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中指 立てたら  作者: 福島崇史
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村雨

1分間のインターバル…

とはいえこの試合にセコンドはついてないから、マッサージをしてくれる人間も(うがい)をさせてくれる人間も当然おらへん。

俺はコーナーに置いといたペットボトルの水を一口だけ含み、勇の言ってた〝村雨〟とやらについて考えてみた。


プロレスを代表する打撃技…

思い当たるのはラリアットとドロップキック…くらいかぁ…

せやけど…そのどちらやったとしても俺相手に通じると本気で思ってるのかね?

ラリアットもドロップキックも〝プロレスの試合〟やからこそ繰り出せる技や…

その証拠に異種格闘技戦やMMAでそれらの技を使うプロレスラーはおらへん。

通用せん事を知っとるからな。


確か…村雨って日本刀の名前やったよな?

て事はラリアットの可能性が高いな…

首を刈り取るって意味でも。

アホの中二が考えそうな事やし♪

ラリアットなら藤原組長よろしく、脇固めで切り返してフィニッシュやな。

でも待てよ…アイツ、アレンジを加えてるって言うてたな…

あぁもうっ!考えとってもしゃあないっ!!

てか考えてまう事が既に奴の術中やんけっ!!

俺は俺の技術で対応するだけや…

んでもって、そのニコニコした(ツラ)から余裕を消したろうやんけっ!


……………………………………………


フフフッ♪考えとる考えとるっ!

柔の奴、俺の〝村雨〟がどんな技なんか気になってしゃあないみたいやな♪

まぁお前の事やからプロレスを代表する打撃技ってのと、村雨って名前をヒントにある程度の予測はついとるんやろな…

でも俺が言うた〝アレンジ〟については判らへんやろ?

それこそが〝ミソ〟やからのぅ♪

第2ラウンドが始まると同時に仕掛けたるさかいな…楽しみにしとってくれやっ!


「よっしゃっ!そろそろ第2ラウンド始めるぞっ!!」


朝倉さんが俺達に手招きし、リング中央へと(いざな)った。

ゴングは未だ鳴っとらんけど、俺も柔も既に構えとる…互いに待ちきれへんって感じや。


「ファイッ!!」


朝倉さんの声から少し遅れて響いた鐘の音、俺達は待ってましたとばかりに前へ飛び出した。

そして俺は目の前の柔をガン無視して反対側のロープへと走るっ!


「へ?」


スレ違い様、柔の間抜けな声が聴こえた。

しかし俺はそんな事も気にせず、今度は左側のロープへ走るっ!


「いや…あの…」


まだ戸惑ったままの柔が情けない表情をしとるわ♪

でもまだまだ行くでぇっ!!

俺は何度も何度も柔を通り過ぎながらロープワークを繰り返す。

どやっ!?プロレスラーや無いお前は対処のしかたがわからへんやろ?


「……にせぇよ…」


ん?柔の奴、なんか言うてはる…


「ええ加減にせぇよ~~っ!!」


痺れを切らしたらしく、走る俺に向けて水平に腕を出して来よった!

格闘家のお前が俺に対してラリアットってか?

しかぁし!甘い…甘いでぇ柔っ!ソー・スイートやでっ!!

俺は眼前に迫ったその腕の下を潜ると、反対側のロープに背中を預けその反動で更なる勢いをつけたっ!

そして…


「これが村雨じゃあぁぁ~っ!ガッツリ味わったれやあぁぁ~~っっっ!!!」


叫びながら渾身の〝村雨〟を柔へと叩き込んでやったっ!!


(か、勝った♪)


俺が勝利を確信した10秒後、決着を告げるゴングがけたたましく鳴らされとった。

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