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中指 立てたら  作者: 福島崇史
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合宿所生活

合宿所生活は地獄…とまではいかへんまでも、楽しさ2割、苦しさ8割って感じやった。


道場と隣接したプレハブで8人が暮らしてて、4人の先輩レスラーは各々に個室が与えられてるけど、俺達新人4人は当然ながら同室のタコ部屋。

ほんま…むさ苦しいったらあらへんで…


「なんやコレッ!?こんなんオ○ニーも出来へんやんけっ!!」


これは初めて部屋を見た時のティラノの言葉や。

いや、ほんまに…至極その通りやで。

思春期の男子4人を同室に詰め込むって(なん)の拷問ですか?

でも実際、どこの団体に入ってたとしても同じ環境になってたんやろぅけど…


練習は当然ながらキツかった。

前に話した通りこのセレクトって団体は、格闘技系からデスマッチまで色んなタイプの試合を(おこな)ってる。

だからそれに伴って、各スタイルのコーチを外部から雇ってはる。


格闘技系…元・修斗のランカーであり、寝技ヲタクの久見伏(くみふせ) (つよし)コーチ。


ストロングスタイル…かつて他団体でヘビー級チャンピオンだった奥堂(おうどう) (あゆむ)コーチ。


ルチャ・リブレ…中学卒業と共にプロレスラーを目指すが身長が規定に足りず、単身メキシコに渡ってデビューした執念の人ウルティモ・フェニックスこと石飛(いしとび) (すぐる)コーチ。


デスマッチ…かつてデスマッチ全盛の頃、インディーズを渡り歩き〝地獄の道化師〟との異名を欲しいままにしたジョーカー冬木こと冬木(ふゆき) 無道(むどう)コーチ。


全員もう引退してるとは言え、各ジャンルで実績を残したレジェンドばっかりや。

で、最初は俺達の適性を見極める為か、全員が全てのジャンルを体験させられた。

月・火・水曜日は基本となるストロングスタイル。

木曜日は格闘技系、金曜日はルチャ、土曜日はデスマッチって感じや。

日曜日は一応休みって事になってるけど、雑用は当然せなアカンし、興行があればもちろんリングの設営や先輩選手の世話役で駆り出される…

俺達新人に丸々1日休める日なんてのは皆無や。


でも一番キツかったんは基礎練習や。

マンガの中だけの話やと思ってたんやけど、冗談抜きでスクワットをした後は足元に汗の水溜まりが出来るんやもの…

そりゃ数時間かけて5千回もスクワットすりゃそうもなるわなぁ…


あとは〝トランプサーキット〟

例えばスペードは腕立て伏せ、クラブは腹筋、ハートは背筋、ダイヤはスクワットと設定する。

で、裏返しのまま伏せたトランプの山を1枚ずつ捲って行く訳。

そんで出たカードがスペードのキングなら腕立て伏せを13回、ハートの5なら背筋を5回って具合に進めてって、トランプの山が無くなるまで続けるって寸法。

これを毎日3セット…地味やけどキツいっ!


それが終わると今度は、道場近くにある山寺へ移動。

移動言うてもただの移動や無いで…

山寺やから当然ながら坂道を登って行くやん?

で、この坂道を二人一組みになって交代で肩車して登って行くんよ。スクワット5千回+αをやった後にやでっ!!

なっ!イカれてるやろっ!?


更に坂を登り切ったら、山寺への最後の関門が待ってるんや。

そうっ!階段や…

それも520段の階段…

え?大した事無いやんって?

アホゥッ!

ちゃんと話聞いてたんかいっ!!

散々、下半身を苛めた後やねんぞっ!!

俺かて普通の状態やったらこんなもん屁でも無いわっ!!

ハァハァ…

あ…取り乱しまして…なんか、さぁせん…


で…這う様にしてやっとの思いで山寺に到着しても、安全とプロデビューを祈願したら休む事なく道場にとんぼ返り。

これが俺達の1日って感じやねんけども、掃除や洗濯…食事の準備もせなアカンし、先輩レスラーからの虐め…もとい〝可愛がり〟もある…

ほんま気が休まらへん。

あ、一緒に暮らしてる先輩レスラーについては又追々話すわな。


そんな苛酷な生活を始めて1ヶ月が経とうとしたある日…事件は起きたんや…


「邪魔するでぇっ!」


一目見て〝何か〟をやってるのが判る大男が道場に現れた。

冷蔵庫みたいな真四角のガタイ…身長185cm、体重120kgってとこか…


「にいちゃん…入門希望か?」


最初に気付いて声を掛けたのは奥堂コーチやった。

でも大男はそれを鼻で笑うと…


「ここで一番(いっちゃん)強いのは誰や!?」


そう叫んだ。


そう…この大男、道場破りやったんや。




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