視線の先
統一タイトル戦という事で、互いのベルトを一先ずコミッショナーに返還。
客席に起立をお願いしての国歌斉唱…
胸に拳を当てて目を閉じると、これまでの道程が脳裏を駆け巡る。
薄目を開けて柔を見ると、奴はロープにもたれたまま首を回したり、肩を回したり…感傷に浸る俺とはえらい違いやのぅ…
「ありがとうございました。客席の皆様、御着席下さいませ!!」
リングアナの声で観客が一斉に着席したからか、会場が一瞬だけ揺れた気がした。
選手のコールに入る前に、今回の特別ルールが説明される。
MMAルールとロストポイント制が交互に行われる事…
計6ラウンド闘う事…
ラウンド毎に判定をし、最終的に取ったラウンドが多い方が勝者となる事…
ロストポイント制においても、寝技でのボディへの打撃は有効である事…
禁止技の説明…等々
この説明の間、俺と柔の視線は火花を散らしっ放し…
一瞬たりとも離れる事はあらへんかった。
おぅおぅ!ええ殺気をぶつけてくれるやんけ♪
めっちゃテンション上がるわ!!
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へぇ…勇の奴、ちったぁ変わったみたいやな。
セレモニーが始まってからずっと目線を外しよらへん…
しかもアレは懐かしさなんて目やあらへん。
完全に敵を見る目やん。
あの頃の甘さは消えたっちゅう事か…
そりゃええ事っちゃ!俺も殺す気で行けるって事やからのぅ♪
勇よ…悪いけどな、この試合は名勝負なんてもんにはならへんで?俺が圧倒的有利な1ラウンドで一気に決めさせて貰う!それも一方的に…な!!
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ようやく俺達のコールや。
当然ながら格下の俺が先…
名前が読み上げられても、柔から目線を外さんまま拳を突き上げる!
浴びせられる歓声には一切目もくれん!
んで、突き上げとった拳をそのまま柔に向けて親指を下に落とすっ!
この辺はプロレスラーの性っちゅう奴やな…
次はアイツの番。
身長と体重に続き名前がコールされる。
身長差は10cm以上、体重差なんか20kg以上やで…
それでも両拳を天に掲げたアイツは、まったく小さく見えなんだ。
いまや世界的な格闘家になった風格…ってやつか?
アカン!アカン!!飲まれてどないすんねん!!
目線を反らすな!睨みつけろっ!!
って…アレ?
アイツの方が俺から目線を反らしとるやんけ…
ハッハ〜ン♪さては俺の闘気に怖れをなしたな?
そう思って柔の視線を辿ると…
リング下に控えとるラウンドガールをガン見しとった。
そういう所は変わらんのね…
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やっぱりむさ苦しい野郎より麗しき女子を見るに限る♪
おほぅ♪今回は粒が揃っとるのぅ♪♪
ええのぅええのぅ♪♪♪
これこそ闘いへの活力っちゅうもんやでぇ♪♪♪♪
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鼻の下が伸び切ったアイツを見るに、何を考えとるかが解る自分に腹立つわ…
よし…ええ事思いついたわ………
ブッ殺すっ!!




