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中指 立てたら  作者: 福島崇史
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晴れ時々曇り…ところにより豪雨

世の中がクリスマス気分に浮かれてる頃…

サンタさんは俺に残酷なプレゼントをよこしてくれた…


「あれぇ…?師匠、今日も来てはらへんなぁ…」


「これで2回連続やな…勇、さすがにこれはおかしいで。室田さん、何かあったんちゃうか?」


2回連続、師匠は練習の日に姿を見せはらへんかった…

ここ暫くの師匠の様子…体調がすぐれんのは一目瞭然やった。

柔の言葉に俺の中で何かが跳ね上がる。

嫌な予感がする…むしろ嫌な予感しかせぇへん…


「しかし勇よ、もう何ヵ月もの付き合いなるってのに(なん)で連絡先を知らへんねんな?」


「いや、何回も訊いたんやで?せやけど師匠…連絡先を交換したら、情がわいて別れの時が切なくなる言うて教えてくれはらへんかったんや…」


「……なんかあの人らしいな」


「あぁ…師匠らしい…よな」


「で、勇よ…お前、行くつもりなんやろ?」


「あぁ…すまんけど付き合ってくれるか?」


俯いたまま言った俺の背中を、強烈な破裂音と衝撃が襲った。


「痛ってぇ…いきなり何すんねんなっ!?」


顔を上げて柔を睨むと、そこには気持ち悪いほどニコニコした奴の姿…


「水臭い事言うなや。付き合うに決まっとるやろ♪」


言うなり柔は、今俺の背中を叩いたばかりの手で肩を組んで来た。

きっと沈んだ俺を見かねたんやろな…

努めて明るく振舞ってくれてんのが解る。

〝ありがとな〟

俺は心の中だけで礼を言っといた。



1時間後、俺達はある場所に立っていた。

そこは偶然にも、金木が入院していた病院と目と鼻の先にあった。

多分、元々は自動車整備工場か何かやったであろう建物…

掲げられた真新しい看板を見上げると、そこには三ツ又の鉾先をデザインしたエンブレムが描かれていた。


「ここが今話題の…」


「あぁ…室田さんが入団しはった格闘技団体…グングニルや」


そんな話をしていると、いきなりジムの扉が開いた。


「入団希望かな?なんやったら中入って見学してったら?」


いきなり現れた男を見て俺は、思わず目を伏せそうになる程の眩しさを感じた。

一目見ただけでこの人の明るさと暖かさが伝わる…

〝太陽〟

直ぐにその2文字が頭に浮かんだ。


「ん?…君は確か…暮石君…やったよな?」


「ご無沙汰してます。覚えててくれたんスね」


「そりゃ覚えてるがな!ドレッドヘアの高校生プロ選手…そうはおらへんからな♪」


あ、この2人…面識あるんや…

そりゃ同じ神戸で格闘家やってりゃ不思議やないけども。


「で、今日はどした?まさかほんまにうちの団体へ移って来るつもりや無いやろ?お、隣の君もごっついええ身体しとるやん!君には是非とも入団して欲しいなぁハハハッ♪」


太陽の如き男は満面の笑顔でそう言った。


「初めまして!自分は不惑 勇という者で…将来は格闘王と呼ばれるプロレスラーになる事を目指してますっ!!」


「……」


「……」


キョトンとした太陽の如き男と、苦い顔で俺を見るドレッドの陰獣…沈黙が俺達を包んだ。

けど、その沈黙は直ぐに破られる事になった。


「ハッハッハッ!自分、おもろいなぁ♪プロレスラーにして格闘王ときたかっ!そりゃ大したもんやでっ!!こりゃ今から注目しとかんとアカンなっ!ファッ○ユー君な、名前も覚えやすぅてええわっ♪」


「いや、ちょ、あの、ファッ○ユーや無くて、不惑 勇っス…」


「まぁまぁ細かい事はええがな♪で、用件は何かな?プロレスラー目指しとるんやったら入団しに来た訳や無いんやろ?」


「実は…こちらのメンバーである室田 大二郎さんの事で…」


俺がそう言った途端、あれほど明るく眩しかった太陽に雲がかかった。


晴れ時々曇り…そんな事を連想しながらも俺は、この後に豪雨が降る予感を拭えんかったんや…




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