第三話 狂人と狂人
一回を短くして話数を稼ぐ姑息な手段をとります。
「遅すぎるんですよッ!!!」
エディは叩き付ける様に叫ぶ。
ようやくやって来た救援に、エディは安堵でも、喜びでもなくただ怒りを爆発させた。
当然とも言える。ここまでの状況を鑑みれば、彼の怒りはもっともだ。誰が責められるだろう。
しかし、相手は連合軍の特務機関の隊長である。それ以上の罵倒を浴びせることは出来ず、エディは荒く息を吐いた。
「本当にすまなかった。だが、まずは君たちの状況を教えて欲しい。君たちはあと何人残っ」
「僕だけです、僕一人ッ!!我々第67前線基地は全滅しました!!!」
パトリオット01の言葉を遮り、エディは吐き捨てるように叫ぶ。もう歌は聞こえなくなっていた。
「……」
パトリオット01は数秒の沈黙の後、言った。
「君は死ぬ覚悟が出来ているか?」
エディは絶句する。
「君の仲間はゲルマス人としての矜持を果たした。ならば」
「同じように、君は今、そこで。一人の「愛国者」として死ぬ用意は出来ているか?」
パトリオット01は淡々と続ける。
「出来ているのか?」
「出来ているのなら―」
「私たちは君ごと敵を皆粉砕することが出来る」
「私個人から君に一言いうなら」
死ね
「――――。返事を」
永遠にも似た数秒の後、
エディは悟った。
コイツはイカれていると。
本来なら、関わってはいけない人間であったと。
しかし、それでいいと、それが良いと思った。ようやく決心することが出来たと思った。
「……分かりました。どうぞ、見えるもの全部壊してください」
通信機から狂人の声が流れる。嬉々とした声だった。
「そうかそうか。了解した。では我々は我々の使命を果たそう」
「ですが」
エディは言葉を続ける。
「僕はあなた方の爆撃で死ぬのは御免です。ですから―」
「お先に失礼しておきます。「向こう」で仲間と見守りますよ。頑張ってください」
そう言うとエディはマイクを口元から離した。
「了解した。神のお導きのあらんことを」
プツリと通話は切れ、エディは投げ捨てるようにマイクを置いた。
「神、ですか」
ホルスターから拳銃を引き抜き、通信室の出口に向かう。
外からは、ウリューナの兵士の会話が聞こえてくる。ウリューナ語なので、何を言っているのかは解らない。
深く息を吐き、エディは通信室を飛び出した。
……やっぱりもうちょっと長い方がいいでしょうか…?