ウザい…
それはほんまに偶然やった…
まさに偶然の産物ってやつ。
いや…でも今考えると…ある意味、必然やったのかも知れんな…
何の話？って思うやろぅな？
まぁ順を追って話しまっさ。
あの後、勝負を終わらせに来たアモーンが再びアップライトに構えたんや。
やっぱ最後を飾るんは１番得意な空手で…ってなつもりなんやろな。
「ほな…行かせて貰うでぇっ！」
叫んだアモーンが、左右に身体を振りながら間合いへと入って来た。
密着に等しい距離から、打ち下ろす様な右のローキックッ！
一応は脛で受けてガードしたものの、打ち下ろしのローは力の逃げ場が無く威力を殺し切れへん…
更にすかさず左のローが来るっ！
反応が遅れてしもた俺は、食らう瞬間に足の角度を変えて凌ぐ。
「ッ…！！」
い、痛ぇ…超痛いんですけど？
足の骨ん中に、電流が走り抜けたみたいな痺れが残った…
そして顔をしかめた俺が下がるタイミングで、逃がさんと言わんばかりの前蹴りっ！
何とかクロスガードで受けたけど、下がろうとしてた勢いも手伝ってそのままロープまで吹き飛ばされてしもた。
跳ね返る俺を、カウンター狙いのアモーンがロックオン！
「これで終いじゃあぁぁ～～っ！！」
馬鹿デカイ右の正拳を腰の辺りで溜めてはる…
〝ヤバ…〟
あんなん食ろたら、石で殴られるんと変わらへんやんけっ！
すると不思議な事に、その恐怖心が俺の足を動かした…
ほんまに無意識のままで両足が加速したんや。
結果、アモーンが予測してたスピードより速く戻って来たもんやから、奴のタイミングがずれたっ！
「ちょ…ええいクソッ！！」
そう言って奴が正拳を放った時、俺は既に懐へと入り込んどった。
当然、馬鹿デカイ饅頭みたいな拳は俺の遥か後方へ。
でも流石は対処が早く、アモーンは直ぐに左のフックでフォローしようとした。
が、しかぁ～しっ！
ここで俺の〝天才〟が発動しちゃった訳！！
いやぁ…やっぱ出ちゃうんだなぁ…ウンウン
無意識っつ～の？
いや！むしろ無意識は天才ゆえ…みたいな？
しょうがないよねぇ…なんかゴメンね…天才で♪
(う、うぜえ…読者様の声、作者が代弁しておきました)
いやね、奴が左を打つのを本能的に察しちゃってさぁ～
気がつけば右手で奴の左手首を掴んでたのよ。
いやほんと無意識によ？無意識っ！
え…何故って？だってほら…何故なら天才だから♪
で、掴んだまま奴の左腕を背中の方へと捻上げてやったのよ！勿論これも無意識！何故なら天才だから♪
更に更にっ！ここで良い事を閃いたっ！
その捻った腕を、奴の背中越しで左手に持ち変えたんよっ！
これでより一層深く極り、アモーンの頭が自然と下に下がるやん？凄くないっ！？
何故そんなん出来たかって？
も～…解ってるくせにぃ♪
そんなに聞きたい？聞きたいのっ！？
ったくぅ…欲しがるねぇ君達も♪
しゃあないなぁ～じゃあ特別に言わせてあげようじゃない！
何故なら俺が…せ～のっ！ハイッ！！
ん～？聴こえないぞぅ♪照れずにSay！！
(ええ加減にしたれよゴルァ！！と仰りたいんですね？わかります。これもちゃ～んと代弁しておきましょう！！)
そんでもって下がった頭を、右腕でフロントネックロックに極めたったっタラッタリッタラッタ兎のダンス～♪と来たもんだぁ！
この時点で奴の左腕と首が極った状態！
しかし俺の天才はまだまだ止まらへんっ！
更にフロントネックロックを極めてる右手でアモーンの右手首までも掴み、奴の上半身を完全封殺っ！！どやぁー
と、並みの天才ならここで止まるんやろぅけど、俺は止まらんかった…
