逆っ!!
作戦通りや。
勇よ…単純なお前の事やから絶対に引っ掛かると思ったで。
俺が低い姿勢のまま動いたら、お前はタックルやと思って腰を引く。
更に受け止めようと両手を使うからガードもガラ空きになる…
そこで一気に跳ね上がり、飛び膝蹴りを一閃!
頭パッパラパーのお姉ちゃんをホテル連れ込むより簡単やったで♪
MMAの経験が浅い格闘家は、柔術家を相手にする時ほぼ全員が寝技を警戒しよる…
だから俺はそこに突け込んだって訳や。
ましてや人並み以上の単純バカが相手やからな、思惑通りに行き過ぎてちょっと気持ち悪いくらいやわ♪
どや…効いたやろぅよ?
いくら体重差があるとは言え、俺の全体重が乗った飛び膝や…
それがノーガードの顔面にクリーンヒットしたんやからな、流石に立てる訳あらへん。
オープニングヒットでそのまま幕引きたぁ少々拍子抜けやけども…そのまま寝と…?…
アレ?なんか変やぞ…?
そういやぁダウンカウントが聴こえて来ぇへん…
おいおい…嘘…やろ…?
ニュートラルコーナーで振り返った俺が見たのは信じられへん光景やった…
「ってえぇぇ~~っ!!痛て痛て痛て痛て…痛ってえぇぇ~~っっっ!!!」
マ、マジ…かよ…?
ダウンすらしてへん…とは…?
「かぁ~っ…痛かったぁ~っ…けどな柔よ…ちぃ~とばかし技が軽いでぇ♪」
あ、呆れるで…ほんまに呆れる…
お前のタフネスぶりには開いた口が塞がらへんわ…
もしかしてアホ過ぎて、ティラノザウルスみたいに痛感神経の伝達が遅いんとちゃうか?
2~3分してからダウンするとか無しやぞ…?
「どしたぁ柔?豆が鳩鉄砲喰らったみたいな顔してよ…自分の技が効かへんかったんがそないにショックかぃ?」
「逆なっ!鳩鉄砲って何んやねんっ!?てか…このやり取り、前にもやった覚えがあるぞっ!?学習能力無いんかいっ!!」
「鳩鉄砲が逆?…って事は…鉄砲鳩が正解…って事?」
もういいです…
さっき、君の脳は絹ごし豆腐くらい皺が無いって喩えたけども…今や脳があるのかすら疑ってますよ俺は…
「なぁ柔よ…鉄砲鳩が正しいんかってばっ!?」
「まだ言うとるんかいっ!その逆とちゃうわっ!!豆と鳩が逆やって言うてんねんっ!!」
「あぁ~…そういう事ね!完全に理解したっ♪」
「ったく…やっと解ったんかいっ!試合中やっちゅうのに気が抜けるで…ほんま…」
「鉄砲豆が正解って事やなっ!?もう大丈夫っ!もう覚えたっ!!」
新喜劇を見て育った人間ばっかりやからな…
皆んなが皆んな、お約束とばかりにコケて見せてたわ…
勇よ…お前のタフネスぶりにも呆れたけども、それ以上にアホさ加減に呆れ果てるわ…
お前にかかりゃ、アホの坂田師匠ですら閉口するで…
「2人共そろそろ私語はつつしめっ!試合再開するでっ!!それと柔…レフリーの俺がダウンのコールもしてへんのに勝手にニュートラルコーナーへ下がるな。次にやったらネガティブファイトとして減点対象やぞ…ええなっ!?」
「はい…すいません…」
「やぁ~いやぁ~い怒られてやんのっ♪柔のバァ~カバァ~カ♪」
くっ…シバくっ!絶対にシバくっ!!
俺が決意を固くしたその時、レフリーの朝倉さんが動いた。
「勇君…今のは対戦相手への侮辱って事で減点させて貰うから…ね」
「いや、朝倉さん…そこを何んとかぁ…」
ゴネる勇を振り切って朝倉さんが減点を宣告し、ようやく…ほんまにようやく試合が再開された。
……作者からのお知らせ……
私生活の事情により暫く更新が出来ません。
次回更新は来月(7月)の初旬を予定しております。
読んで頂いてる皆様にはご迷惑をお掛けし申し訳ございません。
連載再開の折りには変わらぬご愛顧を頂ければ幸いにございます。




