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中指 立てたら  作者: 福島崇史
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第2回 ナンパ講座

年が明け、高校最後の3学期が始まった。

師匠の死という大きな出来事の後だけに、クリスマスや正月に浮かれるなんて事は全く無いまま冬休みを終えた。

あ、でも勘違いせんといてな!

もう俺はちゃんと立ち直っとるからさ。

せやないと、いつか俺がアッチに行った時、師匠に怒られるもんな。

と、いつもの様に俺が〝俺、一体誰に話してるんやろ?〟と疑問を持った時、浮かれまくった声に呼び止められた。


「やぁやぁ!そこに見えるは勇君ではありませんかっ♪ご機嫌如何かなっ!?」


かぁ~面倒くさいのに見つかってしもた…

はよ帰ってプロレスのDVD観よ思てたのに…


「……なんや柔か、そう言うお前はえらいご機嫌やのぅ…」


「ん?なになに?年明け早々に俺が経験した、スィートな出来事の話を聞きたいってか?しゃあないなぁ聞かせたろやないかっ♪」


「いや…言ってねぇし…」


そこからの1時間…

初詣の時に生田神社でナンパした子との〝姫初め〟

その内容を事細かに聞かされた…

何?この地獄…


「…てな訳よ♪やっぱ女の子はいいよなぁ…この世の中、俺以外全員が女の子ならええのに♪」


この世の中のお前以外、全員がブスかお婆ちゃんになる事を俺は願うっ!!


「ん?勇…お前…今、全員ブスとかお婆ちゃんになってしまえ!とか思わんかったか?」


ビクッ!!

え…?何…?

人の心を読んだの…?

エスパーなの…?

やだ怖い……


「残念やったのぅ勇よ…仮に今お前が思ったような事になったとしよう……だが俺は一向に構わんっ!!」


…はい?


「美女であろうが醜女であろうが、巨乳であろうが貧乳であろうが、処女であろうがビッチであろうが、幼女であろうが老婆であろうが…女性は女性であるというだけで素晴らしいっ!女性は女性であるというだけで愛すべき存在なのだよっ!!」


いや、柔…

握り拳で熱く語ってるところ申し訳ないんやけども……幼女は愛しちゃいかんぞ。ダメ、絶対っ!


「まぁそんな訳だからよっ!今から勇も付き合えや♪」


「そんな訳ってのが意味不明やが…付き合うって何処へや?」


「さっき島井に電話したらこの後で山田と会うって言うからよ、どうせなら集まろうやって話になってな」


「へぇ…相変わらずあのゴリラ2頭は仲ええのぅ♪で、皆んなして何処に行くつもりなん?」


「愚問っ!それは愚問やでぇ勇よ…」


腕を組み目を閉じながら首を振る柔に、若干の殺意を抱きながら答えを待つ。


「俺達が集まる場所…それは1つしか無い…」


いや…芝居がかって無いで早よ言えや…


「そう…そこはある意味、聖地と呼べるかも知れんなぁ…」


清々しい顔で天を見上げた柔に、もはや若干どころでは無い殺意を抱きながらも答えを待つ俺はやっぱ偉いんやと思う。

すると柔、急に俺の方を向くと目を力強く見開きながらこう言ったんや。


「ここに宣言しよう…第2回・暮石 柔によるナンパ講座の開催をっ!!」


あ~…はいはい

そういう事ね…完全に理解した…

俺は呆れ気味に言う…


「て、事は…行き先は須磨海岸やな?」


「応よっ!さっきの話を電話で島井にも聞かせたらよ、あのエロゴリラ鼻血とヨダレ垂らしながら〝俺もナンパに連れてけっ!〟なんて言うもんやから、しゃあなしに…な♪」


何が〝しゃあなしに…な♪〟やっ!

お前自身が鼻の下伸び切っとるやんけっ!!

てか…お前、電話越しで島井が鼻血とヨダレ垂らしとるんが判ったんか?

え…?何…?

千里眼…?

やっぱエスパーなの…?

やだ怖い…


……………………………30分後…………………………


俺達はあの日以来の須磨海岸に来ていた。

島井&山田のゴリラコンビとは現地で合流。

こうして第2回・暮石 柔によるナンパ講座は始まった。


「いいかぁ~、そもそも女の子をGETするにはだなぁ…」


いっちょまえに先生口調となった柔が、なんやかんやと講釈を垂れるのを俺はボケェ…と聞き流していた。


カリカリカリカリ…


なんや、この音?

そう思って横を見ると、島井と山田が1文字漏らさぬ勢いでメモ帳にペンを走らせとるっ!!

ひ、必死やのぅ…君ら…


するとその時!


「しつこいわ自分っ!てか、その(ツラ)でようも私に声掛けれたなぁっ!!」


遠くから女の子の声が響いた。

え?これじゃ前と同じやんけ…

何?このデジャヴ…

そんな事を思っている間に、俺以外は全員声の方へと駆け出しとった…早っ!!


ようやく追い付くと、茶髪でギャルっぽい女の子が、ヒョロリと痩せた背の高い男に気の強そうな眼差しを向けていた。

それを見た山田が誰にとも無く呟く。


「お、おい…アレって…」


「あっ!ほんまや…」


反応したのはやはり相方の島井やった。

最初は2人が何に驚いてるのか解らんかったけど、よくよく見てみると女の子に絡んでる背の高い男…あのギョロ目に出っ歯ヅラ、確かに見覚えがある。

俺は心当たりのあるその名を呼んでみた…


「何しとんねんっ!林家パー子っ!!」


振り返った男は、俺達を見て一瞬だけ驚いた顔をしたけど、直ぐにスゴんだ表情で叫び返して来た。


「誰が林家パー子じゃっ!」


やっぱりアイツやった…

山田と同じくかつてこの須磨海岸で揉めた金木グループの1人であり、長田漁港では俺と拳を交えたあの男…林田(はやしだ) 心人(はあと)








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