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中指 立てたら  作者: 福島崇史
234/248

入場

適度の緊張と適度のリラックス…

ええバランスのメンタルや。

身体の仕上がりも上出来。

つまりはベストコンディションの状態や。

オープンフィンガーグローブは規定品やから青のモノを着用しとるけど、ショートタイツとレガースは特注で作ってもろた新作を身につけとる。

カラーリングは黒をベースにして、サイドに黄色の縦ラインを入れた。

イメージは「警戒色」…いわゆるデンジャー柄やな。

最初は黄色ベースに黒のラインでデザインしてたんやけど、それを見せると大作さんが…


「鬼のパンツみたいやな…」


更に不破にいたっては…


「ラムちゃんやんけ…」


そんな経緯でベースは黒、ラインが黄色に決まった。


先に入場の俺は既に花道の袖でスタンバっとる。

すると大音量でこの日の為に選んだ入場曲のイントロが流れ始めた!

数年ぶりにアイツと肌を合わせる…

この日に相応しい1曲や!

俺は自らの頬をパンパンと2度叩くと


「ッシャア!」


気合いを入れて花道に踏み出した。


暗幕をめくった瞬間、あまりの眩しさに一瞬目がくらむ。

迎えてくれた大歓声が耳をつんざく。

それでも俺は怯む事無く、先導を務める不破とセコンドの鈴本さん新木さんに挟まれ、ゆっくりゆっくり約束の地へと歩みを進めた。

流石はワールド記念ホールや…花道も広く、触ろうとする客に入場を妨げられる事もあらへん。

自ら「露払い」を買って出た不破からすれば拍子抜けやろな。

ん…?ちょう待てよ…?

大歓声やと思ったけど、かなりの割合で笑い声が聴こえるぞ…

花道脇の観客もえらい笑ってはる…なんでや?


すると露払いの必要が無いと感じた不破が俺の横に並んだ。ほんでもって肩を組んで来ると、大音量に負けんようにと耳元でこない叫んだ。


「ウケて良かったやんけっ!」


「???」


ウケ…?

どういう意味やねん…?

俺はウケ狙いした心当たりあらへんぞ?

キョトンとする俺を不思議そうな顔で見る不破…


「なんや…そんな顔してからに?ウケ狙いでこの曲を選んだんとちゃうんか?」


「へ?なんでこの曲がウケ狙いやねん!?今日という日に相応しいと思って選んだに決まっとるやんけっ!!」


「お、お前…正気ですか…?」


今度は不破がキョトンとした顔で返して来た。


後ろを振り返ると、鈴本さんはメッチャ不機嫌そうに俺を睨んどるし、逆に新木さんはメッチャご機嫌そうに俺の入場曲を口ずさんどる。

よく見ると、観客の多くも手拍子しながら半笑いで歌っとる…

え…?俺、そんなおかしな曲を選んだか?


本来なら試合に向けてテンションを高めるはずの花道やったけど、異様な空気に気を取られてる間にリング下へと到着してしもた…

まぁええ!訳わからんけど大切なんはこっからや!!

俺は深呼吸して一気に階段を駆け上がった!

不破が拡げてくれとるロープの間を潜り、リングインと同時に四方へ手を振った。

ここでようやく入場曲の音量がフェードアウトして行く。

せやけど変なテンションになった一部の客はまだ歌ってはる…


え?何の曲を入場曲に選んだかって?

んなもん決っとろうが!!

お互いがプロになってからは初めてやけど、柔とは数年ぶりの手合わせやねんぞ!

しかも俺達のそういう経緯は、マスコミを通じて皆が知ってる事や!

そんな劇的な再戦にこの曲以外が考えられるかっ!?

小柳ルミ子の「おひさしぶりね」一択やろがいっ!!


………え?違うの?俺、間違ってる?


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