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中指 立てたら  作者: 福島崇史
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知り合いバイキング

俺、柔、クソ作者…全員が前回は悪ふざけが過ぎたと反省してる。

今回は真剣にやるから、見捨てずに付き合って貰えたらほんまに幸いです。

では、早速…


それは栗手とのスパーリングが終わって1週間ほど経った頃の事やった…


「なぁ勇…」


「あん?どした…えらい改まった顔してよ…」


「今度の日曜日、なんか予定あるか?」


「日曜日?いや…トレーニングするくらいしか予定はあらへんけど…あっ!先に言うとくけどナンパやったらもう付き合わへんぞっ!!」


「アホか…そんなんとちゃうわ…」


そう答えた柔は何やら思い詰めてる様に見えた。

いつものノリがすっかり鳴りを潜めてしもぅてるやんけ…

流石に俺もただ事や無い空気くらいは感じ取れる。


「柔…なんか…大事な話でもあるんか?それも今ここでは話せんような…?」


「ん…まぁ…せやな。大事っちゃあ大事な事やけど…あんまり身構えんでええからよ。とりあえず日曜日、ちぃ~と(ツラ)貸してくれや」


「まぁ…それはええけど…どこに行くんや?」


「烏合衆のジムや」


「烏合衆…え?ちょ、まさかもう栗手との再戦をさせるつもりちゃうやろなっ!?」


「無い頭で色々考えんなや、ショートしてまうど?8ビットくらいしか容量無いんやからよ…ケケケ♪」


ようやく柔の口から冗談が飛び出した。

ちょっと安心…


「だ、誰が8ビットやねんっ!!ところで柔よ…?」


「まだ質問かいや…なんやねん?」


「8ビットってどれくらいや?」


「………」


結局その問いには答えて貰えんかった。

多分アイツもわからんかったんとちゃうかな…

なんせ俺に劣らぬアホやからなぁ♪

で、柔が次に口を開いて出て来た言葉は…


「なんにせよ日曜日の昼1時、烏合衆のジムで待ってるからよ。勿論トレーニング出来る用意はして来いよっ!」


「なんや、現地集合かいや?一緒に行きゃあええやんけ!?」


「いや…俺はちょっと用事があるからよ…先に行ってるわ」


柔は視線を合わさずにそう答えた。

だから俺も〝ふ~ん…〟とだけ答えてそれ以上は訊かなかった。いや、訊かせへん空気を柔が出してたから訊かれへんかったってのが正しいかな…


そして日曜日当日…

約束の時間より20分ほど早くジムに着いた。

本当なら、そそぐちゃんに会えるのが楽しみなはずやのに、そんな考えは俺の頭からスッポリ抜け落ちとった…

あの時の柔の態度は、それ位に俺を緊張させたんや。

2度ばかし深呼吸をしてからジムの扉を開けた…


「こんにちは~!今日もお世話に…なり…ま…す」


元気よく言ったはずの挨拶も尻すぼみになってしもぅた…え?なんでかって?

だってよ、日曜日やって言うのに一般のジム生の姿が全く見えへんねんもんよ。

しかもそれだけや無い…

リングの下には見知った顔のオンパレードや…


先ずは島井と山田の〝ゴリラブラザーズ〟…

そして長田港で俺と闘った林田…

同日に柔と()り合った金木…

色々とめんどくさい生徒会長の正大…

こないだ闘ったばかりの栗手…

そして〝麗しのバーサーカー〟そそぐちゃん…

リングの上には既に汗をかいた柔と朝倉さんが見える…


「お、お前ら…な、なんで…?」


〝知り合いバイキング〟状態に面喰らった俺は、状況が把握出来ないままでそう呟いとった。

するとリング上から、少し呼吸の乱れた柔が声を飛ばして来た。


「ここに居るのは全員が〝見届け人〟やっ!無理言うて来て貰ったんやっ!!」


「見届け人…はて?なんの?」


「な、なんのって…鈍い奴っちゃなぁ~…

立ち合いの見届け人に決まっとるやろっ!!」


「立ち合い…はて?誰と誰の?」


「お前…わざとボケとるんやろ?」


「いえ…全く」


「あぁ…それは失礼…僕ともあろう者が、君が本物だって事を忘れてましたよ失敬失敬」


「つまらん世辞はええからこの状況を説明してくれやっ!」


「世辞って…微塵も褒めて無いんやけど…まぁええわ、なら言うて聞かせたるっ!耳の穴かっぽじって よ~聞いとけよっ!!」


念の為、ほんまに小指で耳の穴をかっぽじっといた。

それが終わるのを呆れ顔で待ってから柔が叫んだ…


「勇っ!俺と立ち合えっ!!」


「…はい?」


本題を叫ばれて尚 状況を理解しきれない俺は、相変わらず間の抜けた顔で間の抜けた返事をするのが精一杯やったんや…









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