で、気付いてしもぅたんや…
俺は天才じゃなく、超天才やったって事にっ！
なんか…今まで隠してて申し訳ない！って気分やわ…でも信じてっ！？俺もこの時に初めて気付いたんよっ！！だから今回だけは許してニャン♪
(殺意…皆さんの〝以下略〟)
話を戻すでぇ！
上半身を完封した俺はそのまま仰向けに倒れ込み、両足を奴の胴体に回して締め付けたっ！
これで全身の動きを完璧に殺した訳やっ！
賢明な皆さんの事やからもうお気づきかも知れんけど、この技はフロントネックロックの状態で倒れ込んどる訳やから、DDTの効果も加わっとる！
しかも両腕を封じてるから防御のしようが無いというパーフェクトっぷり！！
こ、怖い…俺は己の才能が怖いでぇ…
へ？アモーンはどうなったんやってか？
当然すぐさまギブアップしたんやけど、全身封じられとるもんやからタップが出来んでなぁ♪
泣きそうな声で
〝ギ、ギブや！ギブアップやぁ～っ！〟
やってさ♪
まぁ彼も天才の俺を相手によく頑張ったと思うよ…ウン！
だから見放さず、これからも応援したってな！
(お前…今回でだいぶ好感度下がっとるぞ？
もう口を挟まずにはおれない作者 談)
「ハァ…ハァ…な、なんや…い、今の技は…？ハァ…ハァ…」
大の字になったアモーンが訊いて来たけど…
「わからん…咄嗟に出来た技やから、俺にもわからんのや…」
俺も隣に寝転びながらそう答える事しか出来へんかった。
「咄嗟ってお前…マジか？」
「あぁ…マジや。なんせ俺、天才…いや、超天才みたいやからよ♪」
「言ってろタコッ！しかしまぁ…何にせよオリジナル技の完成って課題はクリアしたみたいやな？」
「ん、まぁ…せやなっ！で、食らってみてどうやったよ？ずいぶんな声でギブアップ言うてはったけど…痛かった？ヒヒヒ♪」
「うるせえよ…アドバイスしてやろか思ったけど、教えてやんねぇぞタコッ！」
「ゴメンゴメン！冗談だってばよ！で、どないやったんよ？」
「あれならイケるでぇ！でもよ、１つアドバイスするなら…お前は最後普通に倒れ込んだけど、立ち関節を極めた状態からスープレックスにも移行出来るで。つまりタップアウトも3カウントも狙える汎用性って事っちゃな」
「そう言えばそうやな…全然気付いて無かったわ…サンキュー！参考にするわっ！！」
「で…技の名前はどうするのよ？って言っても、咄嗟に出た技なら未だ決まってねぇわな…ハハハ」
笑うアモーンに俺はこれ以上無いって程のドヤ顔を向けたった。そして一言…
「決めたでっ！」
「へ？決めたって…この短時間で？考えたの？お前が？馬鹿なのに？」
「馬鹿って言うなっ！ったく…」
「まぁまぁそれは置いといて…聞かせろよ！技の名前！！」
俺は咳を1つ払ってから、さっき以上のドヤ顔で教えてやったさ
「不破…クラッチ…そう！あの技の名は…不破クラッチやっ！！」
「……えーと、、、ハイ？」
「わからんのかいやっ！？俺の名字は不惑やろ？それに固め技を意味するクラッチを足したら不惑クラッチになる…でも語呂が悪いから〝く〟を1つ減らして不破クラッチやっ！しかもこの〝ふわ〟の部分の漢字は、破る事が出来ないって意味の不破を採用するハイセンス♪」
(はい…ここも皆さんの言葉を代弁する場面ですが、今回はアモーン君がその役目を担ってくれるそうです。ではアモーン君、元気よく張り切ってどうぞ～！！)
「く、くそダセェ～ッ！！」
この後、30分にも及ぶアモーンの説得に勇が応じる事は無く、技の名前は〝不破クラッチ〟に正式決定しましたとさ…めでたしめでたし
