ達も参戦。

 呼び出されたゾンビ・スケルトン・ゴースト達に、テイムは効か無かった。

 あの山羊頭が召喚したからだろう、テイム不可って出た。

 それでも、ゴブリンナイトが敵を切りまくり、ゴブリンライダーが暴れまわり、ゴブリンウィザードとエレメントスライムが的確に魔法を当てていく。

 俺も弓矢で後方から、ゾンビやスケルトンの頭に当てていく。

 あの山羊頭の召喚は永続魔法だったようで、倒しても倒してもどんどん湧いてくるが、問題無いだろう?弱いし。

 今、一番問題なのは、奥の話を聞かない悪魔だからな。


「っち!クソがっ!」


 俺達が結構余裕で召喚された魔物達を倒して居ると、悪魔がキレて魔法を撃ってきた。


「ファイヤーボール!」


「危ない!」


 感知はしていたが、反応が出来ずに目の前が真っ赤になった。


「あっ……ヤバイ……」


 と思ったら、フウカが飛んできて俺の変わりに魔法の直撃を喰らい、そのまま地面に落ちていった。


「うっ…………くっ…………」


「は?……何…これ………?」

フウカーーー!

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