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中指 立てたら  作者: 福島崇史
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燃え上がれ!風前の灯火!!

ガッ…カッ…

カッ…コフゥ…

ヒュ~…ヒュ~…


踞った俺の口からは擬音しか出てこぇへんかった。

堪えたと思えた奴のボディブローは、数秒遅れて俺に苦痛を運んで来たんや…


「ダウ~ンッ!!」


脂汗を滲ませながら朝倉さんの声を聴いた。

でも何故かそれは凄く遠くから届いた様に感じた…そして更に遠くから別の声が重なる。


「先ずは呼吸を整えぇっ!ゆっくり深呼吸やっ!焦らんでええっ!カウント9までゆっくり休めっ!!」


柔の声か…

ん?また別の声が聴こえるぞ…


「ざっけんなよテメェ!何ダウンなんか取られてんねんっ!チャッチャと立ってこのボンクラいわしたらんかいっ!!」


いや、そそぐちゃん…君は栗手のセコンドやから。てかほんまに口悪いね…ヤダコワイ

でもまぁ彼女に檄を飛ばされちゃあ、格好つけん訳にはいかんわな。

俺は柔の指示を無視して、カウント6で立ち上がった。正直、まだ少し息がしにくい…

立ち上がった俺を見て柔が首を振り、栗手が〝やるねぇ♪〟とばかりに口笛を吹きよった。

相変わらずムカつく顔で…

まぁ今の内に調子こいとけやっ!

直ぐにその顔から余裕を消したるさかいなっ!!


「やれるな?」


そう問う朝倉さんに無言で頷く。

なんにせよ先にポイントを奪われたんは事実や…

焦りは禁物やけど…

直ぐに取り戻したるからなっ!!


「ファイッ!!」


仕切り直し。

開始からまだ3分と経ってない。

互いに構え直したけど、どちらも開始時と同じ構えのままや。

栗手の奴、確かにパンチ力はある…

20kgはある体重差をものともせぇへんとは大したもんや…

ほんまやったら打撃に対処しやすい構えに変えるべきなんやろけども…

でもな…

おっと!奴がまた動いたな…ったく心の中で語る暇も与えてくれんのかいや。せっかちな奴っちゃで…


今度はセオリー通りに左ジャブの連打…

これはキッチリとガードする。

当然ジャブの後は決めパンチが飛んで来るはず、それが顔に来るか?ボディに来るか?

俺はボディに山を張った。

奴の右腕が下方に動くっ!

ほぅら思った通り♪

上体を屈めて、左腕で脇腹をガード…っと♪


その瞬間、俺の視界には無数の白い光が…


アレ…?何コレ?

めっちゃ眩しいんやけど?

そう思った直後には一瞬の浮遊感に包まれ、直ぐに大きな衝撃が全身を襲った。


なんやろ…凄く気持ちがええ…

火照った身体に冷たいマットが心地ええなぁ…

このまま寝てまいたいなぁ…

そう…このまま寝て…寝て?

……寝たらアカ~~ンッ!!


言いようの無い恐怖感に襲われた俺は、本能的に立ち上がってファイティングポーズを取ってたんや。

危なかった…

立った時には朝倉さんの口から〝エ~イトッ〟の声が発っせられとった。

もうちょっとでKO負けやったな…

朝倉さんが探るように俺の目を見る。

そんな目で見るなって…大丈夫やから…


「これ何本や?」


俺の目の前に立てられた朝倉さんの指…


「さ、3本…」


「……」


「……」


「よしっ!大丈夫そやな…なら続行やっ!ファイッ!!」


焦ったぁ~…なんやってん今の間は?

え?なんで焦るねんて?

だって…勘で答えたんやもの…

だって…未だ視界がボヤけてるんやもの…

ほぉら言わん事っちゃない…

俺へと向かって来てる栗手が、分身の術よろしく2人に見えてるもの…









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