『白の世界』
作品タイトルに『!』をつけるか否か、真面目に一時間使いました。
よろしくお願いします。
白の世界にあるのは白い城。
そこは熱くも無ければ寒くも無い。匂いもしないし音もしない。
立っているのかさえもあやふやになって、自分が誰でどこに向かっているのかも忘れそうになる。
そんな絶望に似た憂苦が襲い来る。
どうにか城に辿り着き、微かな希望を胸に城内へ。
しかし、そこもまた絶望。外から見た限りの城を遥かに凌ぐ高さまで、終わりの見えない螺旋階段。
城は単なる、城の形をした入り口にすぎなっかた。
それでも、進まなければならない。
あらゆる感覚が麻痺して何度足を踏み外そうとも登り続ける。
何もない。何もない。何もない。
ここには何もない。何もないのなら、ここに空気はあるのか。
途端に息が苦しくなる。
本当はあるはずなのに、脳がここでは息が出来ないと錯覚してしまうのだ。
絶望が存在を色濃く主張してくるが、それでも登り続ける。
登る、絶望、登る、絶望、登る、絶望、絶望絶望、登る、絶望絶望絶望……
涙で顔をぐちゃぐちゃにして前が見えなくて、過呼吸で息が苦しくても登り続けて、ようやく終わりに辿り着く。
辿り着いた先には見上げるほどの大きな扉。
最後の力を振り絞って、倒れこむように扉を開くと、そこにいる。
白い王座に腰かけて白い本を手に持った、白い長髪の魔人。
「この世の理へようこそ。あぁ、よくここまで辿り着いたね。歓迎するよ」
口だけで笑う。ぺらぺらと、本のページを捲りながら。
「はじめまして。僕はここの、為政者みたいなものさ」
体が動かない。口も開かない。立っているだけで精一杯の状態。
「辛いだろう? 喋らなくていいよ。いや、喋る事なんて出来ないかな。でも安心しなよ。君の言いたいことは分かっているつもりだよ」
言いたい事……忘れかけていた記憶を掘り返す。そうだ。その為にここまで来たんだった。
「これはね。『理の書』って言うんだ。って言っても、僕が勝手にそう呼んでいるだけなんだけどね」
魔人は持っていた白い本、『理の書』を人差し指で廻す。
「『理の書』には世界の全てが記されているんだぁ。あーでも、預言書とか福音とは違うよ。そこは勘違いしないでね」
「…………」
「無言の圧力ってやつかい? そう急かさなくても、ここまでたどり着いた君の頼みだ。でも、本当にいいのかい? 君の望みが、必ずしも望ましい結果に繋がるとは限らないんだよ?」
そんなこと、覚悟はとっくにできている。
「そうかい。それじゃあやろうか。君の望みのままに。あるべき真実を書き換えよう」
宙に浮かせた『理の書』に手を翳すと、魔人はそっと息を吹きかけた。
「恩恵、理の証明。また、会える事を楽しみにしているよ」
瞬間、白の世界は眩い光に包まれる――
お読み頂きまして本当にありがとうございます。
次回からは0時に投稿します。今日は間隔が短いですか0時にもう一度投稿します。