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中指 立てたら  作者: 福島崇史
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食後の談笑…?

〝食後のデザートも何か作ろか?〟


そんなそそぐちゃんからの提案に戦慄した俺は…


「いや……アイス食べたいし、なんなら一緒にコンビニ行かへん?」


本当は食べたくも無いアイスクリームを口実に、咄嗟ながらもそんな事を口走っていた。

彼女が気分を害していないか様子を窺うと…


「ん~……せやなっ!お菓子とか飲み物とか他にも買いたい物あるし、そないしよっか♪」


良かった…どうやら我が提案は女帝のお気に召すところだったらしい。

それにしてもお菓子やジュースって…そういうところはやっぱ女子なんやなぁ…なんか微笑ましいわ。

そんな訳で…色々な描写をはしょってコンビニ到着(俺は悪ないっ!悪いのはクソ作者っ!!)


「今日は沢山ご馳走になったし…お礼に俺が出すからさ、遠慮せんと何でも欲しい物バンバンかごに入れてんかっ♪」


そう言ってドンッ!と胸を叩いて見せる。


「え?だ、大丈夫なん…?アンタお金持ってるイメージ無いんやけど…?

〝俺が合図したら一目散にダッシュで逃げろ〟

とか言うんは無しやで?」


「そんなん言うかぁっ!!…ったく信用されとらんなぁ…ホレッ♪」


ポケットをまさぐった俺は、あの1万円札を取り出して水戸黄門の印籠の如く見せつけてやった。


「うわっ!?マ、マジか…?」


「これで安心やろ?」


「よ、よぅ出来とる…本物と見分けがつかん位に…」


「本物やっちゅうねんっ!これで遊んで来いって親父が卒業祝いにくれたんやっ!!」


「か、家族ぐるみの犯行…か」


「……そんなに嫌なら奢るんやめるけど?」


「嘘嘘っ!冗談やんかぁ♪そういう事なら遠慮無く奢られてあげようやないの!まだまだ夜は長いしね♪」


そう言った彼女が、あ~でも無い、こ~でも無いと言いながら物色を始める。

コンビニではありえない約20分もの長き買い物やったけど、ようやくレジへという時になって彼女が思い出した様に訊いて来た。


「あ、そういやぁアンタ…歯ブラシやらお泊まりセット持って来てるん?」


「…はい?」


「…はい?やなくてさ。お泊まりセットはあるのか?と訊いておる…」


「はて…するってぇと何ですかい?先程〝まだまだ夜は長いしね♪〟と仰ったのは…オールナイトって意味ですかい?」


「当然。てか、逆に帰る気やった事に驚きなのだが?無いわぁ…引くわぁ…」


いやいやいや!それが普通なんですけどっ!?

と言ったところでこの暴君に通じない事は重々承知してる訳で‥俺は覚悟を決めて旅行用の歯ブラシセットをかごに追加した。


んでもって精算やら帰り道の描写は又もやはしょられ、彼女の家に無事到着(わかってると思いますが悪いのは腐れ外道作者)


今度はリビングのテーブルにパーティー開けしたお菓子が並び、いよいよ宴って感じがして来たんやけども…

俺の頭の中は〝あの事〟が支配し始めていた。

そう…俺とそそぐちゃんの関係の事や…


〝ハッキリさせて来いっ!〟


柔はそう言って送り出してくれた。

もちろん俺もそのつもりで来た訳やけども…

まさか泊まりになるなんて思ってませんやんっ!

こんな状況でそんな話題を持ち出したら…


〝うわっ…この男…泊まりって知った途端に何か言い出したで…下心丸見えでマジきしょいんですけど?〟


とか思われちゃいますやんっ!

アカンアカンアカンッ!

それだけはならぬっ!断じてなりませぬっ!!


「さっきから何をブツブツ言うとるん?」


「ふえっ!?い、いや…な、何でも無いんよ…ハ、ハハハ…そ、それよりさ…そそぐちゃん、何か話したい事があるって言うとったやん?それを聞かせて貰おっかなぁ…なんて思ったり思わなかったり…」


「…思わへんのやったら言わへんけど?」


「いや…あの…ちゃんと聞かせて頂きます、いやっ!聞かせて下さいませっ!!」


「ったく…じゃあ…言うけど…あっ!でもアンタも話したい事あるって言うとったやん?先にそっちから…」


「NO~~っ!!いいんですっ!その件につきましては今日は話せなくなったというか…タイミング的に最悪というか…と、とにかくっ!そそぐちゃんの話を聞かせてぇなっ!?」


怒涛の早口でまくしたてる俺に、珍しく圧され気味となったそそぐちゃん…


「そ、そうなん…?な、なんやよう解らんけど…ほんじゃあ私の話したい事を言うね…話したいってか訊きたい事やねんけど…」


まくし立てた事と緊張から一気に喉が渇いた俺は、グラスのスポーツドリンクを飲み干してから答えた。


「うん…何でも訊いてんか」


彼女はポテチを指につまみ、グルグルと角度を変えながらそれを眺めていた。

そして…


「アンタ…プロレスラー目指しとるんやんな?」


「お、応よ…」


「卒業後すぐに入門するん?」


「いや…暫くは色んな格闘技を経験しよかなぁ…って思ってる…」


「ふ~ん…暫くってどれくらい?」


「とりあえず1年のつもりやけど…」


「そっか…因みに何で直ぐに入門せぇへんの?」


「説明が難しいんやけどな…俺が目指してるのはプロレスラーにして格闘王やねん。そんで最終目的は…MMAチャンピオンになった柔と、プロレスのチャンピオンになった俺で真の格闘王を決める統一戦をやる事っ!」


「質問の答えになってへんで…その答えじゃ直ぐに入門しない理由はわからへんよ…」


そう言った彼女の指先では、未だポテチがつままれたまま…


「あ、あぁ…そうよな……

俺な…プロデビューしたら、柔と()るまで他の格闘家には敗けたくないねんっ!プロレスの試合で敗けるんは構へんっ!でも異種格闘技戦だけは不敗のまま柔まで辿り着きたいねんっ!

だから…だから…それだけの力や技術を手に入れてから…」


「ハァ~~…なんか…ガッカリやわ……失望…」


「へ…?」


ここでようやく、指先のポテチは生まれて来た本当の目的を果たせた。

そして…

指先に残った余韻を舐め取ったそそぐちゃん…


「テメェッ!シャバい事ぬかすのも大概にしたれやっ!おおっ!?」


あまりの物凄い剣幕に一瞬たじろいだ俺やったけど、ある事に気付いてしもた…

あんな物を見せられてしもたら男はもうアカン…

男が一番苦手な最終兵器…

そう…


惚れた女の涙…

啖呵を切った彼女は…泣いとったんや…






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