表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
脱走兵と幼女  作者: 後川
7/11

第六話 第二のプロローグ

「そんな気はしてたんだ」

 呟く。

 「ああ、そんな気はしてたさ」

 「でもな、少し期待してたんだよ」

 「もう終わるかもしれないって」

 僅かな沈黙が流れる。

 「なあ、どうしろってんだよ」

 「答えてくれよ、なあ? いるならさ」

 「……神サマってのがさァ……」

 一瞬の沈黙の後、呟きは叫びへと変わる。

 「なぁ!!おい!!!」

 「どうしろってんだよ!!!?」

 「俺はもう……生きたくないんだ!!!!!」

 「エディ」は手に握っていた拳銃をこめかみに当て引き金を引く。だが、スライドが下がりっぱなしの拳銃からは当然弾は出てこない。

 「……くそっ……くそぉおっ……」

 「エディ」は拳銃を投げ捨て、近くに倒れている兵士の手から突撃銃を奪い取った。

 銃口を顎に押し当て、引き金に指を掛ける。

 しかし、そこである予感が脳裏をよぎる。

 ここで死んで、それで終わりなのか?

 死んだ先にまだ先があるのではないのか?

 「男」は周囲を見渡す。燦々たる光景が広がっている。

 「男」は、有り体に言っていわゆる「ミリオタ」という種の人間であった。友人から勧められた様々な作品から、特に気に入っていたのがミリタリー系のものであった。

 戦って、死んでいく。前線の兵士達には優劣などない。生きるものは生き、死ぬものは死ぬ。

物語の中で戦火に身を投じる主人公達は悲劇的に描かれていたが、「男」はその戦火に高揚を覚えていた。

 優劣が溢れ、死ぬはずの者が平然と生きる社会に生きている自分から見て、彼らはとても「自然」であるように思えて。だから好きだった。

 そして今、「男」は兵士だった。

 顎から銃口が離れる。

 だから、「今」はそう悪くないのかもしれない。今死んで、「前世」のような世界に飛ばされたらそれこそ絶望だ。

 それから「男」は、兵士の死体から銃や、弾薬や、食料を拾い、あらかたバックパックに詰め込み、軍服をウリューナ兵の、なるべく破損していないものに着替えた。

 そして、敵がやって来た方向を、味方の基地とは正反対の方向を向く。

 「今」になってまで組織の一部となるのは御免だ。――そう思ったから。

 「男」は、歩き始めた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